第49回 合格して失敗する子、不合格でも成功する子

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■入試と合格発表が続々と行われています。合格、不合格、悲喜こもごもだと思いますが、子供の教育においては、ほんの通過点。ゴールなどでは決してありません。中学受験はある意味、子どもがはじめて、自分の力で突破しなければならない関門ですが、それを突破したからといって、それですべて大丈夫なわけはないのです。

■合格した子どもたちが陥るわなは、そこにあります。がんばって合格した、もう大丈夫、これからは好きなことをやっていこうと考えてしまうと、学校に入ったあと、大変苦労します。面倒見のよい学校なら、いろいろと手を尽くしてくれる可能性がありますが、放任主義の学校だったり、どんどん進んでしまう学校の場合だと、落ちこぼれてしまいます。それがひどくなると登校拒否になったりするのです。

■一方で力及ばず、突破できなかった子たちも、この失敗を教訓にして、中学になって努力するようになりますから、失敗も悪くはありません。私が塾で教えていたころ、ある大学の付属高校に中学から進学した子どもと中学受験で失敗して高校でその学校に入った子どもが、そろって遊びにきたことがあります。このときばかりは、なるほどと思いました。中学受験で失敗した子どもは、それなりに大変だったとは思いますが、努力もし、実にしっかりしていました。中学で入った子どもたちは、どうものんびりしすぎといった感じでしたから、落ちたときはつらかったろうが、かえってその方がこの子にとってはよかったかも知れないと思ったものです。

■親とすれば、なるべく子どもたちには失敗してほしくないと思うのが当然かもしれません。しかし、なるべくならまだ小さいうちに多少の失敗は克服して、また明日がんばろうという気持ちをもってもらえた方がよいのです。お母さんの中には、なるたけ、子どもが失敗しないようにと考える方が多いのですが、あまりその気持ちを強く持たない方が子どものためになります。

■私は、子どもたちにはこれから生きていくうえで2つのことを、中学受験で修得してもらえばよいと思います。1つは、常に積極的な気持ちをもつこと。偏差値にも合格可能性にも、お母さんの罵声にもめげず、よし、またがんばろうという気持ちを常に持てるようになってほしいのです。「今の僕よりは明日の僕に期待してて」なんて言えるようになったら、その子の人生はきっとすばらしいものになると思うのです。

■もうひとつは月並みですが、やはり努力できる子になってほしいと思います。別に勉強にとどまらず、スポーツでも音楽でも、自分がこうなりたいと思っただけではそうなれるものではありません。でも、積極的な気持ちをもって努力できれば、目標に近づいていくことができます。そういう努力ができる子になってくれれば、あとはそんなに心配しなくても、子どもたちは成長していくでしょう。

■合格して失敗した子どもたちも、その失敗に気づけばまたがんばるようになります。そうやっていろいろ経験しながら、子どもたちは大きくなっていくのです。ぜひ、今度の受験が子どもたちにとって、実りの多い受験になってくれればと思います。

(平成15年1月19日)

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