視点を個に寄せる

多くの塾では、毎月のように組み分けテストが行われます。順位が出て、偏差値が出て、クラスが変わる。子どもたちも保護者も、どうしてもそこに気持ちを引っ張られやすくなります。

もちろん、これまでの段階では、それもひとつの目安になってきたでしょう。今の学力がどのあたりにあるのか、どの単元が弱いのかを知る材料にはなります。しかし、受験が近づくにつれて、そろそろ視点を変えていかなければなりません。

本当に考えるべきなのは、教室内の順位ではありません。第一志望校の入試で合格点を取るために、何をできるようにするか、です。

同じ志望校を目指している子は、同じ教室の中だけにいるわけではありません。別の校舎にも、別の塾にも、あるいは家庭で独自に準備している子もいます。入試本番では、そうした受験生たちと同じ問題を解き、その中で合格点を取らなければなりません。

だから、教室内の偏差値やクラスに一喜一憂するよりも、志望校ではどのような問題が出るのか、その問題を解けるようになるためには何をすればよいのか、という視点に切り替えることが大切です。

これから必要になる勉強を端的に言えば、「よく出て、まだできないところ」を見つけてつぶしていくことです。

たとえば、志望校で図形がよく出るのに、相似や面積比があいまいなままであれば、そこを重点的に直す必要があります。理科で実験やグラフの読み取りがよく出るのに、表の整理でミスが多いなら、その練習を増やすべきです。国語で選択肢の判断が弱いなら、本文の根拠に戻って選ぶ練習を繰り返す必要があります。

これは、必ずしも塾の授業の中だけで解決するものではありません。自分の机の上で、問題集やテキストを使って取り組むこともできます。過去問をじっくり解き直すことで、何が足りないのかが見えてくる場合もあります。

中学入試は、すべての学校が同じ問題を出すわけではありません。それぞれの学校が独自の入試問題を作っています。出題傾向も違えば、求められる力も違います。そして、子どもによってできているところ、できていないところも違います。

だからこそ、これからの勉強は、もっと「個」に寄せていく必要があります。

みんなが受けている授業だから受ける。塾から出された宿題だから全部やる。そういう進め方だけでは、志望校に必要な力を効率よく積み上げることは難しくなります。

もちろん、必要な授業はしっかり受ければよいのです。しかし、「これは今の自分には優先順位が低い」「この時間は別の勉強に使った方がよい」と思うものがあるなら、その判断は大切にした方がよいでしょう。

受験が近づくほど、時間は限られてきます。その限られた時間を、どこに使うか。

クラスを上げるためではなく、志望校の問題を解けるようにするために使う。順位を気にするのではなく、自分ができないところを一つずつできるようにする。

これからは、その視点がますます重要になります。

早寝、早起き、朝ご飯

中学受験の勉強を進めていると、どうしても「もっと勉強時間を増やさなければ」と考えがちです。塾の宿題もある、復習もある、過去問もやらなければいけない。そうなると、つい夜遅くまで机に向かうことになります。

しかし、小学生の場合、夜遅くまでがんばったからといって、必ずしも成果につながるわけではありません。むしろ、眠い頭で問題を解いても、集中力は続かず、ミスも増えます。時間はかけているのに、内容が頭に入っていない。そういう勉強になってしまうことが少なくありません。

だからこそ、まず大事にしたいのが「早寝、早起き、朝ご飯」です。

成績を上げるためには、難しい教材を増やす前に、子どもが元気に勉強できる状態をつくる必要があります。睡眠が足りていなければ、授業を聞いていてもぼんやりする。家で問題を解いても、途中で集中が切れる。せっかく勉強しているのに、効率が悪くなってしまいます。

一方で、早く寝て、朝きちんと起き、朝ご飯を食べてから一日を始める子は、勉強に向かう力が違います。朝食をとることで体が動き出し、頭も働きやすくなります。朝の時間に少しでも計算や漢字を進められれば、それだけで一日のリズムが整います。

もちろん、受験生ですから、やるべき勉強はあります。ただ、それを夜に無理やり押し込むのではなく、生活のリズムの中で無理なく続けられる形にしていくことが大切です。夜遅くまでがんばるより、早く寝て、朝すっきりした状態で取り組む方が、結果的に身につくことは多いのです。

特に夏以降は、塾の時間も長くなり、課題も増えていきます。その中で生活リズムが崩れると、勉強の質は一気に落ちます。疲れが抜けないまま次の日を迎え、また夜遅くまで勉強する。その繰り返しになると、子どもはどんどん消耗してしまいます。

保護者がまず見直すべきなのは、勉強時間の量だけではありません。何時に寝ているか。朝は余裕を持って起きられているか。朝ご飯をきちんと食べているか。ここが整っていないと、どれだけ教材を増やしても、思うような効果は出にくいでしょう。

中学受験は、最後まで走り切ることが大事です。そのためには、子どもの体力と気持ちを守ることが欠かせません。早寝、早起き、朝ご飯。昔から言われている当たり前のことですが、受験勉強が忙しくなるほど、この基本が大きな差になります。

まずは生活の土台を整える。そこから、勉強の集中力も、学習の効果も変わっていくのです。

終わらせるだけ?

塾にも通っている。家に帰ってからも宿題をしている。それなのに、なかなか成績が上がらない。

そういうお子さんに多いのが、「勉強を終わらせること」が目的になってしまっているケースです。

もちろん、課題をやっていないわけではありません。宿題も出している。ノートも埋まっている。けれども、その中身を見ると、「わかった」「できるようになった」というところまで届いていないことがあります。

とにかく終わらせる。丸つけをする。直しも一応書く。これで本人としては「やった」という気持ちになります。しかし、実際には同じ問題をもう一度出されても解けない。少し形を変えられると手が止まる。そうなれば、時間をかけているわりに力がつかないのは当然です。

では、なぜこれほど多くの宿題が出るのでしょうか。

理由はいろいろありますが、ひとつには「やることがない」と家庭に思われたくない、という事情もあるでしょう。子どもが家で手持ちぶさたにしていれば、保護者は「この塾だけで大丈夫だろうか」「個別指導も必要ではないか」と考えます。そうならないように、塾は一定量の課題を出します。

ただし、その宿題が本当に一人ひとりの理解につながっているかどうかは、別問題です。大量の宿題を丹念に確認し、どこでつまずいたかまで見ていけば、授業時間は足りなくなります。実際には、ときどき提出状況を見て、「やっていないのか」と注意する程度になっていることも少なくありません。

すると子どもたちは、「理解するため」ではなく、「叱られないため」「提出するため」に宿題を進めるようになります。これが続くと、勉強時間は長いのに、成績につながらない状態が生まれます。

大事なのは、宿題を全部やったかどうかではありません。

その宿題を通して、何ができるようになったのか。どの問題で止まったのか。解説を読んで本当に理解したのか。もう一度、自力で解けるのか。そこを見なければ、勉強の質は変わりません。

もちろん、すべての課題が無駄だというわけではありません。しかし、お子さんにとって今必要ではないもの、量をこなすだけになっているもの、ただ時間を奪っているだけのものが混じっていることはあります。

「勉強しているのに上がらない」と感じたら、まず確認すべきなのは勉強時間ではありません。

何をやっているのか。なぜそれをやっているのか。それによって何ができるようになっているのか。

ここを一度、具体的に見直してみてください。終わらせるだけの勉強から抜け出さない限り、時間を増やしても、塾を増やしても、なかなか結果にはつながりません。