出た数字は何か、メモする

算数の問題を解くとき、まず式を書かない子は、今もかなり多いように思います。

特に図形の問題などでは、図にどんどん数字を書き込み、横でちょろっと計算をして、「あ、出た出た、これが答えだ」というような解き方をしている子が少なくありません。

しかし、この解き方ではミスはなかなかなくなりません。記述式の学校であれば、そもそもこの段階でかなり不利になりますから、やはり式を書く練習は必要です。

この時期あたりから、しっかり式を書くことを意識していきましょう。

式を書くというのは、単に採点者に見せるためだけではありません。自分が今、何を求めているのかを確認するためでもあります。

そこでひとつ工夫したいのが、出てきた数字が何を表しているのかをメモすることです。

たとえば、速さの問題なら「太郎君の行きの速さ」。図形の問題なら「三角形AFGの面積」。割合の問題なら「全体の人数」や「残りの量」。そういうふうに、数字の横に短く書いておくのです。

このメモが、あとで非常に役に立ちます。

例えば計算していくと人数が、分数になってしまった、ということもあります。

そのとき、ただ数字だけが並んでいると、どこで何を求めたのかがわからなくなります。ところが、「これは何の数字か」というメモが残っていれば、式を追いながら考え方を確認しやすくなります。

できる子でも間違いはします。

ただ、できる子は試験時間内にその間違いに気づき、修正する力を持っています。そしてその修正力は、実はこういう小さな工夫から生まれているのです。

入試直前になってから、急に見直しの力をつけようとしても、なかなかうまくいきません。

出た数字は何か、メモする。

今からこの習慣を身につけておくことが、ミスを減らし、得点を守るための大事なノウハウになるでしょう。

復習だって大変だ

復習型の塾と予習型の塾がありますが、最近は復習型の塾の方が圧倒的に多くなりました。

家庭で予習をしてくることが難しい、という事情もあるでしょうし、塾としても「それ、もう知ってる」という子が増えると授業がやりにくい、という面もあるのだと思います。

もちろん、復習が十分にできるのであれば、それで構いません。

しかし今は、その復習自体がかなり大変になってきています。

毎週やることが多すぎるのです。宿題があり、課題があり、確認テストの準備がある。目の前のものをこなしているだけで一週間が終わってしまう。

そうなると、本来いちばん大事な「できなかった問題をもう一度やる」という時間が取れなくなります。ましてや、二週間前、三週間前に習った内容をもう一度見直すところまでは、なかなか手が回りません。

大量のプリントをきれいにファイリングしているご家庭は少なくありません。しかし、そのプリントをもう一度見直す時間があるかといえば、実際にはほとんどない、ということも多いのです。

ファイルは増えていく。ノートも増えていく。でも、それを見直す時間がない。これでは、復習型の塾に通っていても、結局は「習いっぱなし」になってしまいます。

だから、ある程度は勉強を絞り込む必要があります。

塾から出されたものを全部やることが理想ではありますが、子どもの時間も体力も限られています。すべてを同じ重さで扱うと、結局どれも中途半端になることがあるのです。

そこで大事なのは、「これだけはかっちり復習する」というものを決めることです。

算数なら、授業中にできなかった問題、テストで間違えた問題、解説を聞いてもまだ怪しい問題。国語なら、本文の読み違いをした問題、設問の条件を落とした問題。そういうものを優先して直す。

宿題をやること自体が目的になってしまうと、本当に必要な復習が後回しになります。

「課題さえやってもらえれば、復習は必要ありません」という話もあるようですが、これは少しおかしな話です。できなかったところは、子どもによって違うからです。

同じ課題を全員がこなしても、できるところは相変わらずできる。できないところはできないまま残る。そういう勉強になってしまうことがあります。

だからこそ、子どもの勉強の中身をよく見ておく必要があります。

何を間違えているのか。どこで時間がかかっているのか。どの課題は意味があり、どの課題はただの作業になっているのか。

復習だって大変です。

だからこそ、何を復習するかを決める。

たくさんやったかどうかではなく、できなかったことができるようになったか。そこを見失わないようにしたいものです。

式を端折る子

算数の答案を見ていると、答えは合っているのに式がほとんど書いていない、という子がいます。

頭の中ではちゃんと考えているのでしょう。計算もできているし、答えも出ている。だから本人は「書かなくてもいいじゃないか」と思っているかもしれません。

しかし、式を端折るクセは、受験勉強が進むにつれてだんだん危なくなってきます。

最初のうちは、簡単な問題ですから、頭の中だけで処理しても何とかなる。ところが、問題が長くなり、条件が増え、比や割合、速さ、図形などが組み合わさってくると、頭の中だけでは整理しきれなくなります。

そのときに頼りになるのが、途中の式やメモなのです。

式を書くというのは、単に先生に見せるためではありません。自分の考えを途中で確認するために書くのです。

どこまで分かっているのか。何を求めたのか。次に何をすればよいのか。それを紙の上に残しておけば、途中で迷っても戻ることができます。

逆に、式がない答案は、本人も後から見直せません。

間違えたときに、「どこで間違えたのか」が分からない。計算ミスなのか、考え方が違ったのか、条件の読み落としなのか、それを確かめる手がかりがないのです。

これは非常にもったいないことです。

特に6年生になると、入試問題の中には途中まで考えれば部分点が期待できるものもあります。もちろん学校によって採点の仕方は違いますが、少なくとも自分の考えが見える答案でなければ、得点につながる可能性は低くなります。

「答えだけ合えばいい」という勉強を続けていると、難しい問題で粘る力が育ちにくいのです。

では、家庭ではどう注意すればよいでしょうか。

「ちゃんと式を書きなさい」と言うだけでは、なかなか直りません。子どもにとっては、何をどこまで書けばよいのかが分からないからです。

まずは、すべてをきれいに書かせようとしないことです。最初から模範解答のような答案を求める必要はありません。

大事なのは、「何を求めた式なのか」が後から分かるようにすることです。

例えば、速さの問題なら、距離を求めたのか、時間を求めたのか。割合の問題なら、もとにする量を求めたのか、比の1あたりを求めたのか。そこが分かるように、式を一つずつ残していく。

それだけでも、答案はかなり変わります。

また、式を書くことを「面倒な作業」と考えさせないことも大切です。

式は、ミスを減らすための道具です。考えを整理するための道具です。難しい問題を解き切るための足場です。

だから、式を書いたことで間違いに気づけたときは、そこを評価してあげるとよいでしょう。

「ここに書いてあったから、戻れたね」

「この式があるから、考え方は合っていると分かるね」

そういう声かけをすると、子どもも少しずつ式を書く意味を理解していきます。

逆に、式が少ない答案を見てすぐに叱ると、子どもはますます書くことを嫌がります。本人としては「考えているのに」と感じているからです。

まずは、考えていることを紙に出す練習だと考えましょう。

式を端折る子は、必ずしも力がないわけではありません。むしろ、頭の中で処理する力があるからこそ、書かずに済ませてきた場合もあります。

ただ、そのやり方だけでは、入試問題にはだんだん対応しにくくなります。

考えたことを残す。途中で確認する。間違えたら戻れるようにする。

この習慣がついてくると、算数の答案は安定してきます。式を書くことは、遠回りのようでいて、実は得点を守るための近道なのです。