習うことが増えすぎてはいけない

中学受験の勉強を進めていると、どうしても「もっと習わせた方がいいのではないか」という気持ちになります。

塾の授業があり、個別指導があり、家庭教師があり、動画教材があり、さらにAIもある。今は、子どもが学べる手段が本当にたくさんあります。

しかし、ここで気をつけなければいけないのは、習うことが増えすぎると、子どもが自分で考える時間を失ってしまう、ということです。

もちろん、教えてもらうことは大事です。わからないことをそのままにしておく必要はありませんし、適切なヒントをもらうことで、理解が進むこともたくさんあります。

ただ、何でもすぐに教えてもらえる環境になると、子どもはだんだん「考える前に聞く」ようになります。

問題を読んで、少し手を動かしてみる。条件を整理してみる。図を描いてみる。前にやった問題とどこが同じで、どこが違うのかを考えてみる。

本来、ここに一番大事な学びがあります。

ところが、授業や解説が次々に入ってくると、子どもはそれを処理するだけで精一杯になります。ノートを取る、宿題をこなす、次の授業に間に合わせる。そうしているうちに、「自分で考えて解く」という時間が後回しになってしまうのです。

特に算数はそうです。

解き方を習えば、その場ではわかった気になります。しかし、入試では少し形を変えて出されます。そのときに必要なのは、習った解き方を思い出すことだけではなく、目の前の問題を見て、自分で筋道を立てる力です。

この力は、説明を聞いているだけでは育ちません。

途中で迷う時間、うまくいかない時間、別の方法を試す時間が必要です。むしろ、その時間こそが実力を作っていきます。

ですから、家庭で考えるべきことは、「何を追加するか」だけではありません。

「何を減らすか」「どこに考える時間を残すか」も、同じくらい大事です。

授業を増やせば安心、教材を増やせば安心、というわけではありません。子どもが一人で問題に向き合う時間がなくなっているなら、むしろ勉強の質は下がっているかもしれないのです。

親が見ていても、子どもが手を止めていると不安になることがあります。

「早く解きなさい」

「わからないなら聞きなさい」

そう言いたくなる場面もあるでしょう。

しかし、少し待つことも大事です。

子どもが考えている時間は、外から見ると止まっているように見えます。でも、頭の中では、条件をつなげたり、前に習ったことを探したり、あれこれ試したりしています。

その時間をすぐに奪ってしまうと、「わかった」という実感も育ちません。

もちろん、いつまでも放っておけばよいわけではありません。どうしても進まないときは、ヒントを出せばよいのです。ただし、答えを教えるのではなく、もう一度問題文を読ませる、図を描かせる、式の意味を確認する。そういう手助けの方が、子どもの考える力を残すことができます。

受験勉強は、習う量を競うものではありません。

最後にものを言うのは、目の前の問題に対して、自分で考え、判断し、手を動かせる力です。

その力を育てるためには、習う時間と同じくらい、考える時間を大事にしなければなりません。

いろいろなものを足す前に、まず子どもが一人で考える時間が残っているか。

そこを一度、見直してみてください。