後半戦に向けて

受験学年の春から初夏にかけて、「このままで大丈夫だろうか」と感じるご家庭は少なくありません。

カリキュラムは一通り進み、塾では復習が中心になってくる。毎週のようにテストもあり、宿題もある。子どもは決して何もしていないわけではないのに、なかなか成績が大きく動かない。

組み分けテストの結果もそれほど変わらず、むしろ少し下がったりすると、「これだけやっているのに、なぜ伸びないのか」と不安になることもあるでしょう。

しかし、この時期に大事なのは、目先の成績の上下だけを見ないことです。ここから先は、ただ塾のカリキュラムをこなしていくだけでは足りません。受験の後半戦に向けて、学習の軸をはっきりさせる必要があります。

その軸になるのが、第一志望校です。

中学入試は、学校によって出題傾向がかなり違います。合格点も違えば、求められる力も違う。ある学校では記述力が問われ、別の学校では処理の正確さが重視される。算数でも、標準問題を確実に取ることが大事な学校もあれば、条件整理や図形の作業力が合否を分ける学校もあります。

ですから、後半戦に入る前に、「うちはどの学校に向けて力をつけるのか」を明確にしなければなりません。

もちろん、塾にも学校別対策はあります。しかし、名前は学校別であっても、実際には幅広い学校に対応するための一般的な演習になっている場合もあります。あるいは、志望校別の講座があっても、受講資格やクラス分けの都合で、思うように参加できないこともあるでしょう。

だからこそ、家庭で一度立ち止まって考える必要があります。

この学校に合格するために、今、何が足りないのか。過去問に入る前に、どの単元を固めるべきなのか。国語の記述なのか、算数の正確さなのか、理社の知識の整理なのか。そこを見極めずに、ただ与えられた課題をこなしているだけでは、時間はどんどん過ぎていきます。

特に夏休みは、受験前にまとまった時間を使える大事な時期です。しかし、夏期講習や宿題に追われると、意外に自由に使える時間は多くありません。だからこそ、何でもやろうとするのではなく、「何を優先するか」を決めることが大切です。

その判断は、子どもだけではなかなかできません。

子どもは目の前の宿題やテストに追われがちです。親もまた、塾から出されたものをやらせていれば安心、と思ってしまうかもしれません。しかし、本当に必要なのは、その子の志望校と現在の状態を見比べて、やるべきことを絞り込むことです。

後半戦に向けて、家庭で話し合ってみてください。

第一志望はどこなのか。そこに合格するためには、どの教科のどの力を伸ばす必要があるのか。夏までに何を終わらせ、秋以降は何に時間を使うのか。

ここがはっきりしてくると、勉強の意味が変わります。単なる復習ではなく、合格に近づくための勉強になる。子どもにとっても、「何のためにこれをやるのか」が見えやすくなります。

受験は、ここからが本番です。

春から初夏にかけて停滞しているように見えても、後半戦の準備をしっかり整えれば、秋以降に伸びてくる子はたくさんいます。そのためには、今のうちに学習の方向を決め直すことです。

塾の流れに任せきりにするのではなく、家庭として、わが子の受験の進め方を考える。

後半戦に向けて、まずはそこから始めていきましょう。

家庭のペースで学習を立て直したい場合は、やることを絞り、志望校に必要な内容から優先して進める方法もあります。無理に全部をこなそうとするのではなく、合格に必要なことに時間を使う。その視点を、ぜひ大事にしてください。

やってあげない方が良いのだが

男の子は、基本的にぐうたらなところがあります。

もちろん全員がそうだ、という話ではありません。女子に比べれば、という程度の話ではありますが、「やらなくてよいものはやらない」「自分がやりたいことはやる」という姿勢が、わりとストレートに出やすいのです。

だから、親が手を掛けすぎると、子どもの中でそれは「自分でやらなくてよいこと」に分類されてしまいます。

例えば、プリントをそろえる。宿題を確認する。明日の準備をする。間違えた問題を探してあげる。スケジュールを組んであげる。

最初は、子どもが困らないように、と思ってやっていることです。母親としては、見ていられないから手を出す、ということもあるでしょう。特に男の子は動きが遅いし、忘れるし、雑だし、放っておくと本当に何もしないように見える。

しかし、そこで全部やってあげてしまうと、本人はますますやらなくなります。

これは、ある意味、男性の家事にも通じるところがあるかもしれません。

「これは自分がやらなくても誰かがやってくれる」と思った瞬間に、その仕事は自分のものではなくなる。言われればやるけれど、自分からは気づかない。気づかないというより、気づく必要がないと思っている。

子どもの勉強も同じです。

親が先回りして整えすぎると、子どもは勉強そのものだけでなく、勉強に向かう準備や段取りまで、自分の仕事だと思わなくなります。すると、いつまでも幼いままになる。

中学受験では、もちろん親のサポートは必要です。小学生がすべてを自分で管理するのは難しいですし、受験情報や教材の取捨選択は親が関わらなければいけない部分もあります。

ただし、何でもやってあげることと、必要なところを支えることは違います。

男の子の場合、特に大事なのは「本人の仕事」を残しておくことです。

今日やる問題に印をつける。終わったものにチェックを入れる。間違えた問題をノートに書く。明日の教材を自分で出す。過去問の直しを自分で確認する。

こうした小さな作業を、親が奪わないことです。

もちろん、放っておけばやらないかもしれません。そこが難しいところです。何も言わなければ、基本ぐうたらですから、楽な方へ流れます。

だから、「やりなさい」と言い続けるのではなく、「自分でやると得をする」「自分でできると気分がいい」という方向に持っていく必要があります。

例えば、本人に今日の勉強量を選ばせる。終わったら自由時間にする。できたところをきちんと認める。ミスの記録を本人に任せる。自分で直した問題が次にできたら、それをはっきり評価する。

男の子は、興味を持てば動きます。納得すれば動くこともあります。自分の成果が見えれば、意外に続くこともあります。

逆に、親が全部整えてしまうと、本人にとって勉強は「やらされるもの」になります。やらされるものだから、すきあらば逃げる。逃げれば親がさらに手を出す。そしてまた自分ではやらなくなる。

この循環に入ると、親も子も疲れてしまいます。

ですから、できる限りがまんすることです。

失敗しそうでも、少し待つ。忘れそうでも、すぐには出さない。雑にやっていても、全部直してあげない。本人が困る場面も、ある程度は必要です。

もちろん、本当に大事なところでは手を貸してかまいません。ただ、そのときも「代わりにやる」のではなく、「本人が次に自分でできるようにする」ことを目的にする。

男の子は、手を掛ければ掛けるほど安心する、とは限りません。むしろ、自分でやらなくてよいことが増えて、ますます幼くなることがあります。

母親としては、見ていてじれったいでしょう。つい手を出したくなるでしょう。でも、そこを少しこらえる。

自分の勉強は自分で動かす。

その感覚を育てることが、受験勉強でも、その先の成長でも、とても大事なのです。

はやりたい。と、ストレートに出やすい。これは女子に比べれば、という話ではありますが・・・。

だから、手を掛ければ、自分でやらなくてよいこと、に分類されてします。

なので、自分でやることが少なくなるから、幼いままになる。

これ、男性の家事に通じるなあ、と思うのです。

今は、大分改善されたのかもしれませんが、相変わらず、「自分でやらなくてよいと思ったこと」はやらない人が多いかもしれない。

なので、少なくも男の子は、あまり手を掛けすぎてもいけない。

だからといって、何も言わないと、基本ぐうたら、ですから、やらないので、いかにやりたいことにするか、がポイントなのです。

「勉強しなさい」を言いたくないから塾を増やす前に

仕事で疲れて帰ってきて、子どもの勉強を見ると、思ったほど進んでいない。予定表はあるのに空白が多い。問題集も開いた形跡がない。

そうなると、つい言いたくなります。

「勉強しなさい」

でも、それを毎日言うのは親にとってもつらいものです。子どもも嫌な顔をするし、親子の空気も悪くなる。だから、もう家で言わなくてすむように、塾の日を増やす。個別指導を追加する。自習室に行かせる。

お金はかかるけれど、仕方がない。そう考えるご家庭は少なくないと思います。

しかし、ここで気をつけなければいけないのは、通塾日を増やしても、根本の問題が解決するとは限らない、ということです。

むしろ、子どもがますます自分で勉強しなくなることがあります。なぜなら、勉強する場所も、やる内容も、時間の使い方も、すべて外から与えられるようになるからです。

塾に行けば、授業はあります。先生は説明してくれます。宿題も出ます。けれど、それだけでは「自分の机で、自分の頭で考える時間」は増えません。

中学受験で本当に力がつくのは、授業を受けている時間だけではありません。むしろ、わからなかった問題をもう一度考える時間、間違えた理由を見つける時間、解説を読んで自分の言葉で整理する時間が大事です。

ところが、塾の日を増やしすぎると、その時間がなくなります。

授業を受ける。移動する。宿題に追われる。次の授業が来る。すると、わからないところを自分で止まって考える前に、また新しい課題が積み上がっていきます。

特に6年生の後半は注意が必要です。ただでさえ塾の授業や特訓、模試、過去問演習が増えていきます。その時期にさらに通塾日を増やすと、子ども自身が整理する時間がますます減ってしまいます。

本来、この時期に必要なのは「もっと外に預けること」ではなく、「自分で勉強する時間をどう確保するか」です。

親が毎日細かく管理する必要はありません。ただし、何をやるのか、いつやるのか、終わったかどうかは、家庭で見える形にしておく必要があります。

たとえば、今日やることを三つにしぼる。終わったら線を引く。できなかったものは翌日に回すのか、捨てるのかを決める。そういう小さな管理で十分です。

大事なのは、子どもが「今日はこれをやる」と自分でわかっていることです。

「勉強しなさい」と言いたくないから塾を増やす、という選択は、一見すると親子の衝突を減らすように見えます。しかし、子どもが自分で机に向かう力を育てなければ、結局また同じ問題に戻ってきます。

通塾を増やす前に、まず家庭で確認したいことがあります。

子どもが自分で考える時間は残っているか。間違い直しをする時間はあるか。過去問を解いた後、自分の弱点を整理する時間はあるか。

そこがなくなっているなら、必要なのは新しい授業ではなく、時間の整理です。

塾は大切な学習の場です。しかし、塾に行けば行くほど成績が上がるわけではありません。最後に得点を伸ばすのは、自分の机で、自分の課題に向き合う時間です。

だからこそ、安易に通塾日を増やす前に、家庭での学習時間をどう守るかを考えておきたいのです。