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第一志望を強く心に持つ

 6年生ではまず目標が必要です。どこに合格させるのかということで戦略は当然変わってきます。ですから、まずしっかりと第一志望を決めることです。最終的に何校合格しようと通学するのは1校だけ。だから第一志望に合格することが一番です。第一志望に合格してしまえば、あとはほかの受験生に譲ってかまわないのです。

 6年生の秋に行われる模擬試験の結果で第一志望がころころ変わってしまう方がたまにいますが、これは間違い。第一志望を決めてその入試傾向にあわせてじっくり戦略を練ることが合格の近道なのです。第一志望を変えてしまうと、それまでの勉強の効果がなくなってしまいます。

 そしてもうひとつ大事なことは親子ともこの第一志望を強く受け入れることです。「絶対に合格しよう」という強い気持ちを持つことが必要です。「もしかすると入らないかもしれない」という心配は受験勉強の敵といってもいいでしょう。「こんなにがんばったってだめかもしれないし」と思えば、力は入りません。やるべきことをきちんとやって「絶対に合格してやるんだ」という気持ちを子どもがしっかり持てるように導いてあげてください。

 さて、その次は入試傾向の分析です。入試問題はどの学校にも特徴があります。過去5年、10年と調べていけばやはり何が出そうなのか見えてくるでしょう。その結果として、やるべき勉強がだんだん絞れてきます。

 子どもたちは今まで4年生くらいからずっと受験勉強をしてきましたが、学習した内容はかなり広い範囲になります。どのくらいかといえば中学校の全課程の3分の2くらいまで及んでいるのです。それを残りの期間ですべて復習し終わることはなかなか大変です。ですから、何が出るのか、そこから勉強をしぼる必要があるのです。例えば国語についていえば、多くの学校が物語文と説明文の読解と漢字にしぼってほぼ間違いないでしょう。詩や文学史、あるいは国文法はあまり出題されないし、過去にあまり出ていなければまず出ないといってもいいのです。

 同様に難しい電気や化学の計算問題も学校によってはまったくでない学校があります。そのことを調べもせず、単に模擬試験の結果から難しい電気をこれでもかと勉強して何にもならなかったということはあるのです。

 中学入試は当日の結果がすべてです。当日、合格点が取れればいい話。それまでの間がどんな偏差値であろうと、どんな点数であろうと合格には直接関係がありません。

 逆に考えれば、出るものをやる、これは子どもたちに分析させるわけにはいきませんから保護者の方が塾の先生としっかり相談して進めてください。塾によっては「そんなことをやっても意味がない」と先生にいわれる場合があるでしょう。これはその先生が情報を持っていないだけの話。決まったカリキュラムを進めるしか方法を知らないだけなのです。志望校が違えば、対策はおのずと違ってきます。

 さて、傾向の分析が済んだら次は、子どもの現状を正確に把握することです。ただしそれはよく出題されるものに対してどうか、ということに集中すべきです。出ないものはできなくたってかまわないのです。

 それと試験のくせもよく知っておきましょう。最近中堅から上位の男子受験校は難しい問題を前半にちりばめるようにしています。これは特に成績の良い子どもがかかるワナといってもいいかもしれません。自信があるから、前半の問題は全部できなければいけないとつい思い込んでしまう。そして難しい問題に時間をかけてしまい、後ろの簡単な問題を落としてしまって失敗するのです。

 実はこれらの学校は、全体を見極める力を期待しているのです。やさしい問題、自分ができる問題を見つけられるということは試験に対して強い子です。ということは先の大学受験も期待できるでしょう。そういう傾向を先に知っておけば、「わからなかったらすぐ飛ばせ」というアドバイスで簡単に通り抜けられるのです。こういう準備もまたしっかりやっておかなければなりません。

 そうやって絞っていくと、やらなければいけない課題が出てくるでしょう。それに優先順位をつけて、計画化していきます。

 そしてもはや時間が間に合わないと思われる学習内容や参考書はすべて机の上から消してしまってください。これまで塾で貰ったプリントで、復習をしようと思っていたのになかなかできなかった問題は、もはや置いておいても仕方がないのです。この先も多分やる暇などないでしょうから、とっとと整理してしまうことです。


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楽しく勉強することは可能か?

 力をつけるためには勉強しなければなりません。これは当たり前の話。ただ勉強するにもイヤイヤやるのと積極的に取り組むのでは同じ時間やっていてもだいぶ結果が違います。
 子どもたちは基本的に「問題を解きたい」「わからないことをわかるようにしたい」という自然な欲望を持っています。私の算数の授業でよく「ヨーイドン問題」というのをやりますが、これはできる順番を争う競技です。ホワイトボードに問題を書いて、ひとつ条件を隠します。これがスタート。全員がノートに問題を書き終わったところでスタートの条件を書き加え、子どもたちがいっせいに解きはじめます。できた子は手をあげてマルをつける、間違えたらもう一回。その順位を競うのですが、みんな熱中してやります。気持ちが前向きになっていると、あっという間に勉強が進むし、力もつくわけですが、そういう気持ちを上手に引き出さないと、なかなか前向きに受験勉強に取り組むことができないのです。

 受験勉強を続けるためには当然、遊びをガマンしなければならない場面もありますし、つらいことも多いでしょう。しかし、それを何とか楽しいと思えるように変えていくことで勉強は進むのです。努力する、がんばる、そういう精神論がよくいわれますが、もっとシンプルに、子どもたちの「成長したい!」という欲望を上手に引き出していくことが大事になるのです。

 そのためには、常に前向きな言葉、肯定的な言葉をつかって子どもたちのやる気を引き出していかなければなりません。

 我が家の子どもたちの話をしましょう。

 二人とも中学受験をし、それぞれ志望の学校に合格しました。私は仕事柄、子どもたちにも中学を受けさせるだろうと思っていましたから、早くから準備を始めました。幼稚園の年長からうちの塾にいれていたのです。

 とはいっても週一回、90分ぐらいのものです。早くから字を覚え、算数の基礎的な力をつけるためでした。なぜ、そんなに早く始めたのかといえば、スタートがいっしょなのはここだけだからです。進学塾のカリキュラムは当然学校よりも早くなります。ですから例えば3年生で入ったとしても、すでに学校よりも難しいことをしていることになるわけで、ではどこがいっしょかといえば小学校1年、すなわち年長さんの卒園のころになるわけです。

 1週間に一回塾に行き、宿題をもらい、復習をする、そういう習慣を早くからつけました。だからすごく勉強したわけではないが、当然学校の勉強はすぐできるようになります。それが子どもたちに自信を与えました。だからいろいろなことに対しても積極的に臨むようになりました。運動も、音楽も。

 小さいとき、家ですこしずつでも勉強の面倒を見て、自信をつけていけば、それなりにできるようになり、積極的にもなります。もちろん、遊ぶことも大事です。ただ遊んでばかりではいけない、勉強もするんだということが当たり前でなければいけないのです。


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親子で受かる![中学受験]まいにち目標達成ノート
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算数は時間をかけて

 よく「算数の問題はじっくり考えさせてください」というお話をします。

 子どもたちが自分で問題に取り組んでいくとき、いろいろなことを試しているうちに時間がかかってしまうことがあります。図を描いてみた、グラフにしてみた、そういう試行錯誤をやってはいるものの、実際に答えが出てこない。

「そろそろ答えを見たら?」「いや、まだ」

 こういうときは、多少時間に余裕を持って子どものすることを見ていてほしいと思います。
「だって次にやらなければいけない問題が」
 その通りですが、これまでかけた時間を有効にする意味では、ある程度結論が出るまでは時間をかけるべきなのです。その試行錯誤のなかで子どもたちはいろいろな経験を積んでいきます。
 これではだめなんだ、そうか。だめなんだという発見も大事なことなのです。そして、できる場合もあるでしょう。最終的に「だめだ、わからん」という場合もあるでしょう。そこまで来て答えや解説を見ると、それこそ水が砂にしみいるように理解が広がります。それを中途半端にさえぎって、答えを見ても十分に経験があがっていないので、理解が進まないのです。

 逆に鉛筆を動かすこともなく、ただじっと問題を見ている子がいます。その子がよほどの天才でもない限り、「本人に解く意欲がない」と見ていいでしょう。このような子に1問30分与えても、仕方がないのです。

 本人のやる気がなぜ起きないのか、問題のレベルがあっていないのかもしれないし、実は遊びに行きたいと思っているのかもしれません。その辺をしっかり聞いてみたらいいでしょう。子どもが自分でやる気になれば、その分自学自習の作用が効いてきます。学びたいという気持ちが強ければ、理解も進みます。逆にそうでなければ、「やりなさいよ!」と強制されたところで大して身になるわけもないのです。


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