急ぎの虫

試験を受けている子どもたちの様子を見ていると、みんなカタカタと鉛筆を動かしています。時間制限がある以上、ある程度の速さは必要です。しかし、急ぐことばかりを意識すると、問題文を読み違えたり、条件を見落としたり、計算ミスをしたりして、かえって点数を失うことがあります。

しかも子どもたちは、普段から「もっと速く」「急いで」と言われることが少なくありません。そのため、試験が始まると最初から最後まで同じような勢いで解こうとしてしまいます。いわば急ぎの虫に追い立てられているような状態です。

しかし、これからは単純に速く解くことよりも、試験時間をどう使うかを戦略的に考えることが大切になってきます。

例えば、計算問題や比較的取りやすい問題は確実に得点する。一方で、考えるのに時間がかかりそうな問題は、いったん後回しにする。問題文が長い問題では、最初に少し時間をかけて条件を整理する。逆に、方針が立たない問題に何分も粘り続けない。問題によって時間のかけ方を変えていく必要があります。

入試は、すべての問題を解き切る競争ではありません。限られた時間の中で、合格に必要な点数をどう取るかという勝負です。難しい問題を一問解くことよりも、取れる問題を確実に取る方が大事な場合もあります。だから「急ぐか、急がないか」という二択ではなく、どこで急ぎ、どこで時間を使うかを考えなければなりません。

これから模擬試験や過去問を進めていく中では、点数だけを見るのではなく、時間の使い方も振り返ってください。「この問題には時間をかけすぎた」「ここはもう少し丁寧に読めば取れた」「先にこちらを解けばよかった」といった反省が、次の試験の戦略につながります。

急ぎの虫に任せて、ただ速く解くのではありません。自分の得意不得意や問題の難しさを見ながら、どこで点を取るのかを決めていく。これから先は、そんな戦略的な試験の受け方を身につけていきましょう。

問題文をしっかり理解する

算数の問題を解くとき、まず大事なのは計算を始めることではありません。何を聞かれているのか、どんな条件が与えられているのかを、きちんと理解することです。

特に後半の問題になると、問題文が長くなり、条件もいくつか重なってきます。そこで急いで式を立てようとすると、大事な条件を読み落としたり、違う意味に受け取ったりしてしまう。計算そのものは合っているのに答えが出ない、という場合は、実は問題文の理解のところで間違えていることも少なくありません。

ですから、まず問題文を読んで、状況を整理することです。速さなら図やグラフを描く。場合の数なら表にしてみる。条件が多ければ、わかっていることを順番に書き出してみる。そうやって整理していくと、「何を求めればよいか」「そのために何が必要か」が見えてきます。

ところが試験になると、時間が気になって、早く解かなければいけないと思いがちです。しかし、問題文をよく理解しないまま計算を始めても、途中で行き詰まれば、かえって時間がかかります。難しい問題ほど、最初の読み取りに少し時間を使った方が、その後はスムーズに進むものです。

こうした力は、基本問題だけを繰り返していても、なかなか身につきません。少し条件の複雑な問題にも取り組み、「まず何がわかっているのか」を整理する練習をしていく必要があります。答えを急ぐのではなく、問題の意味がわかってから手を動かす。この習慣をぜひ身につけてください。

過去問はバラバラに進んでもOK

この時期の過去問は、まだ本番のように時間を計って取り組む必要はありません。

時間を決めてしまうと、途中で時間切れになり、手をつけない問題がたくさん残ってしまうことがあります。しかし今、大事なのは何点取れたかではなく、どんな問題が出ていて、それに対してどこまでできるのかを確かめることです。

ですから、まずは時間を気にせず、できるだけすべての問題に取り組んでみる。その上で、できなかった問題を見直し、何が足りなかったのかを考えていく方が、今後の勉強につながります。

同じように、4教科を同じペースで進める必要もありません。

例えば社会は、まだ知識が十分に固まっていないのであれば、先に知識を覚えることに時間を使い、自信がついてから過去問を進めてもよいでしょう。理科も、最初から年度ごとに全部解くのではなく、計算問題だけを取り出して練習する、といった進め方があっていいのです。

一方で、今の時期は算数と国語にはある程度時間をかけた方がよいでしょう。算数は学校ごとの出題の特徴に慣れる必要がありますし、国語も文章の長さや記述の量など、実際の入試問題を経験しながら身につけていく部分が少なくありません。

過去問というと、つい「年度ごとに4教科をそろえて進めるもの」と考えがちですが、そんな決まりはありません。教科によって進み方が違っていてもいいし、同じ教科でも必要な分野だけ先に取り組んでもいいのです。

最終的に入試までに必要な準備が完成すればよいのですから、今は形式をそろえることよりも、何を先にやるべきかを考えてください。過去問も、志望校合格のための教材のひとつです。今の力と残された時間を見ながら、戦略的に進めていきましょう。