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併願パターンの考え方

 併願パターンを考える際、どこでとめるかという問題を考えておく必要があります。繰り返しになりますが、すべり止め校には二つの役割があります。

 ひとつはまさにすべり止め。万が一ほかがだめならば、その学校に行くことになりますから、単に合格すればいいというわけではありません。事前にしっかりその学校の内容を調べておく必要があります。
もうひとつの役割が「勢いを取り戻すこと」。

 第一志望が「残念」な結果でも第二志望の受験が控えています。このとき、行く学校があることは子どもたちの気持ちに余裕をもたらします。ですからなるべく早めに合格をひとつとるということが大事なのです。
近年の日程表を見ていると、やはり1日か2日に滑り止めを持ってくるべきでしょう。3日はほとんどの学校が2次募集、3次募集になりますから、いかんせん募集定員が少なく、ここで滑り止めを作ることはリスクが高くなります。1日か2日であれば、まだまだ定員も多いのである程度下げてしまえば、合格をとる可能性が高くなるでしょう。

 滑り止めを決めるにあたって、私はよく「ガーッ」と大胆にランクを下げるというお話をしますが、なかなかお母様方にすぐに受け入れていただくのはむずかしいようです。
どうしても第一志望や第二志望と比べてしまうからでしょう。

 滑り止め校は、第一志望や第二志望と比べてはいけません。公立に行くことと比べてください。そこがなければ子どもたちは公立に進む可能性が高くなります。いまはどの私立もしっかりとした教育内容を提供しています。たとえば中学受験の偏差値が40でも高校受験の偏差値に換算すると55から60ぐらいになります。これは中学受験をする層の平均が全体の生徒の平均にくらべて10ポイント近く高くなっているからです。したがって中学受験の偏差値50は高校受験の偏差値60にあたります。中学受験は全体としてはやはり上位層の戦いであることは間違いないのです。だから逆に40の学校であったとしてもなかなか良い内容の学校があるのです。

 ただし、単に偏差値表を見てしまうと偏差値の高い学校が良い学校に見えてきますが、けっしてそうではありません。偏差値が高くても悪い学校があり、偏差値が低くて良い学校があります。入るのが難しくてもスクールカラーが本人に合わなければ意味がないし、また成績のいい子供たちが入ってくるからというので、学校側が何も工夫しないという学校があります。これらの学校が将来良い学校であり続けられるわけではないでしょう。一方で一生懸命提供する教育の中身を改善している学校があります。いまの上位校も10年前は十分に評価されていなかった学校が多いのです。ですから、その辺も踏まえて努力している学校、子どもに合う学校をよく考えてあげてください。

 そして滑り止めに関しては親が主導してください。子どもたちが滑り止めのことを考えるのはあまり楽しいことではありません。むしろ第一志望、第二志望をしっかり狙っていくことが大事。確実に受かる学校を選ぶのも大事ですから、そこはお母さんに任せてという感じでよいのではないでしょうか。

子どものタイプに合う学校の選び方

では(1)~(4)までの視点について、どんな子がどういう学校を選べばいいのでしょうか。まず(1)受験校と付属校に関していえば、

A 受験校
○これから進む方向をじっくり考えたい
○勉強することが比較的苦にならない
○いろいろなことに興味を持つ

B 付属校
○家業に関連する仕事に進む可能性が高い
○やりたいことが明確になっている
○社交的

というのが大まかなタイプ別といえるかもしれません(ご家庭の判断が中心になりますが)。

(2)男子校女子校と共学校で、A共学校に向くのは、
○男子はややおとなしいタイプ
○女子は積極的なタイプ
といえますが、これはまあいろいろでしょう。
ただ女の子がはっきりと「共学がいい」というケースが多いのは事実です。
管理型か放任型かでいえば、
A 管理型
○おとなしいタイプ
○まじめ
○我慢強い

B 放任型
○積極的
○うるさいタイプ
○好奇心が強い

ということになるでしょうか。
管理型の子が放任型に行ったとしても特に大きな問題はありませんが、放任型が合う子を管理型に入れるといろいろ問題がでてくるようです。
ただ管理型にも強い管理型と弱い管理型がありますのでこの辺は学校の様子をよく調べておいたほうが良いでしょう。

 単に学校の名前や場所に目を向けるだけでなく、どんな学校なのか、どういう教育をしているのか、しっかり調べていく必要があります。その内容が子どもの性格や資質に合えば、こんなにすばらしいことはありません。しかし、学校の内容が子どもに合わないと、私立は非常につらい場所になります。学校によって異なりますが、不登校になった子どもたちをそのまま附属の高校に上げる学校はほとんどありません。中学を出る段階もしくはもっと早い段階で退学の処置をしてしまう場合もあるでしょう。私立は退学や落第について公立にくらべれば明らかに厳しい処置をします。
 ですから、子どもに合う環境を選んであげることが必要なのです。これは子どもにできることではありません。親が自分の子どもの性格や資質を十分に理解したうえで、学校を選んでいかなければならないのです。近年のブランド志向はその意味では危険な傾向といわなければならないでしょう。

 では、どのように情報を集めていけばよいのでしょうか。保護者のみなさんができることは、学校の説明会に出かけることでしょう。またオープンキャンパスなどのイベントにも積極的に参加して、どのような授業をしているのか実際にごらんになってみると良いと思います。その際、ただ説明を聞くばかりでなく、質問をしてみるのも良いでしょう。

 また通っている塾の先生にその学校に通う保護者の方を紹介してもらって話を聞くのも良い方法です。入ってみたら全然子どもと合わなかったという方もいらっしゃいます。途中で学校をやめて公立にもどったという子もいます。せっかく中学受験をして合格したにもかかわらず、途中でやめてしまうというのはあまりにもったいないことです。学校案内にはなかなか載っていないけれども、ぜひ調べておくとよいチェックポイントを列挙しておきますので、説明会などで先生方に尋ねてみてください。

○ 英語の教科書は何を使っているか。
○ 各教科のシラバスは学校が決めているか、担当の教員が決めているか。
○ ネーティブ・スピーカーの先生は授業でどのようなテキストを使うか。
○ カリキュラムの進度。
(中3で高校1年の内容に入る学校が増えてきました)
○ 文理選択はいつから始まるか。
○ お弁当は持っていく必要があるか。
○ 出席日数に何か決まりがあるか。
○ 進級に関する基準はどうなっているか。
○ 習熟度別クラスの分け方。
○ クラブ活動と学習のバランス。
(成績が悪い場合は、クラブ活動を停止させてしまう学校があります)
○ クラブ活動の参加状況。
○ 生徒会活動(文化祭、体育祭など)にはどのくらいの生徒がどのように参加しているか。

第一志望の決め方

第一志望を考えるとき、まず今の成績はいったん棚上げします。
というのも、それにとらわれていると選択肢がどうしても狭くなってくるからです。

最初に考えなければならないのは、
(1)受験校か、付属校か
です。受験校は大学受験をする学校、付属校は大学にエスカレータ式でいける学校です。どちらがいいか、というのはご家庭の判断です。子どもが自分の進路の選択をじっくり考えるという意味では大学受験校のほうがいいですが、当然大学受験の負担が生じます。エスカレーター式はその大学の学部しか選べないというデメリットがありますが、一方で学校の勉強をきちんとやっていれば大学に進むことができるというメリットがあります。

次に(2)男子校、女子校、共学校の別
があるでしょうか。

これは子どもたちの嗜好によるところが大きいですが、最近は共学の人気が高くなっています。ただ共学校は数が少ないため、選択肢が絞られます。近年女子校が共学校になってきていますが、それでもまた数が多くはありません。私学は特に女子校が多かったので、共学を選ぶと女の子の選択肢はなかなか狭くなってしまいます。

(3)通学時間1時間以内
学校ではクラブ活動や課外活動があります。当然、朝の練習なども入ってきますからあまり遠距離の通学になるのは望ましくありません。

(4)スクールカラー
学校によって割としっかり管理するところと、子どもの自主性に任せるところとがあります。前者は校則もしっかりあり、生徒の成績管理にも細かい配慮がありますが、一方で宿題が多かったり、成績が下がった場合の子どもの精神的ストレスなどの問題が生じやすくなります。一方子どもの自主性に任せ、校則も少なく制服もないという学校もあります。自由はいいのですが、しつけができていない、あるいは遊びすぎてしまうなどお母さんが心配することもあるでしょう。

このほか、大学の進学実績なども気になるところでしょうが、毎年の増減はさほど気にすることではありません。生徒の顔ぶれによって増減はありますが、現役で合格できなければ浪人で翌年取り返すことが多いので気にかけても仕方のないところでしょう。むしろ5年くらいの期間をみて緩やかに増加していれば、勢いのある学校であることはわかると思います。

以上のようなことを考えて、いくつか候補を絞ってください。

 また、学校説明会や文化祭など、学校を実際に見て、生徒の様子も見たうえで判断されると良いでしょう。

 私自身は、一番大事なのはこのスクールカラーだと思っています。このスクールカラーが合わないと、子どもの学校生活が楽しくなくなります。ひどいときは、せっかく入った学校をやめてしまうことになる。これはもったいない。だからこの点をしっかり考えてあげる必要がありますね。この候補を絞る作業は保護者の方がしっかりとやらなければいけません。子どもたちにはまだよくわからないことがたくさんあります。実際、学校に行けば「制服がかわいい」「サッカーの試合をやっていた」という、それだけの理由で子どもたちは学校に魅かれてしまいます。

事前にしっかり下調べをし、候補を絞り込んで子どもたちに見せてあげるのがいいでしょう。闇雲に連れて行くのは時間の無駄でしょう。

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