失敗に学ぶ中学受験」カテゴリーアーカイブ

通塾の回数が多すぎる。

 私自身も中学受験をした口ですが、塾に行く機会はあまりなかったように思います。私は6年生2学期に土曜日1日算数を習いに行った記憶があるだけです。

 当時の中学受験はテスト会が中心でした。したがって家で勉強してテストを受けます。私の同級生の多くは日本進学教室(別称、日進)と四谷大塚進学教室を掛け持ちしていました。

 このテスト会対策として塾に通いはじめる子が次第に増えたのです。

 その後も、どんどん増えてきました。最近は毎日という塾も増えています。つまり中学受験が専門化している(学校の勉強だけでは合格するのが難しい)ので、プロに預けるのが当たり前、またお父さん、お母さんが中学受験を経験していて、やはり塾に行かないと受からない、という気持ちになっているからだと思うのです。

 一方で塾は回数多く来てもらったほうが売り上げも上がるし、他塾に行かれる心配もないから、次第に回数が増え、セットコースが当たり前になっています。

 しかし、本当にそんなにたくさん行かなければいけないのでしょうか。

 遠くから塾に通いたいというお話を伺って、「体力的にも大変だから週2回ぐらいにしたらどうですか」という提案をしたこともあります。その子に必要な内容はある程度決まっているし、それを家庭と塾でフォローすれば2回でも十分だと思ったからです。

 実際に毎日通うというのはなかなか大変だし、それにいつ自分で復習をやったり、過去問を解いたりするのだろう、と思ってしまいますね。それも全部塾のカリキュラムに入っている、ということなのでしょうが、結局、集団授業というのは、ある程度みんなで同じようにやることが多いので、それぞれの子どもたちの得手不得手に手が届いているようには思えません。

 案外、合格実績の高い塾は通塾回数が少ない感じですね。

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そんな学校、行かせないよ

 近年、中堅校が難度を上げてきています。だから、この学校なら止まる(受かる)だろうと思っていた学校が止まらない。2月3日、4日と受験を続けなければならないのは子どもにとっても、親にとっても大変なことだと思います。本来滑り止めには二つの目的があります。実際に行ける学校を確保すること、もうひとつは勢いを取り戻すことです。まだ12歳ですから、入試では緊張します。そこで失敗すると、さらに気持ちが落ち込んでしまって力を発揮できなくなってしまうのです。ところが1校合格して「行ける学校」を確保してしまうと、気持ちが楽になってきますから、ほかの学校も合格しやすくなるのです。だから私は滑り止めについては「ガーッ」と思い切って下げるというお話をしているわけですが、これが事前にはなかなかできない。そこまで下げなければいけないのだろうか、という気持ちになってしまうからでしょう。「行くか、行かないか」は結果が出てから決めればよいことであって、まず一つ確保することが重要なのです。ところがこの戦略をぶち壊す家族がたまにいます。

「そんな学校、行かせないよ」

 誰がいうかといえば、お父さんだったり、おばあちゃんだったりするのですが、これでは滑り止めの機能が果たせません。その学校に合格しても「行けない」ということになれば、勢いを取り戻すことにはならないからです。土台、お父さんやおばあちゃんが持っている学校情報は古いのです。そんな学校、と思っている学校がかつての名門校より難しいことはいくらでもあるのです。
 
 ですから、家族のなかでも十分に話し合いをしたうえで、滑り止めに関する役割も認識してもらって話を進めてください。お母さんだけ先行してしまって、あとで家族の意見が合わずに大変だったという話もあります。ですから、慎重に考える必要があるのです。実際に試験を受けている段階では、なかなかゆっくり考えることは難しいですから、事前にしっかりシミュレーションし、計画を立てておくことが大事です。

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まずは「わかる」・「できる」から

 中学受験を始めるのはやはり親の意思が強いようです。兄弟が受験をしたので、自分も受験するのが当たり前だと思っている子はまだ良いですが、最近は一人っ子も増えてきているので、塾に行きなさいといわれるケースが多いでしょう。ところが子どもたちはまだ遊びたいし、サッカーや野球などスポーツやならいごとも続けたい。自然、受験勉強に身が入らないという子も少なくありません。
 だから大手の塾の場合は、動機付けを親にもってもらうようにするのです。そのための手段がクラス分けテストです。
「良い学校に行くためには上のクラスにいないと」
「御三家に入るためには上の3つのクラスにいないと難しいみたい」
お母さんたちのネットワークでもこんな話が出てきます。
こういう話を聞かされると、お母さんとしては何とか上位のクラスに入れようと思うばかり、がんばってしまいます。クラス分けは点数で決まります。だからいい点がとれればいい、算数や国語はちょっと勉強したところであまり点数がとれないかもしれないけれど、社会だったら点数がとれるかも、そんなことで4年ぐらいから社会に力をいれてしまったりする。しかし、受験はまだ先の話です。いまからそんなに知識ばかり増やしたところで、すぐ忘れてしまうでしょう。本来ならしっかり基礎学力をつくっていかなければいけない時期なのに、全然別のことをしてしまう――これが現状なのではないでしょうか。

 本来、勉強は「わかる」からおもしろいと感じるものなのです。テストも「できる」から楽しいわけで、「わからないこと」「できないこと」をやらされている限り、子どもたちの動機付けはできません。
 中学受験をするのは子どもたちなのですから、子ども自身が勉強に向かう動機を作っていかなければなりません。しかし、それに失敗しているお母さんが意外に多いのです。子どもが中学受験に対して真剣になるのはせいぜい小学校6年生の秋ぐらいからです。このころになれば学校のクラスの友達からも「○○中学を受ける」という話が聞こえてくるので、「自分もがんばらないと」とようやく思いはじめます。それまでの間は、受験に関してはピンときていない子のほうが多いのですから、「中学受験はあなたのためでしょう?」といっても動機付けにはならないのです。
 勉強の最大の動機付けは「わかる」「できる」と思わせることです。私は常日頃から「子どもはほめないと伸びない」とお話をしています。ほめるのはことばだけではなく、ごほうびもあれば効果的です。そんな高いものでなくてもいい、ちょっとしたごほうびが子どもたちにはうれしいものなのです。そうやって自分で勉強するくせがついてくれば、「勉強するのが当たり前」になってきて、「わかること」が楽しくなってくるはずです。

 そしてここが大事なのですが、「わかるもの」だけを最初に与えるのがよいのです。そしてできたらほめる、そして次にまたわかるものを増やしていく。子どもたちの能力もそのとき受容できる力もそれぞれ違います。そこをうまくコントロールしていかないと、子どもは伸びません。3年生や4年生のころは、テストの成績よりもその点に注意しておく必要があるでしょう。子どもはおもしろいと思ったり、楽しいと思うことに対しては積極的な関心を示すものです。それを上手に引き出してあげることが、低学年では特に大事なポイントです。

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