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第39回 倍率

■東京、神奈川の受験に関しては、まもなく出願が始まります。出願数は公開してもらえるので四谷大塚入試情報センターをはじめ、いろいろな塾のホームページでも確認できます。この倍率を見て、受験校を決める方がたまにいらっしゃいますが、あまり良い方法であるとは思えません。もちろん、いくつかの候補があって、その中から選ぶ決め手にされているのでしょうが、倍率の大小はそれほど影響があるわけではないのです。

■2月1日の学校でいえば、上位校はだいたい3倍前後で推移します。多少多かったり、少なかったりはしますが、この3倍という倍率はあまり変わりません。受験者は確実に多くなっているわけですが、うまく分散していくというのが現実です。2時間もかけて中学に通うということはあまり考えられませんから、通える範囲で絞られてくるのでしょう。

■今年の受験者数はまた史上最高を更新しそうですが、模擬試験の結果を見ると大きく動いて合格確実圏の偏差値が2ポイント上昇するか、しないかくらいです。ですから第一志望をしっかり狙うことが大事で、特に直前で第一志望を変更するのはあまり、良い選択とはいえません。

■これまで第一志望に向かって勉強してきているわけですから、過去問もしっかりやっているだろうし、入試傾向にも慣れています。ところが直前に志望校を変えてしまうとそれまでの勉強が無駄になる部分が多くなります。やはり傾向に慣れている子とそうでない子では同じ偏差値でも入試のできは異なってきます。

■ですから、この段階ではもはやジタバタしない。狙いを定めて、黙々と準備を進めていきましょう。これまでやってきた勉強をしっかり繰り返すことで、自信を深めることが大事です。あわてて受験校を変えて、過去問対策をしなおさなければならなくなると、本人のモチベーションも弱くなるし、あまりいいことはありません。

■よくお話するのですが、合格確実圏まで5ポイントくらい不足しているので、3ポイント下の学校を狙おうとしても、うまくはいきません。変更するのであれば10ポイント近く落とさないと安全ではないのです。なぜでしょうか?当然のことながら準備が不足するからです。これまでやってきた勉強を生かすという意味では、残り5ポイントを何とかしようと考えた方がいい結果は出るでしょう。

■ただし、滑り止めは違います。滑り止めは確実に合格することが使命ですから、中途半端に下げないことです。それに子供の場合は1校合格するだけで勢いがついてきます。1日から3日までの間に必ず一校は合格する、その戦略を確実に実行してください。きっと良い結果が出るだろうと思います。

(平成17年1月7日)

 

第38回 入試問題はこうしてできる

■入試問題はすでにできあがっている学校が多いと思います。多くの受験生が挑戦する学校では、外部に印刷を発注しますので、すでに納品されて保管庫に入ったものもあるでしょうし、校内以外の場所に保管されている場合もあります。

■ 各科、入試問題はメインとなる教員と問題を出す教員によって作られる場合が多いようです。一人の人が問題を作ると、どうしてもその人のクセが出てしまうので、多くの場合は複数の教員が問題をもちよって、メインとなる教員がアレンジし問題ができあがります。

■入試問題を作成するにあたって、だいたい平均点が50点前後になるような問題が目標です。というのも、あまり難しい問題を出すとみんなできなくて、差がつかないし、簡単な問題でも今度はできすぎて差がつかないからです。50点ぐらいが平均ですと、だいたい合格ラインが6割前後ということになりますから、これがいい入試問題です。発表されたデーターで見て、平均点が高い場合にはミスが出た子が不合格になるので、力のある子をとれない場合がでていると考えられます。

■入試問題を作成するにあたって、いくつかの狙いがあります。ひとつはこういうところは最低わかっていてほしいと思って出す問題。一般的には点取り問題と思われますが、しかし、基本がきちんとできていることが確認できます。また、理科や社会などでも知識をしっかり覚えているということは大事な要素で、特に受験校はこれを確認する傾向が強いと思います。

■ある程度基礎学力があるということがわかった段階で、次に考えるのが思考力、応用力、表現力という部分です。算数の入試問題が4題程度の学校は、だいたいこの思考力を試すことに時間を割きます。基礎力は応用問題を解く段階で試されているから敢えて問う必要はないと考えています。

■同様に、国語で記述問題を出題するところは、その表現力を検査します。自分で考えられるだけではだめで、それをいかに表現する力をもっているかということを試します。また物語文の読解に力をいれる学校は、どちらかといえば「人の気持ちがわかる子」であるかということを主眼に問題を設定する場合が多く、面接の代わりにしていることもあるようです。

■理科の実験問題、社会の資料問題も、その意味では大事な観点をもっています。実験や資料から何を読み取るのか、もちろん、解答は1つではないかもしれません。しかし、その過程を書いてもらうことによって考え方の過程や表現力なども試されるのです。

■過去問を勉強するのは、その狙いを体得することが重要だからです。学校の狙いがわかれば、当然、それに対する対策も必要です。例えば記述問題についていえば、美文、麗文を求めているわけではありません。シンプルに言いたいことが伝わればいいのです。ですから一文は短くする。そういう工夫が出てきて、力が備わるのです。残りわずかの時間ですが、しっかり過去問の学習をしてみてください。

(平成16年12月30日)

第37回 高校受験と中学受験の違い

■ある高校受験生の保護者の方から相談を受けて、改めて中学受験と高校受験の違いを感じてしまいました。その受験生は公立高校が第一志望、私立が第二志望です。ところが第一志望の公立高校には内申で4ポイント足りません。したがって当日の試験ではそうとういい点数をとってもなかなか厳しいところです。

■ そこで担当の学校の先生は第二志望の私立の単願推薦をとったらどうだろうかと薦められたそうです。その第二志望は単願推薦なら今の内申でも通るが、しかし併願にするのであれば多分受けても合格しないだろうということだったのです。保護者の方としてはここまで、がんばってきたのだから、公立高校は受けてもらいたいと思いますが、一方でもし、だめだったら第二志望は受けても入らない、その段階で入れるのはもっと低い私立になり、そこは本人が絶対に行きたくないので、どうしたらいいだろうかというご相談でした。

■この場合は、第二志望の単願推薦をお勧めしました。保護者の方としても理解はされたのですが、「先生、公立を目標にがんばってきたのに、受けずに終わるのは何とも、残念で仕方がないのですが。」という話をされてお帰りになりました。まさに、その通りだと思いますが、高校受験の場合は、仕方がないといわなければならないでしょう。

■中学受験は、もし全部落ちても、義務教育期間内ですから公立中学という受け皿があります。ところが高校受験の場合は、そういう受け皿はありませんから、確実にまず合格することを考えます。私立、公立ともその意味では早くから来る生徒を確保したいので、明確に合格の目安を出します。それが内申であり、テストの目標点数なのです。ただテストの場合は、テストにならないとわかりません。内申は2学期で確定しますから、これは明確な数字としてわかります。

■したがって私立は早くから単願推薦をとります。内申が基準内申を突破していればそれで合格を確約します。その代わり受験生は他の学校を受けることはできません。その結果、実はこの冬期講習前に合格が確定した生徒は、結構たくさんいるのです。これは全員を確実に高校に入れたい中学側と早めに定員を確保したい高校のニーズが一致したシステムで、以前は業者テストの偏差値で決まっていたのが、近年は内申で決めているのです。

■一方、中学受験にはこんなシステムはありません。したがって、一部推薦入試を除いてどの子も入試を受けます。だから自由な競争ですし、受けたいと思えばどの学校でも受けられます。しかし、当然、難しい学校ばかりを受ければ全部落ちることもあるわけで、その分、受験校選びは慎重になります。ただ、高校受験のように試験が受けられないということはあまり、ないのではないでしょうか。第一志望はほぼ全員が受けているのではないかと思うのです。

■高校受験と中学受験の違いは、こんなところにもあるのです。私は、現状の高校受験の仕組みを特に悪いとは思いません。ご相談いただいた生徒は第二志望に単願推薦を経て合格することができるのですから、入試の結果として行きたくない私立に行くよりは、第二志望の学校に入学できるのは良いことです。そのリスクを回避する代わり、第一志望の公立を受けられないというのは仕方がないことでしょう。この仕方がない、が高校受験の場合は多いのです。

■この前、高校受験塾の経営者の方とお話したとき、「教える側からすると、高校受験は張り合いがないんです。さあ最後の追い込みだと思っていると、横からさらっと推薦で決まってしまう。その意味では先生、中学受験はいいですね。」確かに、最後まで指導できる中学受験はその点、恵まれているかもしれません。その分これから2ヶ月は、教える側にもプレッシャーが出てくるのですが。

(平成16年12月23日)