知識は考える幅を広げる

「考える力が大事」とよく言われます。

それはその通りなのですが、では、何も知らないまま考えられるかといえば、やはりそうではありません。考えるためには材料が必要です。その材料になるのが知識です。

知識がなければ、考える範囲はどうしても狭くなります。目の前にある情報だけで判断するしかなくなるからです。

例えば歴史を考えるとき、年号や出来事を覚えることは、単なる暗記のように見えるかもしれません。しかし、ある出来事がいつ起こり、その前後に何があったのかを知っているからこそ、その意味を考えることができます。

1910年の日韓併合という出来事も、ただ年号を覚えるだけでは十分ではありません。しかし、その年号を知らなければ、明治以降の日本と朝鮮半島の関係、さらに現在に続く問題を考える入口にも立てないのです。

知識は、考えるための土台です。

もちろん、知識をただ丸暗記すればよい、という話ではありません。覚えたことを使って、「なぜそうなったのか」「その結果、何が変わったのか」「今とどうつながっているのか」と考えていくことが大切です。

ただ、そのためにも、まず知っていなければならないことがあります。

最近は、暗記を軽く見るような言い方もあります。「調べればわかる」「覚えるより考える方が大事」という考え方です。しかし、何を調べればよいのか、調べたことが本当に大事なのかを判断するにも、やはり一定の知識が必要です。

知識がある子は、新しい話を聞いたときに、過去に学んだことと結びつけることができます。社会の出来事でも、理科の現象でも、国語の文章でも、「これは前に習ったこととつながるな」と考えることができる。

一方で、知識が少ないと、ひとつひとつの情報がばらばらに見えてしまいます。すると、問題を解くときにも、文章を読むときにも、深く考えるところまでなかなか進めません。

中学受験の勉強でも同じです。

社会や理科はもちろん、国語の読解にも背景知識は必要です。文章の中に出てくる時代、社会の仕組み、自然現象、人間関係などについて、少しでも知っていることがあれば、内容はずっと理解しやすくなります。

算数でも、基本的な解き方や考え方を知っているからこそ、初めて見る問題に対応できます。まったく何もないところから、その場で全部を発見することは、子どもにとってかなり難しいことです。

だから、覚える勉強を軽く見てはいけません。

ただし、詰め込みだけで終わらせないことです。覚えたら使う。使いながら、意味を考える。間違えたら、もう一度知識を整理する。そういう流れができてくると、知識は単なる暗記ではなく、考える力の土台になります。

知識が増えれば、見えるものが増えます。

見えるものが増えれば、考える幅も広がります。

子どもたちには、「覚えることはつまらないこと」ではなく、「自分の考える力を広げるための準備」なのだと伝えていきたいものです。

塾のペースから脱却して、まずは確実に自信を取り戻す、という方法もあります。こちらもあわせてご覧ください。

夏の学習のポイント

6年生の夏休み前までに、入試で出題される範囲はひと通り終わります。つまり、ここからは総復習に入るわけですが、当然、すべてがきれいに身についているわけではありません。忘れているところもあるし、苦手なまま残っている単元もあります。

本来であれば、わかっているところは飛ばして、できないところだけを復習したいところです。しかし、夏期講習は多くの場合、塾が決めたカリキュラムに沿って進みます。社会なら地理、歴史、公民を順番に復習する。算数も理科も、重要単元をひと通り扱う。ですから、授業中に自分だけ別の勉強をするわけにはいきません。

そこで、夏期講習は「穴を見つける場」と考えるとよいでしょう。

授業で扱った問題ができていれば、そこは授業で終わりにする。家庭では必要以上に繰り返さない。逆に、授業中にできなかった問題、理解があいまいだった単元は、家庭で時間をかけて復習する。つまり、塾の授業を利用して、自分の弱点を見つけるのです。

宿題も同じです。全部を完璧にやろうとすると、時間はいくらあっても足りません。すでにわかっている内容まで同じように時間をかける必要はない。先生と相談できるなら、やるべきものを絞ってもよいでしょう。その代わり、不得意なところにはしっかり時間をかけることです。

もし、やるべきことが多すぎる場合は、優先順位をつけます。基準になるのは第一志望の過去問です。過去問によく出ていて、しかも自分ができない分野から先に手をつける。そこが最優先です。

それでも多い場合は、算数、理科、社会、国語の順に考えるとよいでしょう。特に算数と理科は、できるようになるまでに時間がかかります。早めに手を入れておく必要があります。

そして、お盆休み以降は、多少復習が残っていても過去問に入っていきましょう。過去問を解いて、できなかったところをまた復習する。この流れに切り替えることが大切です。

夏は天王山と言われますが、実際に成績が伸びるのは秋です。夏に無理をしすぎて疲れ切ってしまっては、秋の伸びにつながりません。大事なのは、あれもこれもと詰め込むことではなく、やることを絞り、できないところを丁寧につぶしていくことです。

目標を達成するためにスケジュールを決める

学習の目標を立てるとき、「この問題集を1冊やりきる」と決めることがあります。

ただ、目標を決めただけでは、なかなか実行には移せません。まず必要なのは、その問題集がどのくらいの量なのかをはっきりさせることです。ページ数でも問題数でもかまいません。とにかく、全体量を数字でつかむことが大事です。

たとえば30日間で終わらせるなら、全体のページ数や問題数を30で割れば、1日に進める量が見えてきます。1日5ページなのか、10問なのか。そこまで決まると、今度はそれにどのくらい時間がかかるかも考えられます。

もし1日分をこなすのに途方もない時間がかかるなら、その計画は現実的ではありません。その場合は、30日ではなく50日にする、あるいは全部ではなく奇数番号の問題だけにするなど、目標の立て方を変える必要があります。

そして、ここからが一番大事です。

1日分の量が決まっていても、それをいつやるのかが決まっていなければ、計画は進みません。「今日は5ページやる」と思っていても、その5ページに90分かかるなら、その90分をどこに入れるかを決めておかなければならないのです。

時間を決めないままにしておくと、「ちょっとテレビを見てから」「少しゲームをしてから」となり、そのうち勉強の時間はなくなってしまいます。

だから、目標を達成するためには、やることを決めるだけでなく、やる時間をスケジュールに入れることが必要です。

todoリストを作ってもなかなか進まない、ということがあります。これは、やることは書いてあっても、やる時間が決まっていないからです。逆に、todoリストを書かなくても、スケジュールの中に勉強時間を入れてしまえば、自然に進められる場合もあります。

大事なのは、「何をやるか」だけでなく、「いつやるか」を決めること。

その時間は集中して勉強する。決めた時間に、決めた分だけ進める。その積み重ねが、やがて大きな力になります。