忘れるのは当たり前

せっかく覚えたのに、しばらくすると忘れてしまう。

これは、ごく当たり前のことです。人間の記憶は、一度覚えればそのままずっと残る、というものではありません。時間が経てば薄れていきますし、使わなければ思い出しにくくなります。

ですから、子どもが以前覚えたはずのことを忘れていても、すぐに「ちゃんと勉強していなかったのではないか」と考える必要はありません。忘れることを前提に、もう一度覚え直せばよいのです。

大切なのは、忘れないように一度で完璧に覚えようとすることではなく、忘れた頃にまた戻ることです。そのためには、学習範囲を広げすぎず、同じ教材を繰り返した方が良いでしょう。

何度も同じ教材を使っていると、問題の内容だけではなく、ページの配置や図の位置まで記憶に残るようになります。

「これは右上に載っていた問題だ」

「このページは前にも間違えた」

そんな記憶も、答えを思い出すきっかけになります。教材を次々に替えるより、一冊を繰り返す方が覚えやすいのは、そのためです。

覚えることと忘れることは、反対のように見えて、実はひとつの学習の流れです。

忘れたら、また覚える。しばらくして、もう一度確かめる。その繰り返しによって、少しずつ忘れにくい知識になっていきます。

忘れるのは当たり前です。だから、忘れたことを責めるのではなく、もう一度戻れる仕組みを作っておくことが大切なのです。

下位クラスですり込まれるな

組み分けテストで下位クラスが続くと、子どもはだんだん「自分はこのくらいなのだ」と思い始めます。

最初は上のクラスを目指していたはずなのに、結果がなかなか変わらないと、その目標も少しずつかすんでいく。そして、「どうせやっても無理だから」という気持ちが出てくると、その先の受験勉強はなかなか好転しません。

しかし、クラスはその時点の組み分けテストの結果で決まったものにすぎません。子どもの力のすべてを表しているわけではないのです。

実際には、下位クラスにいたとしても、以前よりできるようになったことはたくさんあるはずです。

「知識が確実に増えてきた」

「場合の数の問題が解けるようになった」

「計算ミスが減ってきた」

「長い文章題にも取り組めるようになった」

そうした変化に、きちんとスポットライトを当ててください。

大切なのは、漠然と「がんばっているね」と言うだけではなく、何ができるようになったのかを具体的に本人へ伝えることです。見える成果として示されれば、子ども自身も「自分は少しずつ進んでいる」と感じることができます。

クラスが上がってから自信がつくのではありません。小さな成長を認められ、自信がついてくるから、その先の結果が変わっていくのです。

下位クラスという位置づけを、本人の能力だと思わせてはいけません。今できるようになっていることを積み重ね、前に進んでいる実感を持たせる。それが、やる気を引き出し、やがて好結果につながっていきます。

粘る?

問題が解けないとき、もう少し考えるべきか、それとも答えや解説を見るべきか。子どもの勉強を見ていると、判断に迷うことがあります。

すぐに諦めてしまうのは困りますが、長く考え続ければ必ず力がつく、というわけでもありません。手がかりがないまま同じ式を書き直したり、ただ問題を眺め続けたりしているのであれば、それは粘っているというより、勉強が止まっている状態です。

大切なのは、考えている間に何かが進んでいるかどうかです。条件を図に書き込む、わかっている数を整理する、似た問題を思い出す、別の方法を試す。こうした動きがあるなら、もう少し粘ってみる価値があります。

しかし、何をしてよいかわからない状態が続くなら、いったん解説を見た方がよいでしょう。家庭学習では、10分から15分程度をひとつの目安にします。それまでに方針が立たなければ、解説を読んで考え方を理解し、その後に自分でもう一度解いてみる。その方が、限られた時間を有効に使えます。

一方、試験中はさらに早い判断が必要です。一問に粘りすぎて、解ける問題を残してしまっては得点につながりません。少し考えて方針が見えなければ印をつけて先へ進み、残った時間でもう一度戻る。この切り替えも、受験では大切な力です。

粘るべきなのは、時間ではありません。解くための手を動かし続けることです。考えが進んでいるなら粘る。止まっているなら学び方を変える。その区別をつけられるようになると、勉強の質は大きく変わっていきます。