できなくてよいことはたくさんある

塾で出される問題を見て、「ずいぶん難しいな」と感じることがあるかもしれません。

間違えた問題を一つひとつ復習し、できるようにしようとしても、なかなか終わらない。次から次へと直す問題が増えていき、勉強時間がいくらあっても足りない、ということもあるでしょう。

それは、塾の教材には基本問題だけではなく、かなり難しい応用問題まで含まれているからです。

もちろん、その問題が志望校の入試に必要なのであれば、しっかり取り組まなければなりません。しかし、受験する学校によっては、そこまで難しい問題はほとんど出題されない、ということもあります。

そうであれば、その問題をできるようにするために多くの時間を使う必要があるのか、きちんと考えた方がよいでしょう。

大事なのは、塾で出された問題をすべてできるようにすることではありません。志望校の入試で合格点を取るために、必要な問題をできるようにすることです。

一方で、志望校では塾の教材以上に難しい問題が出題されている場合もあります。その場合は、塾の復習に時間をかけ続けるよりも、早めに過去問へ移り、志望校の出題に合わせた勉強を進めた方がよいでしょう。

逆に、それほど難しい問題が出ない学校を受験するのであれば、難問に時間を使うより、基本問題を確実に解くことや、知識の抜けを埋めること、計算や漢字で失点しないことの方が重要です。

できないことが見つかると、つい全部直さなければならないと思ってしまいます。

しかし、「できないこと」と「できなくてよいこと」は違います。

限られた時間の中で成果を上げるには、何をできるようにするべきかだけではなく、何はできなくてもよいのかを判断することも必要です。

志望校の過去問を基準に、必要な勉強と必要のない勉強を区分けしてください。やらないことを決めることも、受験勉強では大切な戦略なのです。

家で勉強する子は強い

共働きのご家庭が増え、放課後の時間をどう過ごすかは、以前よりも大きな問題になっています。家に子どもだけでいる時間が長くなるなら、どこかに預けた方が安心だと考えるのは自然なことです。塾、自習室、学童、個別指導など、子どもが過ごせる場所も増えてきました。

ただ、中学受験の勉強で最後に力を発揮するのは、やはり「自分で勉強できる子」です。誰かに言われたから机に向かうのではなく、今日やることを確認し、時間を決め、わからないところを自分で考え、必要なら質問する。そういう力がついている子は、学年が上がるほど強くなります。

もちろん、小さいうちはなかなか任せきれません。放っておけば遊んでしまうこともあるでしょうし、予定通りに進まないこともあります。しかし、いつまでも大人が管理し続けていると、子どもは「自分で進める」という経験を積めません。勉強する場所は確保されていても、本人の中に主体性が育っていなければ、結局は受け身の勉強になってしまいます。

今は、家庭でもいろいろなことができる時代です。教材も動画もオンラインの質問環境も整ってきました。親がずっと横についていなくても、何をやるかがはっきりしていれば、子ども自身で進められることは増えています。大事なのは、すべてを外に任せることではなく、家庭の中で自分の勉強を組み立てる時間を持たせることです。

最初から完璧にできる必要はありません。たとえば、「今日はこのページまで」「計算を10題」「過去問の直しを1問だけ」と、やることを具体的に決めておく。そして終わったら、親が帰宅後に短く確認する。それだけでも、子どもは少しずつ自分で勉強を進める感覚を身につけていきます。

家で勉強するというのは、単に家にいるという意味ではありません。自分の机で、自分の課題に向き合い、自分で手を動かして考える時間を持つということです。この時間がある子は、塾で習ったことも定着しやすくなります。逆に、毎日どこかに通っていても、自分で考える時間がなければ、学力はなかなか積み上がりません。

子どもを任せることには不安が伴います。しかし、任せてみなければ育たない力もあります。中学受験は、親が全部管理して乗り切るものではなく、少しずつ子ども本人が自分の勉強を引き受けていく過程でもあります。

家で勉強できる子は強い。

それは、特別に意志が強い子という意味ではありません。自分で進める経験を少しずつ積み重ねてきた子、ということです。だからこそ、家庭で勉強する時間をどう作るか、どこまで任せるかを考えることは、これからの受験準備において、とても大事な決断のひとつなのです。

視点を個に寄せる

多くの塾では、毎月のように組み分けテストが行われます。順位が出て、偏差値が出て、クラスが変わる。子どもたちも保護者も、どうしてもそこに気持ちを引っ張られやすくなります。

もちろん、これまでの段階では、それもひとつの目安になってきたでしょう。今の学力がどのあたりにあるのか、どの単元が弱いのかを知る材料にはなります。しかし、受験が近づくにつれて、そろそろ視点を変えていかなければなりません。

本当に考えるべきなのは、教室内の順位ではありません。第一志望校の入試で合格点を取るために、何をできるようにするか、です。

同じ志望校を目指している子は、同じ教室の中だけにいるわけではありません。別の校舎にも、別の塾にも、あるいは家庭で独自に準備している子もいます。入試本番では、そうした受験生たちと同じ問題を解き、その中で合格点を取らなければなりません。

だから、教室内の偏差値やクラスに一喜一憂するよりも、志望校ではどのような問題が出るのか、その問題を解けるようになるためには何をすればよいのか、という視点に切り替えることが大切です。

これから必要になる勉強を端的に言えば、「よく出て、まだできないところ」を見つけてつぶしていくことです。

たとえば、志望校で図形がよく出るのに、相似や面積比があいまいなままであれば、そこを重点的に直す必要があります。理科で実験やグラフの読み取りがよく出るのに、表の整理でミスが多いなら、その練習を増やすべきです。国語で選択肢の判断が弱いなら、本文の根拠に戻って選ぶ練習を繰り返す必要があります。

これは、必ずしも塾の授業の中だけで解決するものではありません。自分の机の上で、問題集やテキストを使って取り組むこともできます。過去問をじっくり解き直すことで、何が足りないのかが見えてくる場合もあります。

中学入試は、すべての学校が同じ問題を出すわけではありません。それぞれの学校が独自の入試問題を作っています。出題傾向も違えば、求められる力も違います。そして、子どもによってできているところ、できていないところも違います。

だからこそ、これからの勉強は、もっと「個」に寄せていく必要があります。

みんなが受けている授業だから受ける。塾から出された宿題だから全部やる。そういう進め方だけでは、志望校に必要な力を効率よく積み上げることは難しくなります。

もちろん、必要な授業はしっかり受ければよいのです。しかし、「これは今の自分には優先順位が低い」「この時間は別の勉強に使った方がよい」と思うものがあるなら、その判断は大切にした方がよいでしょう。

受験が近づくほど、時間は限られてきます。その限られた時間を、どこに使うか。

クラスを上げるためではなく、志望校の問題を解けるようにするために使う。順位を気にするのではなく、自分ができないところを一つずつできるようにする。

これからは、その視点がますます重要になります。