失敗に学ぶ中学受験」カテゴリーアーカイブ

塾に振り回されていません?

 久しぶりに単身赴任のお父さんが東京に戻ってきました。せっかくの春休み、家族で旅行に行こうという話になったのですが、その日程がバッチリ春期講習に重なってしまいます。旅行に行くのであれば、今回の春期講習はお休みしたいところです。そこで塾の先生に電話をしました。

「すいません。単身赴任の主人が帰ってきたので、父親と旅行に行きたいと思います。春期講習を休んでいいですか?」
そうするとけんもほろろ。「だめです。そんなことをしている余裕はありません」とか「せっかく春期で取り戻せるチャンスなんですよ」とかいわれた経験、ありませんか?

でも、受験のために全部を犠牲にする必要はありません。せっかくお父さんが帰ってきたら、やはり旅行に行くべきでしょう。

 旅行に行くのはいいのですが、その間の勉強法は考えておかないといけません。だからそういうことを含めて先生に相談してみることが大事なのです。
 お父さんとの旅行も、春期講習の代わりになるような勉強も両方できるようにする方法はないか? そうすると、相談された先生はいろいろ考えてくれるでしょう。お母さんやお父さんの気持ちもわかって、
「そうですか。2ヵ月ぶりなら旅行にいきたいですねえ」
という話になってくるでしょう。その代わり旅行から戻ったら2日間個別で見てくれるとか、そんな話になってくればいいのです。

 塾には塾の論理がありますが、それを鵜呑みにする必要はありません。我が家の都合があり、家庭の教育方針があってよいのです。そのうえで、何をどう利用するのか、家庭が決めることが重要です。
 私もよく相談を受けました。たとえば5年生の冬期講習。
「先生、これが最後のチャンスだから、スキーにいってきていいですか?」
来年の冬は当然、試験直前だからスキーに行ってる余裕はないでしょう。でも、「全部休みにすると、きっとまた取り戻すのに時間がかかるかなあ」と思ってみたり。
たいていは宿題を出して、スキーに行ってもらっています。スキーに行く代わり、帰ってきたらしっかり勉強するという約束で。
普通は、こういう対応で済むんですが、先日のメールは結構深刻でした。
「春期講習を休むといったら、先生に、『ではうちの塾では責任が持てないので、塾をやめてください』といわれてしまいました。どうすればいいでしょう?」
やっぱりこういう塾は変じゃないでしょうか。

私は別の塾を捜したほうがいいかもしれないと返信しました。
そんなことで責任がもてないなどという塾は、大した塾ではない。どうせ、そういう脅しをかけて講習をとらせろとか誰かがいってるんでしょう。塾はあくまでみなさんが利用するものです。子どもを人質にとられているなどと思ってはいけません。

ある塾の先生がこんな話をしていました。
「昔は、プリントの答えがないのが当たり前だった。黒板に問題を書いて説明していたから、それをノートに書き写させればすんだんです。しかし、いまは休む子もいるし、親もチェックしたいから当然、解答がいる。さらに家でも演習させたいから、もっとプリントをください、そしてその解答もください、とだんだん与えるプリントが増えていくようになりました。そうなると問題を作ったから、これもやらせよう、あれもやらせようということになって渡すプリントが増えるばかり。本当は時間的にやれるはずがないのに、親も持っていくだけは持っていく。渡されると子どもはやらないといけないと思うから、負担がどんどん増えるんです。
昔は洗練された良い問題だけを与えようなどと話していたのですが、熱心なお母さんの要求に応えていくうちに、こんなやり方になってしまったんですよ」
「じゃ、やらなくていいといってあげればいいのに」
「でも先生ね、不要なプリントならくれなきゃいいと思うじゃないですか。実際に不要なプリントだと言えば、価値はなくなりますよ。そうなると面倒見が良いということにはならない。サービスが良くないといまはだめなんです。あの先生は熱心だということにならないとね。だから渡す。しかし、子どもは大変だ」

本末転倒とはこういうことをいうのです。

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偏差値表で第一志望を選んではいけない

各塾の偏差値表が手に入ったらぜひ並べてみてください。それぞれの塾で微妙に違います。数値のつけ方もそうですし、また並び方も微妙に違います。

当然、それぞれの塾が自塾の考え方にあわせて作っているのですが、やはり意図を感じる部分はあります。ある塾が妙にある学校を高くしていたりすれば、「ああ、この学校に自塾の生徒の目を向けたいのだな」と勘ぐってしまいます。

土台、その学校の合格偏差値が正確に計算できるはずもありません。試験ごとに受験する集団は微妙に違いますし、学校の出題傾向も模擬試験とは明らかに違うでしょう。記述式しか出ない学校の判定を記号式でやったところで、意味がないといえば、確かにそれまでなのです。

試験前はこういう話を聞いて、「それはそうだろうな」と思われる方が少なくないのですが、実際に入試直前や入試の渦中にある場合は、そんな余裕がなくなってしまいます。よくご相談を受けるのが「A中学は60でB中学が55ですから、やはりBにしたほうが受かりやすいですよね」という内容。私の答えは、Yesでもあり、Noでもあります。A中学とB中学では当然試験内容が違います。また受験する生徒も何が得意で何が不得意なのか違いがあります。だからB中学には入らないけど、A中学なら入るという場合も当然のことながらあるのです。偏差値5ポイントなんて模擬試験の点数にしたら10点ぐらい。算数で2問違えばもうひっくり返ってしまいます。そんなデータに一喜一憂しても仕方がないのです。

ですから、偏差値表で第一志望を選んではいけないのです。少なくとも第一志望については「成績を見ずに」選ぶ必要があります。むしろどんな学校で、子どもの資質を伸ばすのに良い学校なのか、そうでないのか。入試傾向は子どもの資質に合っているのか、そうでないのか。そういう点に注意を払って第一志望を選ぶべきです。

一方併願校を選ぶ場合は偏差値表を使ってください。たとえば55のお子さんなら、偏差値45の学校であれば確実に合格できるでしょう。そのランクの学校で第一志望と同じように子どもの資質を伸ばしてくれる学校、子どもの性格に合いそうな学校を選んでいけばいいのです。偏差値の1ポイントや2ポイントを気にしても仕方がありません。10ポイントぐらい、すぐひっくりかえってしまいます。

近年、第一志望の学校に第一次募集には落ちて、第二次募集で合格する生徒が見られます。第一次募集のほうが合格人数も多く、偏差値も低い。第二次募集のほうがうんと高いのです。その差は平気で10ポイントぐらいあります。でも、それをひっくり返すことができるのです。その子が特別だから? いいえ、そのくらい僅差で子どもたちが並んでいるからです。だから「これが最後」と気持ちを込めて受験すれば偏差値の10ポイントぐらいすぐひっくりかえってしまうのです。偏差値表は目安にとどめ、もっと学校の具体的な内容や出題傾向に目を向けてください。

そのためには、学習においてていねいさや正確さを身につけなければなりません。考える力や書く力はもちろんのことですが、自分が解ける問題を見つけて、それを正確に解き上げるという力がどうしても必要になってくるのです。ところが実際に受験するのは12歳の子どもたちです。ともすれば、勘違いをし、問題文を読み飛ばし、計算間違いをしてしまいます。いくらお父さん、お母さんが口すっぱく注意してもなかなか直りません。

ミスをするのは原因があります。その原因を取り除くためにどうすればいいのか、その具体的な方法を見つけてあげなければ、ミスは減らないのです。そういう意味で、子供たちにもっと具体的な注意を与えてあげることが重要でしょう。



子どもに合う塾をどう選ぶか

 塾を選ぶ場合、普通は大手の塾を選ぶのが一般的です。人数が多い塾は毎月クラス分けテストをしています(最近の塾はだいたい多いところで25名前後、大きい塾でも15名でクラスを編成するところが多くなっています)。このクラス分けテストは、毎月の履修状況を把握したうえで必要なレベルの授業をするために行われるのですが、同時にできる子どもたちを選抜していく仕組みでもあります。上位に残れば難関校への合格可能性が高まりますから、多くのご家庭がこの上位クラスをめざして毎月がんばることになります。

とはいえ、上位クラスに入れば安心というわけではありません。

 全員の志望校を絞り込んでいるわけではないので、「どこでも対応できるようにする」というカリキュラムになっています。当然4年生、5年生では入試に必要な基礎力を学ぶことになるでしょうが、次第に応用、発展のレベルに入っていくと、受ける学校によっては「あまり必要ない」範囲の勉強まですることになります。その量に惑わされて、力がなかなかつかない場合があるのです。

毎月のテストで、クラスが分けられたり、席が決まったりということになると子どもたちのなかでもある序列が生まれていきます。偏差値もそうですが、ひとつの序列に過ぎないものが、まだ幼い子どもたちのなかでは「絶対的な価値」に見えてしまうことになる可能性があるのです(保護者の方でもそう思っておられる方が少なくないようにも思えますが)。

 試験の結果ですから、毎月変わる可能性があり、担任がしっかり決まらないというデメリットもあります。そんな序列はたいした問題ではないと思えればよいのですが、やはり上位にいてほしいと思うのが親心ですからそれなりに親子でがんばってしまう。そして、「ずいぶんがんばったけど、もう疲れてしまった」ということになる可能性があるのです。

 一方小さい地元の塾は、先生がていねいに子どもたちの面倒を見てくれるでしょうが、まず刺激が少ない。その塾で一番になったところでまだまだ上はいるわけですが、安心してしまうことがあるわけです。学校情報などはだいぶネットワークでとれるようになってきましたが、やはり出てくる資料集などは大手と比べればまだまだというところも多いでしょう。
どういう子がどういう塾に合うのか、親が考えていかなければいけません。

 そこで、まずは公開テストを受けてみることをお勧めします。
最近はいろいろな塾が公開テストをやっていますから、その中から選んで受験してみるとよいでしょう。組分けテストにはデメリットもありますが、公開テストはそのときの子どもの力を測るうえで非常に役立ちます。

 その結果として、偏差値60以上をとれるのであれば、どこの塾に行っても間違いない、なかなか力のあるお子さんですから、大手であろうと近くの中小塾であろうと大丈夫です。60未満の場合、子どもが人と競うことが好きであれば、大手にいってみると良いでしょう。刺激を受けて自分がひとつでも上のクラスに行ってやろうと思う気持ちを持つ子であれば、そういう環境がプラスになります。

 しかし、あまりそういうことに関心がなかったり、やる気が表に出てこない子どもたちはむしろ少人数でていねいにみてもらうところが良いでしょう。また成績がまだ十分でない子どもたちも、小さい塾へいったほうが良いだろうと思います。むしろじっくり力をつけて、6年生の最後に抜きん出てくれればそれが一番効率の良い受験法だといえるのです。

 受験をスタートさせるのは3年生、4年生いろいろ議論がありますが、私は4年生で十分だと思います。

 4年生はどの塾でも本格的な受験勉強にはいる学年でしょう。しかし内容を見てみるとこの学年で履修する範囲は直接入試に出るものは少なく、やはり5・6年生の基礎を作る内容ということができるでしょう。したがってテスト向け細かい知識を覚えることよりは、むしろじっくり考えたり、ていねいに読んだりする力を鍛錬することが重要なのです。

 たとえば国語に関しては、細かい漢字や文法を覚えるよりなるべく長文をじっくり読むようにしたいし、算数は分数や小数の計算をしっかり鍛錬することのほうが重要だと思うのです。単にカリキュラムにしたがってその内容ができるようになるというよりも、もっと学習の礎になるような力をマスターすることが望ましいのです。

 4年生で週2回ぐらい、5年生から週3回くらいと塾へ通う回数を少しずつ増やしながら、自分で勉強するペースもしっかり作っていくことが大事です。

 逆に低学年のうちはしっかり基礎学力をつけていきましょう。特に大事なのは計算力。これは早め早めに勉強していって、4年生ぐらいになったら分数や小数の計算も楽にできるようにしておきたいと思います。

 この基礎学力がしっかりしていないと点数が取れないので、クラス分けのあるところでの勉強は苦痛になります。「まだ早い」とは考えず、少しずつ準備を進めていくのが良いのではないでしょうか。

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