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第26回 努力の質(2)

入試直前で、ある学校を受ける層を考えると
(1)確実に合格する層
(2)合格が五分五分である層
(3)不合格の可能性が高い層
と分けるすれば一番多いのが(2)の層です。つまり最終的にみんなの力はかなり僅差になってきているわけですね。
ただこの(2)の層が5年生のときの成績はどうであったかといえば、ばらばらなのです。あまり調子が良くなかった子もいれば、落ちてきた子もいるでしょう。しかし、最終的にある学校を目指す段階では、ある層に集約されてきます。

ところがその過程は大きく2つに分けることができます。

すなわち、成績が出る→志望校を決めるという流れか、志望校を決める→成績が出るという流れかということです。

前者であれば、もちろんそういう成績の子が集まってくるわけですから、層がそろうのは当たり前です。ただ、そこまで全員が行ける可能性があったものが、紆余曲折があって、そこに残れたということになるでしょう。

後者の流れで言えば、最初の成績がどうであれ、志望校が決まった段階でその成績を出しに行っているわけですから、スタートがどこであったとしてもそこに残る可能性は高くなります。

つまり努力の質を上げることで、希望通りの受験校になる可能性が前者よりはよほど高くなるということなのです。

ところが現状は、あまりそういうことにはならない。何回かの組み分けテストや模擬試験を経て、だいたいこのくらいの成績だからこの学校にしようという流れが多いようです。でも、それだと全部の範囲をやらないといけないので、効率は非常に悪くなる。だから紆余曲折があって、本来残れる可能性があった子が残れない場合がでてくるのです。

先日、中学受験の難しさというお話をしました。

実は中学受験は上から順に入っているわけではない。もちろん成績上位の方が可能性としては高いが、上位でもかなりの割合が不合格になっているのです。子どものすることだからといってしまえば、それまでですが、でもその成績上位というのは本当に成績上位だったのでしょうか?

つまり、全般的には上位だったとしても、その学校の傾向からすれば上位ではなかったのかもしれないのです。

しかも、ぎりぎりになって志望校が決まった子と、長くその学校を狙った子では当然、モチベーションが違いますから、力の出方も変わっているのです。

当然のことながら、出来ない問題を出来るようにするという努力の質が必要な一方で、後半は志望校に合格していくための努力が必要であり、その質が本当に合格させられるものなのか、保護者がよく検討していなければならないと思います。

第25回 努力の質(1)

5年生は今、分数、少数、割合、円・おうぎ形と結構大変な範囲に入っています。

一生懸命勉強する、時間をかけている、しかし、現実によくわかっていないということがあるのではないかと思います。

子どもたちはいったいどこまで、自分が努力をしていけばいいのか、イメージとしてつかめていないのが原因です。
例えばできなかった問題について、

(1)できなくても仕方がない
(2)解法はわかったから大丈夫。
(3)もう一度やったときに、できないといけない。

という考え方があるでしょう。多くの子どもたちは(1)か(2)なのです。この感覚では時間をかけても、なかなかできるようにならないでしょう。当然、(3)のレベルでないと、できるようにはならないのです。

この感覚をもってやる勉強とそうでない勉強では、同じ時間でもまったく努力の質が変わってくるでしょう。で、小学生の指導で一番問題なのは、この情況をわからせることなのです。

厳しく指導して、例えば口うるさく言ったとして、本人が
「そう思わない」
という状態であれば、まったく情況は変わりません。強制されて、涙を流しながら勉強しても、本人がそう思っていないと事態は進まないのです。たぶんそういうとき、子どもは
「僕はかわいそうだ」
としか思っていない。だから、変わるはずがないのです。

子どもには変わらないとまずいと思わせないといけないのです。だからどうしても入りたい志望校が必要なのです。

不合格でも仕方がないと思う学校では、本人は変わらないのです。どうしても入りたい、そのためにできるようになりたい、そういう欲望が出ないと努力の質は(3)のレベルまで上がらないでしょう。

私が「やらされる受験勉強では力がつかない」といっているのは、そのためです。

そしてここが重要ですが、このレベルまで努力をする限り、「頭がいい」「頭が悪い」の話はなくなるのです。

時間がかかろうと、とにかく結果が出ればいいのです。中学受験とは結局、能力の問題ではない、むしろ努力の質の問題でしかない。中学入試は入試当日の成績で決まるわけですから、そこに向けて本当に質の高い努力を継続的に自分でできるか、ということが鍵になるのです。

しかし、その質が具体的にイメージとして湧いていないのは、子どもばかりではないでしょう。指導している塾の教材にも問題があると思っています。

大量の宿題が出ている場合、子どもたちはただ終わることが「努力だ」と思ってしまう傾向があるのです。あるいは早く終わることが「勉強」だと勘違いすることになる。だからできるようにならない。

成績が振るわなかったら、まず量をこなすという発想をやめることです。
同じ問題を、もう一度解きなおす、これはある意味、退屈かもしれません。でも本当にできるようになったか、自分で確かめたい欲望を持っている子どもは、むしろ嬉々としてこの勉強に取り組むものなのです。

第24回 中学受験の難しさ

四谷大塚の入試情報センターのホームページに入試結果グラフがあります。まもなく更新されてしまうと思いますが、2006年の3校の結果をごらんください。

麻布中学
開成中学
早稲田中学

グラフの見方は偏差値別に黄色が合格者でかつ進学者、緑が合格者で非進学者、ピンクが不合格者で帯になっています。80%ラインは合格者が8割になっている偏差値、同様に50%、20%ときられています。

男子の人気校で筆記試験のみの学校ですから、なんとなく上から合格していくようなイメージがあるかもしれませんが、結構ばらついているのが各グラフでおわかりになると思います。

麻布で言えば、全員が入っているのは70まで。しだいに不合格者の割合が増えてきて、62で半々。
54の子までは合格していることがわかります。

開成でも全員が合格するのは73まで。67で半々。57までの子が合格していることになります。

72でも落ち、57でも入る、これが中学受験の難しさでしょう。学年が上がるにつれて、だんだんこの差が縮まってくるわけですが、やはり子どものすることですから、ミスがあったり、上がったりすれば、大丈夫と思われた子でも落ちるし、今まで成績が悪くても、ここ一発で入ってしまう子もいるのです。

要はその日できるか、できないかであって、開成の試験はこの合格者が上位に並んでいるだけなのです。だから途中の偏差値やクラスは、さほど大きな問題ではない。むしろ、当日にどれだけの力を発揮できるかにかかっているのです。

むしろ子どもたちのモチベーションを上手に引き出し、後半にぐーっと伸びて、合格ラインを突破するというイメージが一番、良いのではないかと思います。

最近、塾ではいろいろな試験があり、クラス分けもされているわけですが、それでもこれだけバラつくのです。ですから、組み分けテストや偏差値にあまり振り回されてはいけないと思うのです。

むしろ、最終の結果をよくするための長期、短期の計画と学習の実践が必要なのではないでしょうか?