■先日ある会合で長年、中学受験や高校受験で教えておられる数学の先生にお目にかかりました。そのとき、たまたま算数のカリキュラムが話題になりました。「ずいぶん、カリキュラムが早くなりましたね。」とその先生が言われます。私も同感です。
■以前に比べると比を習うのが半年位早くなっているし、割合も同様に早いのです。指導要領の方は、どんどん範囲が削られているのに、受験カリキュラムの方は、むしろ忙し過ぎるのではないかと思えるくらいです。
■どうしてこういうことになったのか、事情通の方に聞いてみると、ある塾のカリキュラムが早まって、どんどん追随する塾が増えたのだとか。「早くないと、上位校に合格しないと思われるのがいやで、カリキュラムが早まっているのだそうですよ。」と教えてくれました。
■これはどうも本末転倒な話のように思えるのです。カリキュラムが早くなければ合格しないということはありえません。昔の方が競争は厳しかったし、子どもたちのレベルも高かったのです。むしろ、今の方が問題はやさしくなってように見えます。にもかかわらず、なぜこんなにカリキュラムを早める必要があるのだろうか。確かについていける子はいるでしょうが、多くの子が大変、苦しい思いをするのではないかと心配です。
■特に5年生のカリキュラムが大変です。以前は4年生のカリキュラムと5年前半のカリキュラムがだぶっていて、5年生の前半までは受験勉強をならし運転することができたのですが、今は、最初からトップギアのようなもので、本当に子どもたちの気持ちが続くのか心配になってしまいます。それ以上に、本当は6年生で伸びるかもしれないのに、成績が悪くて、志望校をあきらめてしまうのが早くなってしまう可能性があるなと思います。
■確かに比をマスターすれば、いろいろな特殊算は簡単に解けるかもしれません。ただ、そこにいたるまでに分数や少数の計算がきちんとできるようにならなければいけないし、割合の考え方、速さの考え方もきちんとマスターしなければなりません。それにこの時期は子どもたちの体力や動機付けがまだ十分でないので、あまり苦労するのはよくないと思います。
■ですから、5年生のうちは、あまり成績を気にせず、むしろしっかりとした基礎力を作っていくのがいいでしょう。そして、6年生になり、第一志望もだいたい決まったころから、本当にギアをあげていけばいいのではないでしょうか。お兄ちゃんやお姉ちゃんがいて、受験のペース配分をある程度、お父さん、お母さんがご存知なら杞憂です。でも最初の受験であるならば、ぜひ気をつけてあげてください。
(平成16年10月12日)