はたまた母親講座」カテゴリーアーカイブ

第49回 コミュニケーション

中学受験は、子どもたちにとって初めて自分で勉強して準備するものですから、子どもたちの努力の水準がきわめてあいまいで、また親が考えるものと大きくかけ離れる可能性があります。

親としては、このくらいやって当たり前だろうと思うことが、子どもには途方もないことに見える。

また親がまだまだ、と思っていても、子どもたちにとっては一杯一杯の努力だったりするものです。

親は自分の受験経験から照らして、このくらいがんばらないと受からないという思いがあります。しかし、子どもたちにそれはありません。ですから、すれ違いがおこる。
親は子どもの勉強の姿を見て、腹をたて、子どもたちは理解のない親だと嘆く、まあ、こういう図式がどの家庭でも見られるのではないでしょうか。

したがって、親と子がよくコミュニケーションをとらなければいけません。親としては、このくらいやって、当然だ、と思うことがどうして、そうなのかも説明してあげる必要があり、子どもたちもそれがなぜ無理なのか、説明する機会がないと、子どもたちはただ「やらされる勉強」に終始してしまうことになります。

「やらされる勉強」は決して効果をあげません。「終わればいい」「答えればいい」ということになって、本当に必要な「理解する」という目標からかけ離れてくるからです。

成績が上がらなかったり、親としてこの先に不安を感じたら、まず子どもたちとよくコミュニケーションをとることだと思います。ただし、一方的にいろいろと押し付けるのは絶対にだめです。あくまでコミュニケーションですから、子どもたちの話もよく聞いてあげ、そのことから子どもたちのモチベーションを上げる工夫をぜひしていただきたいなと思います。

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最終回 中学生になったら

■子どもが中学生になったら、特にお母さんは子離れの意識をもたなければいけません。お母さんはどちらかといえば、まだ子どもでいてほしいし、手を焼きたいという気持ちが強いものです。特に男の子の場合は、女の子に比べて精神年齢が幼いですから、お母さんはまだまだかまいたくなるだろうと思います。

■しかし、中学生は自立したい年頃です。第一次反抗期から第二次反抗期へ移る時期に進む時期ですから、何でも自分のやり方でやりたい、お母さんにはあまり干渉してほしくないと思うようになります。反抗期というのはある意味、自分に自信がでてきたということなのですが、もちろん、まだまだ力不足ではあります。ただ、だからといって親が先回りしても本人に力がつくわけではありません。やらせてみて、ほめてあげなければ人は育たないのです。

■ところが「うるせえな、いいだろ、別に!」と子どもに言われると、お母さんは我を忘れます。本当はその前に、お母さんがいろいろと子どもの自立心を踏みにじっているケースが多いのですが、もうここまで行くとお互い戦わなければ気がすまなくなります。これがエスカレートすれば、家庭内暴力にもなるわけですが、誰も最初からそうなるのではなく、当然、小さなものが積み重なって爆発するのです。

■中学生になったら、親は一歩下がって子どものやり方を見てください。もちろん危なっかしいことは多いでしょうが、それを禁じても、やる子はやるのだし、かえって隠されるとわかりにくくなります。ですから、叱るのはかまいませんが、常に叱るという状態でなく、子どもと話し合うことが大切でしょう。

■ところがそうやって距離感をうまく保ち、かつ親は心配するということが子どもたちに伝わっているとすれば、やがてその反抗期は、少しずつ変わっていきます。落ち着いたなと思えるようになるのは、中3から高2くらいまで長短ありますが、だいたい収まってくるものです。

■この距離感の作り方として大事なことは、お母さんが子どもへの関心とは別の世界をしっかり持たれることだと思います。仕事をお持ちになるのもひとつ、あるいは趣味をはじめられるのもひとつです。要はすべての関心が子どもにいかないようにすることです。

■中学受験が終わった後も、子どもたちの成長は続きます。しかしこれからは、子どもが一人で成長していく部分が多くなっていきます。親はこれまでのように関わる時間も少なくなりますが、それを寂しいと思わないでください。むしろ認めてあげたり、アドバイスしてあげたりすることで、違った意味での長い付き合いが始まるのです。お父さんは、息子と一杯やれる時期が近づいたことを喜んでいるかもしれませんね。そういう気持ちで、これから子どもたちを見守ってあげてください。

(平成15年1月26日)

1年間に渡り連載させていただきました「はたまた母親講座」は今回で最終回となりました。ご購読いただいた方、ありがとうございました。新年度からは新たに「パパママ先生合格術」という連載をスタートします。またご期待に添えるようがんばります。(田中貴)

第49回 合格して失敗する子、不合格でも成功する子

■入試と合格発表が続々と行われています。合格、不合格、悲喜こもごもだと思いますが、子供の教育においては、ほんの通過点。ゴールなどでは決してありません。中学受験はある意味、子どもがはじめて、自分の力で突破しなければならない関門ですが、それを突破したからといって、それですべて大丈夫なわけはないのです。

■合格した子どもたちが陥るわなは、そこにあります。がんばって合格した、もう大丈夫、これからは好きなことをやっていこうと考えてしまうと、学校に入ったあと、大変苦労します。面倒見のよい学校なら、いろいろと手を尽くしてくれる可能性がありますが、放任主義の学校だったり、どんどん進んでしまう学校の場合だと、落ちこぼれてしまいます。それがひどくなると登校拒否になったりするのです。

■一方で力及ばず、突破できなかった子たちも、この失敗を教訓にして、中学になって努力するようになりますから、失敗も悪くはありません。私が塾で教えていたころ、ある大学の付属高校に中学から進学した子どもと中学受験で失敗して高校でその学校に入った子どもが、そろって遊びにきたことがあります。このときばかりは、なるほどと思いました。中学受験で失敗した子どもは、それなりに大変だったとは思いますが、努力もし、実にしっかりしていました。中学で入った子どもたちは、どうものんびりしすぎといった感じでしたから、落ちたときはつらかったろうが、かえってその方がこの子にとってはよかったかも知れないと思ったものです。

■親とすれば、なるべく子どもたちには失敗してほしくないと思うのが当然かもしれません。しかし、なるべくならまだ小さいうちに多少の失敗は克服して、また明日がんばろうという気持ちをもってもらえた方がよいのです。お母さんの中には、なるたけ、子どもが失敗しないようにと考える方が多いのですが、あまりその気持ちを強く持たない方が子どものためになります。

■私は、子どもたちにはこれから生きていくうえで2つのことを、中学受験で修得してもらえばよいと思います。1つは、常に積極的な気持ちをもつこと。偏差値にも合格可能性にも、お母さんの罵声にもめげず、よし、またがんばろうという気持ちを常に持てるようになってほしいのです。「今の僕よりは明日の僕に期待してて」なんて言えるようになったら、その子の人生はきっとすばらしいものになると思うのです。

■もうひとつは月並みですが、やはり努力できる子になってほしいと思います。別に勉強にとどまらず、スポーツでも音楽でも、自分がこうなりたいと思っただけではそうなれるものではありません。でも、積極的な気持ちをもって努力できれば、目標に近づいていくことができます。そういう努力ができる子になってくれれば、あとはそんなに心配しなくても、子どもたちは成長していくでしょう。

■合格して失敗した子どもたちも、その失敗に気づけばまたがんばるようになります。そうやっていろいろ経験しながら、子どもたちは大きくなっていくのです。ぜひ、今度の受験が子どもたちにとって、実りの多い受験になってくれればと思います。

(平成15年1月19日)