パパママ先生合格術」カテゴリーアーカイブ

第24回 怒る親、誉める親

■先日、ある高校受験の塾を訪問しました。授業を横で見ていたら「そんなのもわからんのか!」という先生の罵声が飛んできました。この塾はどうも叱る塾のようです。しかし生徒もなれたもので、それでビビルこともなく、授業はどんどん進んでいきます。

■ ところで、みなさんは怒る親ですか?それとも誉める親ですか?この前あるお父さんに「どうしたら、怒らずに子供を教えられるだろうか?」と聞かれました。子供の勉強を見ているうちに、だんだん腹がたってくるというのです。「これは、さっきやったろう!」その声を自分で聞いてまた腹が立ってくるというのですから、その分、冷静に見ていらっしゃるようにも感じるのですが。感情を持たないわけにはいきません。腹がたつのも当然の話。私だって授業中ずいぶん腹が立ちました。

■でも親子だから、親が子供に甘えられてしまうのです。(反対ではありません。親が子供に甘えるのです。)お父さんだって、これが他人の子供だったら罵声を浴びせられるでしょうか?当然自分の子供だという気持ちがあるから、声を荒立てるのですね。しかし、怒ってもできるようにはならないのです。子供は大人が怒ると怖いですから耳が閉じます。聞いてません。したがって、何を言ってもわからなくなります。だから怒って教えることには意味がないのです。

■逆にさっきの中学生のように、怒っても聞いていれば、それなりに効果があります。ただ、怒ってばかりではだめで、怒っている人に誉められるから、がんばるようになるのです。たしかに誉めるばかりでは、だめでたまには怒るのも必要かもしれませんが、怒っても聞いていられるようになって初めて効果があるので、それは中学生になってからという感じが私はします。

■ただ、これには余談があって、ある方が調べてみたところ誉められて育ったお嬢さんは結婚が遅く、怒られて育ったお嬢さんは結婚が早いそうです。誉められて育つと家の居心地が良いから、結婚が遅くなるのだというお話でしたが、なるほどと思うところはあるものの、小学生の勉強に関して言えば、ほめるにしくはないというところでしょう。

■昔、ベテランの先生が「最近は、子供に腹が立たなくなりました」といわれたことがあったのですが、これはいけません。塾の先生は腹が立つから、何とかしたいと思ってほめるのです。「君は君でいいじゃないか」と思うようになったら、受験の成果はなかなかあがらないものです。若手の先生がついてくれた方が本当はいいのかもしれませんね。

(平成16年9月6日)

第23回 まず計算力をつけよう

■ある塾に新4年生が入塾しました。学校以外にこういうところで勉強をするのがはじめての子です。「おもしろい、でも、むずかしい」というのがはじめて塾に行った日の感想。「こんなのやったことないから、すぐはできないよ」とも言っていました。最初のテスト。結果は散々なものでした。しかし、本人はめげる雰囲気でもありません。「あいつは、できるんだよ。」という返事。さて、どうしたものか、ご相談がきました。

■ テスト範囲は和差算と角度。問題はそれほどむずかしいものではありません。和差算のとき方も角度のとき方も本人は覚えていました。でも、できなかったのです。結論を先に言えば、計算力がないのひとことにつきるのです。

■三角形の3つの角度ABCがあります。AとBの和はCよりも30度大きく、AはBより5度大きいそうです。Aは何度ですか。という問題があったとしましょう。この問題は2回和差算を繰り返せばとけます。先生が解説します。三角形の和が180度だから30たして2で割ればA+Bがでます。その答えは105度ですからそこから5足して2で割ればAが出ます。といわれて、その通りなのですがこれが計算力がない子はぴんとこないのです。

■子どもはその場その場で、式を考えてしますから、そこを気にすると解説がわからなくなります。だからといって解説を聞いても、計算のイメージがわかないから、理解が進みません。根本は計算力をつけることであって、和差算や角度の復習をしても、決してできるようにはならないのです。

■計算は毎日ちょっとずつ練習して、積み重ねていきましょう。1日3題から5題くらい、間違わないように解いてもらいましょう。たくさんやってもミスばかりではあまり意味がありません。必ず正答するくせをつけます。時間を気にしてもいけません。だんだん慣れていけば、やがて早くなります。最初からスピードを求めるとあわててしまって、なかなか正答する力をつけることができなくなります。

■計算力をつけていくことは、一朝一夕ではなかなかいきません。継続的な努力をすることが必要で、それを苦しくやってしまうと子どもはやりたがらなくなります。毎日少しずつ、積み重ねていくことが大事です。毎日やっていって何日連続ノーミスなどという記録をつけていって、ベスト記録を更新したときは、大いにほめてあげてください。つまらない勉強も楽しくやれば、より力がつきやすくなります。

(平成16年4月3日)

第22回 14.7%

■今年の中学受験の受験率は14.7%だったということが四谷大塚の資料で発表されました。私は15.5%くらいいくと思っていたので、あまり伸びなかったという印象があった一方で、しかし、今年の受験はどこで聞いても大変だったという感想が多かったので、不思議に思っていたのですが、何と今年の6年生の人口が増えていたのです。

■ 人数が増えて、受験率も1ポイント程度あがれば、これは難しくなります。今年の受験はやはり大変だったという印象はその通りだろうと思います。首都圏での受験生の総数は約43200名、昨年比7%増というのだから、大変なものです。さらに受験校数も増えました。平均で5.97校。実際に受験したということではなく、出願という意味ですがこれも随分大きな値です。平均で6校ということは、多い人は10校ぐらい受けているということです。受験料だけで入学金に匹敵するくらいなのかもしれません。

■一方、大学受験の方の発表もありました。久しぶりに週刊誌を買い込んで、比較してみたのですが、発表していない学校もありますから、推計とはいいつつ、やはり私立の躍進が目立ちます。東大の場合、今年は文Ⅰの定員が減少したために、非常に狭き門だったようです。それと近年の特徴は医学部の人気。医者は余っているのではないか?と思う部分もあるのですが、医学部の人気は相変わらずで、国公立の医学部はやはり狭き門のようです。

■入試が厳しくなるということは、子どもたちの学力差はさらに開く方向に進んでいるということになります。トップ校に行く子どもたちの学力はかなりのものです。近年、カリキュラムのスピード化と低年齢化が進んでいて、早くから受験勉強を始めている子どもたちが少なくありませんが、一方で受験をしなければ公立のカリキュラムのままですから、当然差は広がっていくばかりなのです。

■そうすると当然、公立教育の部分で非難がおこります。その結果がゆとり教育の議論につながりました。しかし、それが火に油を注ぐ結果になったのです。差の拡大を抑えようとして、かえって私教育と公教育の差がまた一段と広がっていきそうな勢いです。

■文部科学省は、前回の指導要領の改定の中で大きな方針の変更をしました。これまで、初等教育、中等教育をなるべく均一化していくという方針をやめて、個々の生徒に必要な教育を行うという指針です。この変更は良かったと思うのです。問題はそこから、具体的なプランをどうまとめていくかということに尽きます。しかし、週休2日制を急ぐあまり、その議論が十分でないまま、現在の指導要領の改定が行われたことに大きな問題があります。

■今後は私立も公立も自らの教育内容を吟味して、競争していかなければならないでしょう。その試みのひとつが公立の中高一貫教育校です。先日白鴎高校でその説明会が行われましたが、多くの保護者が参加し、その期待の大きさをのぞかせました。公立教育の質をどこまで上げることが出来るか、大きな転換点だと思います。

(平成16年3月21日)