第27回 重要な1,2年生時の準備

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 最近は塾に通う年令がだんだん早くなってきました。1年生や2年生から塾に通い始める子供たちも決して少なくはありません。しかし、本当は塾に通うよりも大事なことがあります。それは自学自習の習慣をつけるということです。塾に通うことが、このきっかけになるのであれば、それはそれで大変効果があるでしょう。しかし最近の保護者のみなさんの話を聞いていると、「塾に出しておけば大丈夫」という考えがあるようです。それは決して正しくはありません。

 低学年のときに最も大事なことは、四則計算の練習や漢字の練習などを地道に繰り返すことなのです。ただ、子どもたちはまだ幼い分、指導者がほめてあげさえすれば、この地道な練習にも積極的に取り組んでくれます。ただ、最近の小学校ではあまりこの地道な作業を繰り返すことをしなくなりました。

 陰山先生の百ます計算は、大変優れたメソッドです。まず、子どもたちの基礎力をしっかり身に付けるために、1枚の表を埋めるという作業をすることで、繰り返し計算の練習をさせていることです。ただ、これも指導者が子供たちのモチベーションを十分に引き出し、かつ家庭でも繰り返し練習するということができなければいけないのです。

 家でもしっかり自分で勉強する習慣をつければ、そんなに早く塾に行かなくても中学受験の準備をスタートさせることができます。逆にそれができなければどんなに早くに塾に行かせても、結果として成功する確率は低くなるでしょう。

 ところが、1年生や2年生のときは、「まず遊べ」という議論が何となく優先されているように思うのです。これは間違い。むしろ1年生や2年生のときから、少なくとも1時間、家で勉強することが当たり前であるという習慣を作る必要があるのです。もちろん遊んではいけないという話ではありません。子どもたちはこの頃、遊びを通して、人との付き合い方やコミュニケーションの方法を学びます。したがって友だちと外遊びをする時間はとても大切なことです。ただ、最近は私達が子どものころと違って、外遊びをする空間が少なくなってきました。私が子どものころは、空き地もありましたし、ちょっと冒険に行こうとすれば、小さな森もありましたが、今の子どもたちにはそんな場所は与えられていません。したがって、だんだん引きこもりがちになり、子どもたちがテレビやゲームで内遊びをするようになってきているのです。これはあまり良い傾向ではないというので、文部科学省も子供たちの放課後の居場所を学校に置いて、小学校のグラウンドやその他の施設を使ってみんなで遊ぶことを奨励しています。これはこれでよいことだと思いますが、ただこの時間は徹底的に遊んでいるので、勉強するということはあまりありません。最近は学童保育も学校で一体となって行う自治体が増えてきましたので、そうなると放課後はすーっと遊んでいることになります。お母さんが帰ってくるころにはもうへとへとになっていて、勉強どころではない。宿題をあわててやらせて、今日一日がおしまい。ということになってしまっているケースが少なくないのです。

 しかしこれでは子どもに本来備わるべき基礎の力がつかないのです。先日あるお母さんから相談のメールをもらったのですが、やはり低学年のころ、漢字の練習をあまりしなかった。したがって今になって、不十分なところがいっぱい出てきている。しかし4、5年生になると、そういう反復練習はあまりやりたがらない。だから、なかなか漢字が書けないという相談でした。こういう場合、仕方がないので、何らかのモチベーションを持ってもらって漢字の練習をするしかありません。私は家族揃って漢字検定をお薦めしました。これはこれで家族で競い合うこともできるし、子どもが楽しく漢字の練習をするという意味ではひとつの方法ですが、実際には1年生や2年生で反復練習をする機会を使った方がよいのです。

 この頃の子どもたちは「できる」ということに対して大変敏感です。同じ漢字を20回書くということを課したとしても、20回書こうと思えば、誰でも書けるわけですから、みんながんばります。その結果をとにかくほめる、「よくやった、すごいねえ」と言ってあげることで、さらにやる気が増してくるのです。この機会を逃す手はありません。例えば1年生の漢字なんかは半年ぐらいまでで覚えられる子がいるでしょう。こういう子どもたちの意欲は、カリキュラムなんかで押しとどめる必要など何もないのです。どんどん難しい漢字を練習してもらってかまわない。漢字検定に挑戦するのも楽しい経験になるでしょう。

 中学受験で、入れたい学校に入れるためには、まず自分で勉強できるという習慣をつけていかなければなりません。そのためには基礎的な学力を低学年のうちにしっかりつけておくことが必要なのです。これがしっかりできていれば、早くから塾に行く必要はありません。逆にこのことが出来ていないと、塾に行っても基礎がしっかりしていないために、勉強が遅れがちになったり、子どもが自信を失ってしまうケースがあるのです。

 働いているお母さん達にとっては、確かに大変なことではありますが、30分でもいいですから、子どもといっしょに勉強する時間を作ってあげてください。

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