■インターネットが広がり始めたとき、e-learningの可能性がずいぶん話題になりました。ところが最近はあまりe-learningに注目が集まらなくなったような気がします。いろいろ実験したり、サービスが始まったりしたけれど、あまり効果がなかったというのが実際のところではないかと思うのです。
■確かにインターネットで動画を動かしたり、先生がテレビ電話を使って説明してくれたりすれば便利なように思えます。しかしそれは実際に教えてもらうことが難しかったり、遠くにいる場合のことであって、すぐに先生に教えてもらうことが可能であれば、face to faceで教えるもらうことの方が効果があるのです。
■特に小学生は、モチベーションを維持するという意味において大学生や社会人が勉強するようにはいきません。大学生や社会人は、自分のスキルアップや資格をとるための動機がありますから、それなりにインターネットで勉強することは可能かもしれませんが、小学生は飽きてしまうので、つねに様子をみながら、声をかけていかなければならないのです。
■では、こんなにe-learningが研究されたのは、なぜでしょうか。教育はこれまで人的サービスの最たるものでした。その結果、塾や学習産業では人件費の比重が上がっていました。動画やインターネットはその部分を解決する手段として注目されたのです。しかしここまでいろいろな実験やサービスが行われて、人が直接教えるに比べてやはり実際の効果が少なかったと思います。(もちろん海外や、進学塾や学習機関がない地域では有効であったことは間違いありませんが。)
■ただ、インターネットやコンピューターがまったく学習に役に立たないのかといえばそんなことはありません。むしろこれから私は非常に大きな可能性が出てきたと思っています。ただしそれは、そういうシステムが直接生徒を教えるのではなく、教える方法をもっと効率化する、あるいは学習するテーマを有機的に結び付けていくという点においてです。
■アテネオリンピックで日本選手がたくさんのメダルをとったのも、実はこの解析力によるものだといわれています。むしろパソコンやインターネットを使って、いつでもどこでも最も必要な、効率的な学習方法を手にすることができれば、子どもたちがあんなに夜遅くまで学習塾に通う必要はなくなるはずです。
■ただこの分野の研究はまだまだ遅れています。日本人はどうも気合だ、根性だという感覚がまだ残っているので、勉強法や指導方法についての研究はそれほど進んでいないと思っています。しかし、これからデーターベースの進化やさまざまなテストデータの解析が進んでいくでしょう。これらの研究や実験が次に何を生み出してくれるのか、私は大いに期待しているのです。
(平成16年9月6日)