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過去問は自宅でやってください!?

 塾によって第一志望を決める時期は大きく異なります。

特に集合授業をやっている塾では、できる限り全員を同じカリキュラム上で動かしたい、という考えがあります。したがって6年生の秋、模擬試験の結果が出はじめてから、志望校を絞りはじめるのです。

こんなご相談もありました。

「大手塾に行っています。6年生の2学期から学校別指導ということになり、娘は大学附属校クラスに入りました。すでに3回の授業がありましたが、娘が受ける学校の対策問題は出てきません。先生に相談すると、『過去問は自宅でやってください』といわれるばかりです。そのクラスに通う意味がないように思うのですが、先生はどう思われますか?」

塾の論理を押し付けられているだけでしょう。一人一人の志望校に合わせた学校別対策など、大人数のクラスでできるわけがないのです。大学附属中といってもたくさんあります。その傾向が統一されているわけではありません。いろいろな塾で学校別対策といっている内容が本当に子どもの志望校にあっているのかといえば、そうではない部分もあるでしょう。

 有名校が第一志望の場合はまだ救われます。どこの塾でも合格実績に加えたいと思っていますから、専門のクラスを作ります。しかし、二番手、三番手校はどうかといえば、専門のクラスはまずありえません。何らかの形でまとめられてしまう。集合授業ではそういう方法しかとりようがないのです。だから最近は、個別指導がはやっているのです。個別なら自分の志望校の過去問を持ち込めます。わからないところは聞けるし、受ける学校の問題しかやらないので効果はあるでしょう。しかし、集合にいってかつ個別にも通うということになれば、経済的にも子どもの体力的にも大変です。

 私が数年前、自分の教室でぶつかった問題もそれと同じでした。クラスにいる6年生全員の第一志望が違うのです。だから個別に指導するしかありません。ただし、クラスは集団のままでやりました。

 すなわち、全員に違う課題を与えていくのです。第一志望にあわせて過去問が中心になりますが、個人個人で苦手な分野、学習が不十分な点が違います。だからそこを補う。ですから、同じ時間帯にある子は電気の復習をしていたり、ある子は割合をやり直したりするのです。集団にしたのは、担任が教えるということが重要だと思ったのと、子どもたちの意識の問題です。個別授業の欠点は、個人のペースになりすぎて、ほかを意識できないことです。「あいつもがんばってるんだから、僕もやんなきゃ」という意識は受験勉強には大いにプラスになります。これは集合授業ならではのメリットです。この両者を両立させるために、同じクラスのなかで違うことをさせようということになったのです。

 ただし、このやり方でもやはり1クラスの人数には制限が出てきます。たとえば30人を同時にみることはできない。せいぜい10人が上限でしょう。

 もちろん塾によっていろいろな工夫があってしかるべきです。多くの塾の場合、学校別特訓は有名校に限定されています。その分、中堅校に対する学校別対策は「傾向が似ているので」という形でまとめられてしまうケースが多いでしょう。そういう面も否定はできませんが、しかしお子さんが受験する第一志望の対策はやはり必要なことです。これをどう提供してくれるのか、しっかり塾と相談しておく必要があるでしょう。

 

え、こんな学校だったの?

 あるキリスト教系の中学校。最近は大学受験の結果もよく、人気がでてきています。なかなか難しい学校だったので、合格したときB君はとてもうれしそうでした。いままでの努力が報われた――と非常にはればれした気持ちで学校に通いはじめたのです。

 が、つまづきはすぐ始まりました。ひとつには中学受験が終わったあと、遊びぐせがついてしまったこと。宿題やテストが多いその学校で、たちまち彼の成績は下がってしまいました。しかも、担任との相性が悪い。何かにつけて自分が悪くいわれる。B君は次第に担任に対して不信感を持つようになります。家庭では、何とか学校でまじめにやってほしいと思うのですが、ちょうど反抗期も重なって親のいうこともなかなか聞き入れません。しかも、学校が楽しくない。やがてB君は学校に行くのをやめてしまいました。
 家族は何度か学校との話し合いを持ちましたが、解決する糸口は見つかりません。そして中学3年生の秋、突然B君は附属高校への推薦から外されてしまいました。結局B君は中学3年の秋から高校受験の準備をしなければならなくなりました。しかし、それ以上に先生や学校に対する不信感がさらに増すことになりました。

 中学生といってもまだ子どもですから、つまづきは当然あるでしょう。しかし、それをどう見守ってくれるのか、これは学校の持つ大事な役割だと私は思います。が、私立はとかくこういう問題にはフタをしてしまうことが多い。いじめの問題も根深いものがあります。たとえば、附属の小学校から上がってくるグループ。当然、6年間いっしょでしたから、そこにひとつの序列ができています。それに外から新しいメンバーが入ってくると軋轢(あつれき)が生ずるケースがあります。たとえば附属小のリーダー格の子が、中学から入ったある子が気に入らない。そうすると附属のメンバーに命じていじめてしまう。しかも、そういう子どもたちのいじめはなかなか陰湿なものがあります。いじめられる子が何らか訴えれば、まだ未然に防げる部分もありますが、こういういじめは「脅迫まがい」のことがいっしょに行われていることが多く、いじめられている子をなかなか救えない場合が多いのです。
 また子どもが何らか訴えたとしても、学校がしっかり対応してくれているかどうか疑問が残る場合が少なくありません。学校にもよるでしょうが、退学させて終わりにしてしまうケースもよく耳にします。しかし、それで問題が解決するわけではありません。たとえばいじめの首謀者が退学させられたからといって、はらいせに何かをやることも十分考えられるのです。
 近年、いじめの問題は社会問題化していますが、私立中にも当然いじめはあります。しかし、どんな対応をしているのか、などという話はなかなか説明会でも聞けないでしょう。マイナス情報をディスクローズ(公開)してくれる学校はほとんどありません。親としては、そういう話こそ、本当に聞きたい情報ではあるのですが。

遅いスタート

 6年生になって、友だちが中学受験することがわかり、「僕も中学を受けたい」という子がいます。さすがに6年生になってのスタートは大変です。塾ではすでに基本事項の履修は終わっていますから、2年分を1年でやらないといけない。ところが中学受験のカリキュラムというのは普通の学校の小5~中2までの内容なのでボリュームが多いのです。だから、塾によってはそういうお子さんを迎えないところもあります。集団授業にいれてもついていけないでしょう。

 実際に途中からカリキュラムに入ることは大変な負担です。高学年になればなるほど、小学校と受験塾の学習内容の差は広がっていきますから、たとえ入塾できたとしてもついていけないという場合が多いでしょう。せっかく気持ちは前向きになったのに、遅いスタートをしたばかりに、自信をなくしてしまうケースは少なくありません。

 こういうときは個別指導をおすすめしています。中学受験の内容を1年間で勉強する以上、一気に要点だけをさらっていく必要があるからです。その子に必要なものをコンパクトにまとめて、一気にやり通すのです。とはいえ、やはり時間は不足します。子どもの力にもよりますが、だいたい偏差値55前後までの学校に入れれば良いというところでしょうか。

 いつ始めるか、という議論はいろいろありますが、今多いのは3年生の3学期から、でしょうか。5年生が終わるころに大方の内容を終えて、次の1年間で総復習という以前より半年早いカリキュラムを採用するところが増えてきました。まあ、ここまで早くする必要があるのかどうか、私は議論が分かれるところだと思いますが、やや飛び級的な感じがします。

参考 飛び級

塾のカリキュラムがそうなっている以上、それに合わせていくのが無難といえば無難でしょう。ただ、最初から飛ばしすぎない工夫は必要かもしれません。3年はやはり長丁場ですから。