失敗に学ぶ中学受験」カテゴリーアーカイブ

国語の出題 3つのパターン

 最近の国語の出題はどの学校も読解中心になっています。いわゆる言語体系(知識分野)の出題は減少し、文章を理解し自分の考えを表現するというところに重点があります。
 私は大きく三つに分けて考えます。

 (1)完全記述型

 難しい男子受験校に多い分類ですが、長文を1題出題し読解の設問をすべて記述で答えるもの。出題される文章は物語文のみという場合もあれば、論説文、説明文、物語文がその年によって選択されて出てくるものなどがあります。記述の問題はだいたい7題から10題前後。約1時間という試験時間の中で書き上げるので、なかなか大変な問題ではあります。記述は書きなれることがすべて。特に5年生までの間は記述の問題を飛ばす子が多いのです。面倒だと思うのでしょう。したがって、早くから練習をしていかなければなりません。まず書けないと文章を直すことができないので、どんな文章でもいいから、とにかく書けるようにすることが大事です。

 次に文章を直していく段階に入りますが、このときは、とにかく結論は何か、を明確にすることです。それを一番最初に書く。というのは、子どもは文章を書いているうちにだんだん違う方向に行ってしまう。かつ、時間切れになることもあります。時間切れになっていても最初に結論が書いてあれば、それは部分点につながる場合があるのです。ですから、結論を先に書き、その後説明をする。また結論がひとつにしぼれない場合は、指定される条件(ひとつだけ書けなど。)がない限りは、併記するのがコツです。採点する側からすると、片方が合っている場合、全部×にすることはちょっと難しい。したがって部分点になります。部分点を積み重ねることが、こういう試験の攻略法です。

 最後に文は短く、簡明に。私はよく「ひとつの文はひとつのことを言えばよい」と指導していました。つまりその文が何をいいたいかが、明確になるようにしていくのです。この短文の積み重ねは読んでいると、リズムが出てきて読みやすくなります。そうすると、やはり点数が高くなる可能性があるのです。だらだらと一文を長くする子がいますが、そういう子にはどんどん切らせて、短文を積み重ねる練習をさせると良いでしょう。

 (2)記述、選択併用型

 これがあてはまる学校は一番多いでしょう。長文も2題程度出題されて、そのなかで選択肢や適語選択、文中の表現の書き抜き、そして記述問題が問われます。記述がすべてではないにしろ、自分の言葉で説明する問題が出題の3分の1程度は求められています。そのかわり、知識分野の出題はそれほど多くないという型です。

 このパターンで問題なのは、選択問題でしょう。選択問題は、紛らわしい選択肢を作ることで難しくはなるのですが、一方でこの種の問題は、明確に答えがアである、と後に説明できないと問題になります。

 入試の段階では入試問題や採点は発表されませんが、その後学校は入試問題を発表します。ていねいなところは解答も発表しますが、この解答がおかしいと塾は当然かみつきます。そうでなくても受験生の保護者から問い合わせを受けることになるでしょう。

 したがって明確にアである根拠が必要になるのです。

 この根拠を探せばいい。これは逆もありです。つまりイはこうだから違う、という根拠ですね。最終的にアである論拠がそろえばいいので、そういう視点でものを考えればいいことになります。

 うちの息子の場合、最後の2つまでは絞れても最後でよく間違えていました。

 これも感覚でやっていたからでしょう。感覚でやっていると、やはり紛らわしい選択肢にだまされやすいのです。出題者は著者ではありませんから、当然、ここにこう書いてあるということから、問題をつくっているわけで、その趣旨を見抜けば、答えは自然に決まってくるでしょう。

 (3)選択、知識型

 自分の言葉で書く問題はほとんどなく、選択肢と言葉の知識が出題される類型です。
 こういう学校はやはり受験者が多い、という傾向にあります。短期間で採点をしなければいけないのが入試です。当日発表の学校も増えました。したがって、採点はかなりのスピードで進行しますから、記号式が好まれるのでしょう。

 ただ記号式だけでは差がつかない可能性があるので、言葉の知識や文法を出すというところもあります。こういう学校の場合は、やはりその対策をしなければいけないでしょう。
 大体の学校はこの三つのどれかにあてはまります。

したがって、対策はこの類型にあてはまる問題演習を積み重ねていくということに尽きます。
 最初のうちは十分に文章が読めるということではありませんので、音読をしたり、語彙を教えたりしながら子どもたちが文章の内容を十分に理解する手助けをします。

 その上で問題を解いてもらい、答え合わせ→検討→清書と進みます。特に記述では解答の清書が重要になります。
模範解答を読んでいるだけでは、本当によく理解できたかどうかわかりませんが、書かせてみると割と頭に入っていくし、その答えが子どもたちの語彙につながっていきます。

 ただいっぺんにたくさんの問題をやれるわけではないので、ペースを決めて毎日1題とか、2日に1題のように確実に練習していくプログラムを用意してあげてください。


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学校によって違う算数試験の四つのパターン

 6年生の夏から学校別対策を始めるとして、では具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか。
 まず、子どもたちの今のレベルから考えて、得意な範囲はどれで不得意な範囲はどれかをまず調べます。もちろんその週たまたまできたという場合もあるでしょうが、やはりデータで見ると、得意、不得意はわりとはっきり出てきます。

 次に教科のバランスを考えます。
 基本的な優先順位は、

 算数>国語=理科の計算分野>理科と社会の知識

 です。

 そのうえで、次に第一志望の傾向を考えます。算数について私は大きく4つの型に分けます。

(1)完全記述型 
(2)記述難問型
(3)単答難問併用型
(4)単答基礎型

 それらの型にあわせてよく出る範囲がわかります。例えば(1)や(2)でよく出るのは規則性、数の性質、速さ、図形の4分野です。これと本人の得手不得手を比べてみて、不得意な分野からじっくり復習を始めるのです。

 このケースでは、単純に式で出るという問題は少なく、場合分けを考えたり、ある程度面倒な検証を含む場合があります。

 例えば、速さの問題で、川の下流から上流に向かっていた船が、荷物を途中で落とし、その後気がついて荷物を追いかけ、荷物をひろった後、また上流の目的地に向かう、などという問題が出題されます。最初の速さは船の速さー流れの速さ、次は船の速さ+流れの速さ、引き返すときは船の速さー流れの速さと2つの速さを場合にわけて考えなければならないので、面倒でしょう。

 しかし、この面倒な問題を解くというのは、
「ていねいさと分析力」
を持っているかどうかを吟味する上で、非常に有効な問題といえます。ただ、これらの問題はやはり、しっかり練習しなければできないわけで、ですから学校別の傾向に分けた対策が必要になるわけです。

 (3)や(4)の場合は、範囲は広くなりますが基本的な出題が多いのでいわゆる典型的な出題をしっかり理解することからはじめるとよいでしょう。ただし、多くの問題集で出ている問題から多少なりともひねりを加えた出題が増えてきました。
「あ、これやったことある」
と思うと、そこがスキになります。良く問題を読んでいれば他愛のないことなのですが、入試本番でそれだけていねいに問題に向きあえるか、は大きな差になっていきます。

 繰り返しになりますが、やはりていねいさというのは入試に合格する上で一番大きな要素ですから、練習を積み重ねて「ていねいに」問題が解けるようにしていきましょう。

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5年生2学期、テストの成績が下がったら

 5年1学期の成績はまずまずだったのが、2学期になったら成績が下がってきた。毎日毎日横で勉強を見ているのだが、成績は上がらず、子どもも私も疲れてしまって……というご相談をよく受けます。

 今も何とか塾のクラスは維持してはいるものの、それにかけるエネルギーは相当なもので、このまま続けられるか自信がない、でもクラスを落ちてしまえば志望校に合格できないのでは、という漠然とした不安を抱えられているようです。

 塾のクラスと合否で一番関係があるのは、6年生の2学期、つまり受験直前期ですが、この時期にはまだ力の差はあまりありません。

 ある集団が飛び出るほかは、固まっているといってもいいでしょう。

 成績を上げるためには、細かい知識も理科も国語の漢字もできなければいけませんが、その記憶の多くは入試まで持ちつづけることができないので、ここでそれほどエネルギーをかける必要があるかどうかという点は考えてみなければならないのです。

 5年1学期と2学期はかなり分量も難しさも違います。ある一定量を処理できた子どもたちも2学期に入るとアップアップするというのは、毎年のこと。ですからそこで振り分けられてしまって「志望校にいけないのでは?」と不安を感じられるお母さんも多いでしょう。

 ですが細かい知識は6年生の後半期でしっかり固めればいいのです。それより5年のうちは算数の基礎力をしっかりして、毎週1本か2本、国語の読解練習をして読解力を身につけていくことが必要でしょう。塾に行けば理科や社会の勉強をするでしょうから、細かい知識の暗記を何回も繰り返すのではなく、塾の勉強だけで試験を受けるでもいいでしょう。つまりこの段階でも何を優先すべきなのか、しっかり決めてやらないと時間はいくらあっても足りないのです。

 クラス分けが進む塾では、やはり漠然とした不安があるでしょう。上位のクラスにいれないのだから、志望校に入れない―本当にそうでしょうか? 山の登り方はいくらでもあります。私の塾はいっさいクラス分けがありませんが、上位の学校には入っていけます。
 大事なのは「その塾のやり方が自分のお子さんにあっているかどうか」です。合っていれば上位にいけるでしょう。合っていないのだから成績が伸びない、だとすればやり方を考えてあげなければいけません。それは保護者が考えないといけないのです。

 5年のうちはまだまだ余裕をもって勉強をしてほしいと思います。お母さんとお子さんが夜遅くまで歴史の暗記をするのはなぜでしょう? 塾のクラス分けテストのためだとすれば、それが志望校合格のために本当に必要なのか、考えなければいけないのです。

 歴史の暗記をするのは6年生でいいのです(繰り返しになりますが、ほとんどの子が忘れているからです)。その分5年で算数や国語の力を伸ばしたほうがよほどいい― そう考えると勉強の優先順位は変わるはずです。

 クラス分けで楽に上位に行ける子はそのままやればいいのです。そうでなかったら勉強の方法は考えなければなりません。ただ、どんなに先にいっても入試がだめなら不合格です。逆にその日が良ければそれでいいのです。もう少し幅広く考えてあげてください。


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