まだまだ母親講座」カテゴリーアーカイブ

第44回 2月4日以降の受験 

■現在、入試説明会でお話をしていますが、昨年に比べて2月4日の受験者数が減少しています。これについて2つの考え方があるようです。全体的な人数が増加して、入試が厳しかった分、早めに受験をあきらめた層が多かったという考え方です。そしてもうひとつが2月3日までの間に受験者が受験校を下げて安全な選択をしたので、4日以降の受験者が減少したという考え方です。

■私はどちらかといえばその両方が原因になったのではないかと思います。今年の受験が厳しいことは事前からかなりアナウンスされていました。したがって受験生は午後入試などを利用して、2月3日までにある程度合格を確保したので、もうそれ以上がんばらなくてもいいという感じになったのではないかと思うのです。

■今年の受験では、偏差値で40~50の学校で受験者が伸びています。したがって学校の選択の幅が広がっていきはじめているのではないかと思います。これは大変歓迎すべきことだと思います。私は以前から偏差値が高くて悪い学校があり、逆に偏差値が低くてもよい学校があるというお話をしてきました。各校とも自分の学校でどういう教育をしたいのか、しっかり考えを固めた上で学校の内容を充実させてきています。したがってそれなりに各校ともなかなか魅力があるので、それがだんだん理解されてきているのではないかと思われます。

■偏差値表というのは、読み方を間違えてしまいやすい資料です。偏差値が高ければよい学校だと思われがちですが、実際にお子さんにとって合う学校かどうかは、しっかり吟味しなければなりません。せっかく入っても、子どもたちの性格に合わなければ6年間があまりよい時間にはなりませんから、じっくり選んであげてください。

■来年の入試では6年生の人口も多く、また受験率も上がっていくと予想されます。しかも今年以上に2月1日~3日までの間に集中化する日程になっていくでしょう。その分、メリハリをしっかりつけて、抑えるべきところは、しっかり抑える。狙うべきところはしっかり狙う、そしてどの学校に行っても子どもたちにとってはよい選択だと自信をもっていえるように準備をしてほしいと思います。

(田中 貴)

(2006年3月13日)

第43回 与えることをやめる 

■今の子どもたちは、たくさんあたえられています。食べ物も、自分の部屋も、文房具も、おもちゃも。子どもたちを幸せにするために、いろいろなものを与えなければならないという考えが一般的になってしまったからだろうと思うのです。

■例えばピアノ。今、たくさんの中古ピアノが日本から海外に輸出されるようになったそうです。団塊の世代が団塊ジュニアに買い与えていたピアノがどんどん出てきているのです。弾き手がいなくなり、家を整理する際ピアノがリサイクルに出されるのですが、当時の感覚で言えば子どもにピアノを習わせたいということがひとつのブームだったので、狭い家にフラットピアノを買っていました。これも与えなければという気持ちの強い現われだったでしょう。

■しかし、本当に与えることが子どもの幸せにつながっているのでしょうか?私はちょっと違うように思うのです。たとえば塾で時計の忘れ物がよく出ました。しかし、取りに来ないのです。もっと一生懸命探してもいいと思うのですが、さっさとあきらめてしまっている。新しいものを買ってもらえるからでしょう。

■簡単に手に入るのであれば、大事にしなくなるかもしれません。同じようにたくさん与えているから、何かを求める欲望が今の子どもたちには弱くなっているように思われるのです。例えば、たくさんの問題をやらせなければいけないとなると、やり方を教え、解説をし、解答を教えます。そのくらいの効率でやらないと終わらないからです。しかし、それでは子どもが知りたいという欲望を十分に強められないでしょう。

■算数のヒントをほしがらない子がいます。「いらない、自分で考える」といってヒントも解説も拒否します。でもこういう子どもがやはりできるようになるのです。なぜなら、自分で解きたいという欲望が強いからです。人から教えられより、自分で考え付くほうが、考える力につながります。本当はこうやって育てた方が学力はつくと私は思うのです。

■入学試験のために、これこれのことをこのときまでに終わらなければいけないというひとつの目安があります。それになるべくあてはめるために、たくさんの問題や教材が子どもたちに与えられています。しかし、それだけのことを自分でやりたいと思っている子供が何人いるでしょうか。最初のうちはもっと、素朴に「それが知りたい」「それを解きたい」という気持ちにすることが大事だと思うのです。子どもが楽しんでできる範囲に1週間の学習を制限することの方が今は大事だと思います。与えれば、欲望が減るということを与える側として良く知っておかなければならないのです。

(田中 貴)

(2006年3月5日)

第42回 中学受験率 

■日能研によると、本年の中学受験生は53000人、受験率は18%という集計になったようです。今年は都立一貫校の募集が増えたとはいえ、しかしこの人数はすごいなと思います。 私は中学受験の限界は20%だと思っているのですが、意外にあっさり超えるのかなという気もします。

■一方で少子化はずっと続いているので分子が増えて、分母が減れば受験率は跳ね上がる傾向にあるのです。受験生数がすでに定員を上回って、かつ上位志向が強い中学受験は、どうしても競争率が上がります。その分厳しい受験になってくるでしょう。これは来年も同じ傾向でしょう。

■中学受験が厳しくなると、小学生なので、さまざまな弊害が生まれてきます。例えば小学生にはまだ価値観は明確にはできあがっていません。しかし受験の世界に入れば、偏差値の高い学校=良い学校と思われがちです。でも偏差値が高くても悪い学校があります。学習につまずくと、高校進学段階で簡単に放校してしまうところもあるのです。

■学校というのは偏差値が高い低いよりも、その子を本当に伸ばしてくれるかということで評価されるべきなのです。別に大学受験がゴールではないですが、ひとつの例として考えると、中学受験で御三家に合格して大学受験に失敗する例は山ほどあります。一方で滑り止めに行って、ていねいに育ててもらい成功した子どもたちもたくさんいるのです。

■ところが小学生はそんなことはわかりません。だからその偏差値表を鵜呑みにするし、自分の志望校が下の学校だと「恥ずかしくていえない」ということになってしまうのです。また偏差値が高い、成績が良いと鼻高々になってしまう親子がいるものですが、そういう子ほどいろいろなところで勘違いをして楽しい人生にはならないものです。今の世の中は複雑系ですからいろいろな価値観が存在します。しかし受験の世界は単なる4教科の試験だけで評価を出します。そんなことはたいした問題ではないにも関わらず、絶対的な価値のように思えてしまう、だから間違う人が多いのです。

■これから受験されるみなさんは、まずその点を十分に認識していただきたいと思います。中学入試は単なる4教科の試験に過ぎず、しかも12歳の子がやることです。人生を決めるなんてこともないし、学校はいくらでもあるのです。むしろどこへいっても、その学校をベストにすればいい。むしろ大事なのは受験する過程でしっかり自分で勉強する過程を身につけ、自分の力を伸ばせる能力ができればいいのです。だって「合格して失敗する子」はそれができていないのですから。

(田中 貴)

(2006年2月25日)