やる気が出ない子

「この子、やる気がないんです。」

ご相談をいただくとき、保護者のみなさんがよく口にされる言葉です。

確かに、家で机に向かわない。言われてもなかなか始めない。始めてもすぐに手が止まる。そういう姿を見ていると、「この子は受験生なのに、どうしてこんなにやる気が出ないのだろう」と心配になるでしょう。

しかし、実際には「やる気がない」とひとことで片づけてしまわない方がいいのです。

子どもたちが動かないのには、それなりの理由があります。

まず多いのは、何をやればいいのかがはっきりしていない場合です。
あれもやらなければいけない、これも終わっていない、と課題ばかりが積み上がっていると、子どもはかえって動けなくなります。大人でも、仕事が山積みになるとどこから手をつければいいかわからなくなることがあるでしょう。それと同じです。

次に、やってもできない、と思い込んでいる場合があります。
前にやった問題ができなかった。テストで点が取れなかった。注意ばかりされてきた。そうすると、子どもの中に「どうせやっても無理だ」という気持ちが生まれやすい。すると、最初から手を出さなくなるのです。

さらに、疲れている場合も少なくありません。

塾に通い、学校に行き、宿題をやり、テストを受ける。今の子どもたちは案外忙しい。大人から見ると「まだできるはず」と思えても、本人の中ではもう余力が残っていないこともあります。そういうときに「やる気を出しなさい」と言っても、なかなか解決しません。

だから、まず必要なのは「やる気がない」と決めつけることではなく、何が止めているのかを見ることです。

何をやればいいのかわからないのなら、やることを絞る。
難しすぎて止まっているのなら、できるところまで戻る。
疲れているのなら、少し負担を整理する。

こういう手当てをしていくと、子どもは少しずつ動き始めます。

やる気というのは、最初から満ちあふれているものではありません。
むしろ、できることが増えたり、見通しが立ったり、やれば進むと感じられたりする中で、後からついてくることの方が多いのです。

ですから、最初に必要なのは気合いではありません。

「今日はこれだけやればいい」
「この1問を一緒に考えてみよう」
「ここまではできているね」

そうやって、動ける形をつくってあげることの方が大事です。

特に中学受験では、子どもがずっと高い意欲を保ち続ける、ということはまずありません。波はあります。ある日はよく進むし、ある日は全然進まない。それが普通です。

だから、やる気の波を責めるより、波があっても進める仕組みをつくることです。

毎日同じ時間に机に向かう。
量を欲張らず、終わる量にする。
できたことをきちんと確認する。

こういう積み重ねの方が、叱って無理にやらせるより、結局は長続きします。

「やる気が出ない子」なのではなく、まだ動き出せる条件が整っていないだけかもしれません。

子どもを見ていると、つい気持ちの問題にしたくなるのですが、実際には環境や課題の出し方で変わることは多いのです。

受験勉強は長い道のりです。
いつも前向きでいられる子ばかりではありません。

だからこそ、やる気を求めすぎない。
その代わり、動きやすくする。
そして、少しでも進めたら、それを確かめる。

そうやって進んでいけばいいのです。