パパママ先生合格術」カテゴリーアーカイブ

第30回 電話帳の利用法

■最近、6年生が「模擬試験で算数の点数がとれない」と相談しにきました。模擬試験の結果を見ると、半分ちょっとぐらいしか取れていません。ところが、実際にやり直してみると、あれもできる、これもできるという結果で、全体の8割近くは本来とれていいのです。こういうお子さん、いらっしゃいませんか。

■こういう子は、私がよくお話する「解く力はあるが、得点力のない子」です。本人は成績が悪いので、本当にがっかりしているのです。こんなとき、電話帳を利用して勉強してください。電話帳というのは、もちろん、前年度の各校の入試問題を収録した問題集のことです。分厚いので、こういう呼び名があるのですね。ある学校に限るものではなく、いろいろな学校があるというのが大事なところです。

■さて最初は、やさしい学校から始めましょう。男子の学校にくらべると、女子校の問題はやさしいですから、そこから5校まず選んで、時間を決めてときます。この辺の問題は、解きなおしてできるお子さんの場合、大抵は7割くらい取れるはずなのですが、実際にやらしてみると、5割だったり、8割だったり波があるはずです。

■答えあわせをした後、何がちがったのか、ミスの原因を考えてみます。条件を読み違えた、読み落とした、計算を間違えた、いろいろでしょう。その対策を考えます。条件と思われるところにしるしをつける、式をきちんと書く、答えがでたらもう一度、問題を見直すなどなど。それが終わったら、また他の学校をやります。

■おもしろいもので、何校か続けてやっていくと、良く出る問題というのにあたり始めます。すると本人もだいぶ解き方が身についてくるので、点数が取れるようになります。やさしい問題がある程度とれるようになったら、少しずつ問題のレベルをあげていきます。

■難しい問題になると、当然、合否のラインは下がります。すると、すべての問題ができる必要はなく、捨てる問題を選ぶことも大事な戦略になります。例えば、結構書き出さないとできない問題は、後にまわす、妙に細かい場合分けが必要なものは、どけていきます。

■自分で選んだ問題が、解けるようになってくれば、しめたもの。だいたいどんな学校でも6割はくだらないとなったら、ほぼ完成域です。もちろん、第一志望の過去問をやる方が優先ですが、得点力がない子には、こういう練習をしてみてください。意外に短期間で結果が出てくるはずです。

(平成16年11月2日)

第29回 4教科のすすめ

■近年、受験生の利便性を考えて、2教科、4教科の試験を選択できるようにする学校が増えていました。ところがこれから数年はこの選択制から4教科型へシフトする傾向が見られてくるだろうと予想されます。すでに2005年度入試から4教科に変更する学校は、立教池袋、東京女学館2次、芝浦工大2次などが発表されており、2006年度からは青山学院も算国100点、理社50点の合計300点満点の入試に統一されます。

■この原因は2つあります。ひとつは大学入試の制度変更に対応すること。センター試験が現在原則5教科7科目となり、6年後の大学受験に向けてやはり4教科で学習してきた生徒を取りたいということがひとつ。もうひとつは、学内格差をなくそうという意図。4教科を勉強してきた生徒と2教科だけを勉強してきた生徒では、やはり理科、社会の理解度は4教科生の方が上。したがって、その差をなるべく少なくするのは2教科入試による入学者を減らすということが必要だという考え方からです。

■現在の入試傾向を見ていると、大きく2つの流れに分かれます。ひとつは学校の人気が出てきて、入試がむずかしくなる傾向の学校。一方、その反対に、なかなか人気が出ないので、なるべく入試を多様化して、生徒を集めようとする学校。これまで1日だけの入試であったのが、2次を行う学校が出てきました。実際に、やや硬直化してきたのが、この入試変更によって学内が活性化し、非常に成功したところもあります。また入試を難しくする学校は、やはり4教科の内容を高度に出題してきていて、本当に力のある生徒をとりたいという意欲が見えます。

■この流れにしたがえば、やはり受験準備は最初から4教科である必要があります。ただ、理科、社会は最初のうち、どちらかといえば覚えなければいけない科目であり、塾の週例テストや月例テストの準備が負担になることもあるかもしれません。だからといって、4教科を早い段階から2教科に切り替えるのは、あまり利がありません。

■よくご相談をうけるのが、4教科をやる時間がない、だから2教科にしぼりたいという考え方。ただ、多くの場合、4教科勉強しない子は2教科でも勉強しないのです。理科、社会はこれまで塾でもある程度授業を聞いてきているわけですから、残りの問題はとにかく知識を正確に覚えるということにあります。ある意味こつこつやれば、誰でもできるという話でしょう。ところが算国というのは、やはり考える力、得点する力が問われるので、付け焼刃的に点数を伸ばせるものではありません。したがって、2教科にしぼったところで、あまり偏差値は変わらないというのが、今まで見てきた子どもには多かったと思います。

■ですから、私はあまり2教科への変更をさせませんでしたし、第一志望の変更もあまりしませんでした。もちろん、受験する学校によって柔軟に戦略は考えられるべきで、実際に1回も4教科の試験を受けないのに、4教科を勉強する必要はないわけです。

■ただ、これから受験準備に入る5年生以下のお子さんはやはり、4教科でしっかり勉強をしてもらいたいなと思います。理科や社会を勉強することは非常に大切なプロセスです。それを成績や偏差値で簡単にやめてしまわない方が、結局は良い結果につながっていくと思います。

(平成16年10月25日)

第28回 自学自習のすすめ

■私も中学受験をした口ですが、当時の中学受験はテスト会が中心でした。日本進学教室、四谷大塚進学教室が日曜日にテストをやり、受験生はそれに向けて勉強する。今とは違い氏名もどんどん発表されていましたから、誰ができるのか、他の生徒もよく知っていました。中学合格した後、「あいつが、そうか」などと妙に納得したものです。

■やがてテスト会に対応するために、いろいろな塾ができました。とはいっても、当時は単科の先生が授業をする小さな塾が多かったと思います。今、大手の塾といわれているところもスタートはそうだったと思います。やがて塾は総合サービス産業となり、すべての科目を指導するようになりました。結果として家庭の塾依存度は高まっていきます。

■さらの少子化が塾への依存度を上げました。子どもの数が少ないから、家庭で受験勉強がやりにくくなったのです。お母さんが家で「勉強しなさい」と言いつづけるよりは、塾に出してしまった方がら家庭内でギスギスしないでいいという気持ちが強くなったのです。通塾回数は週2回から3回、4回と増えつづけ、いまは5回と聞いてもあまり驚かなくなってきました。

■今の塾はサービス産業なので、この塾の進み方は非常によくわかります。ところがここでひとつ問題が出てくるのです。本当に子どもたちはそれでできるようになっているのかという点です。もちろん、できる子たちは育っています。本来、力のある子は多少の環境の違いはものともせず、できるようになっていくでしょう。問題はそうではない子たちの話です。

■この場合、その進歩は塾に依存するわけですが、私は本来、家庭に依存すべきではないのかと思っているのです。というのも、子どもたちはこれから成長するにつれていろいろな方向に進んでいき、当然、また勉強しなければなりません。今は受験ですから、受験塾というサービス産業がありますが、すべての範囲にそんな塾はありません。当然、自分でいろいろと苦労しながら、必要なことをマスターしなければならないのです。そのやり方を学ぶには、家庭で学習することが一番ではないでしょうか。自分でいろいろ苦労しながら、本を読んだり、問題を解いたり、そうすることで勉強の仕方がわかってくるのです。

■その意味で、私は当時、私たちがやったテスト会中心の学習の方が良いのではないかと思っています。今のお父さん、お母さんは多分、その経験者が多いのではないでしょうか。子どもたちの受験になったら、システムがだいぶ違っていると驚かれた方もいらっしゃると思います。塾が基本的に問題なのは時間を拘束されてしまうことです。テスト会であれば、家庭での勉強が中心ですから、子どもの資質や状況によって勉強方法を変えることもできますし、その方が実際には効率的、経済的になります。

■塾は便利なところ、役に立つところを利用すればよいのです。中心は家庭学習、そして塾やテスト会でのテスト、それを補うための授業という組み立てが私は一番いいのではないかと思います。ただ、当然、このやり方はお父さんやお母さんががんばらなければなりません。しかし、そのことが親にとってはとても良い経験になると思うのですが。

(平成16年10月20日)