「勉強しなさい」を言いたくないから塾を増やす前に

仕事で疲れて帰ってきて、子どもの勉強を見ると、思ったほど進んでいない。予定表はあるのに空白が多い。問題集も開いた形跡がない。

そうなると、つい言いたくなります。

「勉強しなさい」

でも、それを毎日言うのは親にとってもつらいものです。子どもも嫌な顔をするし、親子の空気も悪くなる。だから、もう家で言わなくてすむように、塾の日を増やす。個別指導を追加する。自習室に行かせる。

お金はかかるけれど、仕方がない。そう考えるご家庭は少なくないと思います。

しかし、ここで気をつけなければいけないのは、通塾日を増やしても、根本の問題が解決するとは限らない、ということです。

むしろ、子どもがますます自分で勉強しなくなることがあります。なぜなら、勉強する場所も、やる内容も、時間の使い方も、すべて外から与えられるようになるからです。

塾に行けば、授業はあります。先生は説明してくれます。宿題も出ます。けれど、それだけでは「自分の机で、自分の頭で考える時間」は増えません。

中学受験で本当に力がつくのは、授業を受けている時間だけではありません。むしろ、わからなかった問題をもう一度考える時間、間違えた理由を見つける時間、解説を読んで自分の言葉で整理する時間が大事です。

ところが、塾の日を増やしすぎると、その時間がなくなります。

授業を受ける。移動する。宿題に追われる。次の授業が来る。すると、わからないところを自分で止まって考える前に、また新しい課題が積み上がっていきます。

特に6年生の後半は注意が必要です。ただでさえ塾の授業や特訓、模試、過去問演習が増えていきます。その時期にさらに通塾日を増やすと、子ども自身が整理する時間がますます減ってしまいます。

本来、この時期に必要なのは「もっと外に預けること」ではなく、「自分で勉強する時間をどう確保するか」です。

親が毎日細かく管理する必要はありません。ただし、何をやるのか、いつやるのか、終わったかどうかは、家庭で見える形にしておく必要があります。

たとえば、今日やることを三つにしぼる。終わったら線を引く。できなかったものは翌日に回すのか、捨てるのかを決める。そういう小さな管理で十分です。

大事なのは、子どもが「今日はこれをやる」と自分でわかっていることです。

「勉強しなさい」と言いたくないから塾を増やす、という選択は、一見すると親子の衝突を減らすように見えます。しかし、子どもが自分で机に向かう力を育てなければ、結局また同じ問題に戻ってきます。

通塾を増やす前に、まず家庭で確認したいことがあります。

子どもが自分で考える時間は残っているか。間違い直しをする時間はあるか。過去問を解いた後、自分の弱点を整理する時間はあるか。

そこがなくなっているなら、必要なのは新しい授業ではなく、時間の整理です。

塾は大切な学習の場です。しかし、塾に行けば行くほど成績が上がるわけではありません。最後に得点を伸ばすのは、自分の机で、自分の課題に向き合う時間です。

だからこそ、安易に通塾日を増やす前に、家庭での学習時間をどう守るかを考えておきたいのです。

ミスだけを記録する

過去問を始めると、どうしても点数が気になります。

「前回より下がった」
「同じ年度をもう一度やったのに、あまり取れなかった」
「こんな点数で大丈夫なのか」

そう考え始めると、親子ともに気分が重くなってしまいます。もちろん点数を記録することに意味がないわけではありません。しかし、過去問を使って力を伸ばすという意味では、点数以上に大事なものがあります。

それは、どんなミスをしたのかという記録です。

たとえば、算数で問題文を読み違えたとします。そのときに「読み違い」とだけ書いて終わりにするのではなく、どの部分をどう読み違えたのかまで記録しておきます。

「太郎君が先に出発したのに、次郎君だと思って解いた」
「片道の時間なのに、往復の時間として考えた」
「何個残ったかを聞かれているのに、使った個数を答えた」

このように具体的に残しておくと、あとから大事なことが見えてきます。

実は、子どもは同じようなミスを繰り返すことが少なくありません。一度直したはずの問題でも、二度目にまた同じ場所を読み違えることがあります。

そこで、つい「またやったの!」と言いたくなるかもしれません。しかし、ここで怒ってしまうのはもったいない。これは貴重なデータです。

なぜ同じところで目が飛ぶのか。なぜ人名を取り違えるのか。なぜ数字だけを追いかけて、条件を読み落としてしまうのか。そこを丁寧に見ていくと、その子特有の読み方、解き方の癖が見えてきます。

ある子は、長い文章になると途中の条件を飛ばしやすい。ある子は、図に書き込んだ数字を信じすぎて、問題文に戻らない。ある子は、「ただし」や「最も」などの言葉を軽く扱ってしまう。ある子は、急いでいると単位を確認しない。

こうした傾向は、点数だけを見ていてもわかりません。

大事なのは、ミスを分類することです。

「読み違い」
「条件の見落とし」
「計算ミス」
「転記ミス」
「設問の答え方のミス」
「時間不足による雑な処理」

このように分けて記録していくと、対策も立てやすくなります。

読み違いが多いなら、問題文に線を引く場所を決める。人名や単位に丸をつける。何を答えるのかを解く前に一言でメモする。

条件の見落としが多いなら、使った条件に印をつける。解き終わったあとに、使っていない条件がないか確認する。

計算ミスが多いなら、どの段階で間違えたのかを見る。途中式を書かないためにミスが出ているのか、暗算が多すぎるのか、分数小数の変換で崩れているのかを確認する。

転記ミスが多いなら、問題用紙から解答欄へ移すときの確認方法を決める。最後に答えだけを見るのではなく、「聞かれているもの」と「書いた答え」が合っているかを照合する。

こうしてミスの記録を重ねていくと、単なる反省ではなく、具体的な対策になります。

中には、原因を突き詰めていくうちに、思いがけないことがわかる場合もあります。以前、問題文の読み違いが続く子について調べていったところ、実はメガネの度が合っていなかった、ということもありました。本人の注意力だけの問題ではないこともあるのです。

だから、ミスを責めるのではなく、研究してください。

我が子はどこで目が止まり、どこを飛ばし、何を思い込みやすいのか。どんな場面で焦り、どんな問題で確認が甘くなるのか。

間違え方にも個性があります。であるならば、その克服方法もまた、その子に合わせたものであるべきです。

過去問の記録は、点数表だけでは足りません。

むしろ本当に役に立つのは、ミスの細かな記録です。

何を間違えたのか。なぜ間違えたのか。次に同じミスを防ぐには、どんな行動を入れればよいのか。

そこまで踏み込んで記録していくと、過去問は単なる採点材料ではなく、その子を伸ばすための大切な資料になります。

やりきる

子どもが何かに取り組むとき、最後まで続けることは簡単ではありません。

最初はやる気があっても、途中で面倒になったり、思ったより時間がかかったりして、いつの間にかやらなくなってしまう。そういう経験は、どの子にもあります。

ただ、そこで大事なのは「根性が足りない」と考えることではありません。そもそも最初に立てた目標が大きすぎると、やりきることは難しくなります。

たとえば夏休みの計画を立てるとき、子どもはつい理想的な予定を作りがちです。朝から晩まで勉強するような計画にしても、実際には数日で崩れてしまうことが多いでしょう。

ですから、最初から完璧な計画を作ろうとする必要はありません。まずは「少しがんばればできる」ぐらいの目標にすることです。

そのうえで、一週間ほどやってみる。続けられそうならそのまま進めればよいし、無理があるなら修正すればよいのです。

ただし、修正するときにも、何でも削ってしまってはいけません。「これだけはやりきる」という中心を決めておくことが大切です。

計算を毎日3題やる。漢字を1ページ進める。過去問の直しを必ず終える。内容は子どもによって違ってかまいませんが、決めたことを最後までやる経験を積ませたいのです。

一度やりきると、子どもは少し自信を持ちます。

「自分にもできた」という感覚は、次の勉強に向かう力になります。逆に、いつも途中で終わってしまうと、「どうせ続かない」という気持ちが強くなってしまいます。

だからこそ、目標は大きくしすぎない方がよいのです。

小さくても、最後までやる。終わったことがはっきりわかる。親もそれを認める。こういう積み重ねが、子どもの中に「やりきるくせ」を作っていきます。

もちろん、無理をさせすぎる必要はありません。疲れ切ってしまえば、かえって続かなくなります。

大事なのは、少し負荷をかけながらも、実際に達成できるところに目標を置くことです。

やることを増やすより、決めたことをやりきる。

夏の勉強でも、そこを意識して計画を作っていくと、子どもは少しずつ自分で進める力を身につけていきます。

家庭のペースで学習を立て直したいときは、やることを絞って進める形が合う場合もあります。こちらも参考にしてください。