失敗に学ぶ中学受験」カテゴリーアーカイブ

算数の頻出問題

 過去の入試問題で見てみると、算数の頻出範囲は以下の8分野になります。

(1)比と割合
(2)数の性質
(3)規則性
(4)平面図形
(5)立体図形(容積と体積)
(6)速さ
(7)場合の数
(8)表とグラフ

 最後の「表とグラフ」は速さや平面図形、立体と容積と重複します。あえて別枠で捉えたのはこの形式の出題が大変多いということです。
 例えば差集め算、つるかめ算などの特殊算は比と割合に含まれますが、一行問題や基本問題として単独で使われることはあっても、標準問題では速さなどの問題であわせて出題されることのほうが多くなっています。
 ただ、この8分野は全体として頻出するという意味であって、個々の学校の出題に限ってみるともっとしぼられてくる可能性が高くなります。

 例えば男子受験校ですと基本問題は問わず、応用問題だけを4題出題する学校(開成、筑駒、駒東、武蔵など)が増えてきています。以前、聖光が計算問題の出題の取り止めを表明しましたが、開成や麻布などの難関校では、やさしい問題を出しても差はつきません。したがってそれなりの難度の問題になるわけです。

その4題とは、
(1)規則性
(2)速さ
(3)図形(平面、立体)
(4)場合の数
というような構成になります。

 もちろんある程度の基礎が必要ですが、こういう学校を志望する場合は基本問題の反復だけでは対応できません。むしろ入試に良く出る練習問題をじっくり考えることが必要な学習になります。

 よくお話しすることですが、基本問題ができて、応用問題ができない場合、基本問題にもどるのは間違いです。

 基本問題と応用問題は構造が違います。基本問題は部品でいえば1パーツにすぎません。応用問題はそれが三つ、四つ連なって論理を構成していますから、その構造を分解、分析できないといけないのです。それは基本問題の反復をしたところで力はつきません。その構造を分析する力は難しい問題を良く考え、あるいは解答を読み直しながら納得していく過程を経て身につくものなのです。

 この勉強には時間がかかり、たくさんの問題を解くことは難しいので、良問を解きたいところです。だから第一志望の過去問がよいのです。第一志望の過去問は、子どもたちのモチベーションも高く維持できますし、実際に入試で解けなければいけない問題が並んでいますからじっくり考えることで力をつけることができるでしょう。
 もちろん基本から応用まで出題する学校(慶応中等部、青山学院、頌栄、共立、東洋英和など)でもこの作戦は有効です。ただ、こちらの出題傾向の学校では比重をかける分野は違ってきます。

 第一志望が、基本問題から応用問題まで幅広く出題する学校の場合、合否はやはりミスで決まります。

 すなわちみんなができない問題では差がつかないが、みんなができる問題をミスすると差をつけられてしまうのです。
 したがって、基本的な問題を確実に得点する力が求められます。いわゆる頻出パターンの反復練習と、計算力に磨きをかけなければならないのです。この力がしっかりしていなければ、前半部分の基本的な出題で得点が伸びなくなります。

 したがってこの出題傾向の場合は、まずその基本をしっかり練習することです。これは勉強としてはあまり楽しいものではないかもしれません。子どもたちに出題傾向をしっかり見せて、「これができなければいけないんだ」ということを認識してもらうことが大事なのです。

 そのうえで、応用問題の対応を考えることになります。十分に基礎力ができていないうちは、あまり難しい問題に手を出さないというやり方が良いでしょう。これは先に説明した応用問題ばかりを出す学校の勉強法とはまったく異なります。しかし、入試は合格するために受けるのです。例えばお母さんが税理士試験のような資格試験を受験しようとすれば、まずどんな問題が出るのか、気になると思います。そしてその問題を見て、こういう問題ができるようになるにはどうすればいいか、ということを考えられるでしょう。

 出題傾向は、その学校がほしいと思っている生徒像を反映しています。それにあわせて戦略を考える、このことが中学入試でも当然求められているのです。ただ、それを子どもたちが一人で考えられるかといえば、そうではありません。だからお父さん、お母さんや塾がいろいろ考えるべきなのです。

 ぜひ、お母さんも一度志望校の問題を実際に解いてみてください。解ける、解けないは問題ではありません。何が出ているのか、それに合格するためにどうすればいいのか、塾や子どもたちと相談しながら、効率の良い学習方法を考えていただきたいと思います。

==============================================================
田中貴の映像教材一覧  http://tanakatakashi.com/knowhow
==============================================================
12月から田中貴.com通信を発刊します。登録は以下のページからお願いします。無料です。
田中貴.com通信ページ
==============================================================
中学受験、これで成功する!母と子の合格手帳(講談社)
==============================================================

社会は学校ごとに特色が

 社会は確かに暗記科目で、知識を覚えれば得点できる問題は多くなっています。

 しかしながら、受ける学校によってはまったく違うパターンの問題を出題している場合がありますので、社会も十分に下調べをしておく必要は当然あるのです。
 特に最近増加傾向にあるのは、資料を読んでその設問に答えるというものです。歴史の説明資料は知識を持っている場合があるので、比較的わかりやすいと思いますが、時事問題や現代社会についての資料となると、通りいっぺん、知識を覚えたからといって資料を理解できるわけではないし、また記述で答えるとなればそれなりの対策をしておかなければならないのです。

 特に男子受験校の上位は、単に知識を問う問題を出題しても子どもたちの間に差がつかないので、自分の意見を述べさせたり、歴史事実を説明させたりしています。どの学校を受験するかによって社会の対策も早く始めなければいけない場合もありえるのです。

 算数>国語=理科の計算問題>理科、社会の知識という優先順位をお話ししました。全体としてはその通りですが、受験する学校によっては社会の対策も優先しなければならない場合がありますから、注意が必要です。

 その意味でも、少なくとも第一志望を夏前に決めておくとその後の戦略を立てることが可能になってくるでしょう。

==============================================================
田中貴の映像教材一覧  http://tanakatakashi.com/knowhow
==============================================================
12月から田中貴.com通信を発刊します。登録は以下のページからお願いします。無料です。
田中貴.com通信ページ
==============================================================

理科重要問題ノート
理科重要問題ノートサンプル
==============================================================

理科は知識と計算

 理科は大きく分けて二つの出題分野があります。ひとつは知識分野、もうひとつが計算分野です。
 生物、人体、地学、天体の一部が知識分野、水溶液、力、電気、天体の一部が計算分野です。
 入試傾向で見ると、知識分野がどのくらいのウェイトを占めるのか、計算分野のレベルがどのくらいなのかがひとつの水準になります。

 理科の問題レベルでいえば、知識分野が多く計算分野のレベルがやさしければ「やさしめ」ということができるでしょう。逆に計算分野のレベルが高かったり、記述問題や実験問題が多く出題される場合は難しいと判断できるのです。

 知識はある程度覚えれば解決します。実際に入学試験に出題される知識というのはしぼられており、出題範囲すべてを100とすれば30程度が出題の70%を占めるというデータがあります。つまり入試によく出る知識はある程度決まっているのです。徳川三代将軍の名前は聞かれても、四代将軍は聞かれることがまずありません。ということは逆にこの良く出る30がしっかり理解できていれば7割得点することができるのです。7割というラインはどの学校でも合格ラインを超えますから、知識分野についてはこの30をしっかり覚えるということが重要な対策になります。

 多くの塾でもあるいは学習参考書でもこの30%を特定することに力を入れていますので、知識をまとめているテキストを1冊に絞って集中的に学習することが重要です。ただ、あまり早く始めても忘れてしまうことが多いので、この勉強は秋以降に集中させることが効率的といえるでしょう。

 一方、計算問題については、男子受験校で難しい問題を出題する場合が多く、女子中堅校では出題してもあまり差がつかない(よくできない)ということで出題が見送られます。したがって過去10年の問題をしっかりと調べてみることが重要です。例えば電気や水溶液の計算問題であまり難しい問題が出ていないとすれば、そこに力を入れる必要はあまりないでしょう。

 逆に確実に出題される学校を受験する場合、前半に先の4分野を集中して学習することが重要になります。ただし、これらの範囲は、算数に比べて出題がパターン化されています。
 例えば中和の問題は、誤解を恐れずにいえば、水酸化ナトリウム水溶液と塩酸の中和に関する問題がほぼ全部です。この場合、水酸化ナトリウム水溶液を固定して塩酸を入れていくのか、逆に塩酸を固定して水酸化ナトリウム水溶液を入れていくのかの2つのパターンに絞られますから、それを集中して学習していけばいいことになります。

 理科の指導をする先生は、大方この出題傾向は熟知されていますから、もし志望校が決まって過去の出題傾向を調べてみたけれど、具体的によくわからなければ相談してみることをお勧めします。

以上を総合して、
(1)知識中心型(簡単な計算問題を含む)
(2)計算、実験、記述型
のどちらであるかを学校別に見てみると、圧倒的に(1)の類型が多いのです。(1)の場合、いたずらに難しい計算問題に時間をかけるよりは前半に、算数や国語に十分時間を使い、秋以降知識と計算関連のパターン問題をしっかりマスターすることで十分でしょう。
 特に電気、力は不得意な子どもたちが多く、それがために理科を嫌いになるケースが多いので、与える問題のレベルには十分気をつけてください。


「映像教材、これでわかる数の問題」(田中貴)

12月から田中貴.com通信を発刊します。登録は以下のページからお願いします。無料です。

田中貴.com通信ページ


6年算数頻出問題精選ノート(田中貴)
6年算数頻出問題精選ノート(田中貴)サンプル