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第11回 進学塾の変化

■今から10年くらい前まで、中学受験を取り扱う塾はあまり多くありませんでした。したがって、割と遠くから中学受験塾に通ってきてくれていました。私のクラスにしても、1クラス4~50人は当たり前。クラスによっては100人などということもありました。

■しかし、最近は1クラス多くて25名程度。電車で通うこともまずなくなりました。その分、子どもたちへの目が行き届くようになった一方で、クラスが細分化されたため、たくさんの先生が必要になります。クラスをたくさん作らなければならない塾では、先生たちのクラス分けもおこります。できる子どもたちのクラスをベテランの先生が教えるシフトが一般的になりました。

■そうなると中堅層では、良い指導が受けられないという不満が出てきます。当然、塾としては良い先生を出しているといいますが、トップの先生が中堅のクラスに現れることはまずありません。上位のクラスのお母さんたちがだまっていないからです。実績をあげていく塾がぶつかるのはこのジレンマです。生徒が増えれば、クラスを増やさなければならないが、良い先生を十分に回すことができなければ、生徒は塾を離れてしまいます。ですからこれらの塾は成績でクラス分けをするのです。良い先生の指導が受けたければ成績を上げてくださいといっているとは思えませんが、でもそう言われているようなものかもしれません。それでも合格実績が出ているうちは上位の生徒はやめませんから、ある程度の規模は維持できます。しかしそんなに実績のある先生はすぐ育つわけはないのです。6年生の面倒が十分見れるようになるまで少なくとも5~6年はかかります。

■このジレンマを解決する方法がひとつあります。最初から定員を決めて、自分たちが十分できる人員以上に生徒を取らないという方法です。多分、それを実践しようとする経営者はいないでしょう。ところが、最近、そういう塾ができつつあります。というか、自然にそうなったというべきでしょうか。地元の塾は、それほど生徒がたくさんいるわけではないので、ベテランの先生たちが自分のできる範囲の中でしっかり指導をしているのです。

■ところが、これらの塾は大手ではぜったいありませんから、宣伝もしていないし、なかなか探し出すことが出来ないかもしれません。あるいは知ったとしても、大手のように情報がもらえないのでは?という不安があって、入塾を躊躇されることが多いのではないでしょうか。ただ、自分のできることをきちんと守るというやり方はこれから塾が持っていなければならない感覚ではないかなと思うのです。

■そういう地元塾の中には、生徒が空き待ちをしているところもあるそうです。行きたいのに行けないというのは確かに残念ではありますが、しかし、しっかり面倒を見てもらえる、あるいは先生を信頼できるというのは、そういうところから始まるのではないかと思うのです。

■集合指導、個別指導、いろいろな仕組みが生まれ、インターネットで説明を聞くシステムも出てきました。しかし、やはり小学生のうちは、良い先生につけるというのが良い方法ではないかと思います。その意味で、新しい塾の流れがまた始まるかもしれません。

(平成16年10月2日)

第10回 第二次反抗期がなくなった?

■2004年8月8日の朝日新聞の記事にベネッセ未来教育センターの中学生意識調査の結果が出ていました。調査は今年2月に実施されたもので、中学1年生から3年生合計1355人より回答を得ています。

■家にいるときの気分について「のびのびできる」にあてはまるのは84%、「安心できる」にあてはまるのが81%。親との会話については父親とよく話をする27%、母親とよく話すは55%。中でも母親とよく話をするは女子生徒は72%。また親について「一生懸命働いている」72% 「家事をがんばっている」61%と答えています。親との関係の評価で見ても、父親については「とてもうまくいっている」20.8% 「かなりうまくいっている」18.5% 「ややうまくいっている」38.4%で合計77.7%。母親にいたってはこの3つの合計が87.4%に達しています。これらの結果から、朝日の記事はこうコメントしています。「一般的に中学生は第二次反抗期の難しい年頃とされている。同時に親から自立していく過渡期ともとらえられる。今回の調査結果からは、そうした反抗期にある中学生像が浮かんでこない。」

■私はこの結果について当然と思います。今は昔に比べて少子化ですから、親が子どもの様子に比較的目が届いています。最近は子どものいやな事件が増えましたから、これまで以上に子どものことに関して関心があるといえるでしょう。一方で関心が高くなっている分、子どもたちの不満は、解消されている部分があります。

■だから、子どもたちが親に依存する傾向は高く、精神年齢で言えば一段と幼くなったといえるでしょう。ベネッセのコメントでもこれが小学生高学年であれば何の問題もないとあります。ただ、中には年齢に見合った精神年齢の子どももいますから、同じ学年にもかかわらず、精神年齢のばらつきが生じることになります。

■だから普通の生徒であったとしても、そのアンバランスの中でとんでもないことを起こす可能性があります。体の成長と精神の成長が一致しないので、現実してはいけないことと、空想の世界との区別がつかなくなったりするのです。一方でいつまでたっても親が子どもとの関係を変えないと、その幼さが続いてしまいます。

■第二次反抗期は、子どもに自分でやっていく自信がついて、そのことで親に「ああしろ」「こうしろ」といわれたくなくなって反抗する時期です。ですからこの調査結果でも「あまり干渉しないでほしい」という生徒は半数を超えます。第二次反抗期がなくなったのではなく、個々によって時期がばらばらになってきたということでしょう。

■ただ、いつ子どもを大人扱いしていくのかということについては、ある意味難しさが出てきたと思います。なるべく早めにという意識はあったとしても、子どもの管理をやめていいというわけではありません。その意味で、より多くのコミュニケーションが必要であり、また厳しさも必要になってくるわけです。近年、親が子どもに対して厳しい態度で臨むということが少なくなった部分もあり、今回の結果は、その点を再度検討してみる必要があるということを教えてくれていると思います。

(平成16年9月25日)

第9回 通信制高校

■今、全国に通信制高校は140校あるそうです。そしてまだ毎年増えているのですが、このニーズの広がりは不登校の生徒が多いからです。基本的に通新制高校はレポートと年間決まったスクーリングを受けることで高校卒業資格をとる仕組みです。高校はもちろん学校法人として認可されています。

■以前は通信制高校のフォローをする目的でサポート校という塾に入るのが一般的でした。塾に通いながら、レポートの指導をしてもらうのが主な目的ですが、それ以外の能力を身につけるコース(音楽や芸術、パソコンなど)も併設されていました。ですから、高校卒業資格を通信制でとって、あとの時間を大学受験に費やすという仕組みも可能なのです。

■しかし最近は通信制高校自体が規定数以上の通学指導をする場合が増えているそうです。生徒は、来ても、来なくても規定のスクーリング数に達していればよく、その意味では自由な通学が可能になるので、中学でつらい思いをしてきた子どもたちにとってはひとつの救いになっているようです。

■昔は、学校に行かないということは悪いことでした。しかし、学校が荒れ始めて以降、学校にいくことを怖がる普通の生徒が出てきたのです。いじめが多くの原因ですが、先生と合わないというのもよくあります。子どもは成長過程ですから、まだ完全ではありません。自分でコントロールする力が不足していれば、マイナスの気持ちがどんどん広がります。

■そんなときは、学校を変えるのが大事なのです。つらいことを我慢させなければいけないというのは昔の発想。環境を変えてあげることで、解決する問題はたくさんあります。先日も塾の先生と合わず、他の生徒にいじめられるというご相談がありました。私はさっさと塾を変えてしまった方がいいとお話しましたが、実際系列塾に変わられて良かったそうです。

■今、受験を迎えているご家族の中には、私立中学しか見えていらっしゃないと思いますが、世の中には実にたくさんの選択肢があります。もちろん世界にまで目を広げれば、いろいろな場があって、そこで子どもたちの可能性はまた、一段と広がるのです。

■通信制高校は、これからもいろいろな可能性を追求してくるでしょう。インターネットを使った学習もそうですし、生徒の可能性を伸ばすために、芸能や映像などのコースも増えてくると思います。まずは生徒が楽しい、おもしろい、好きだということを見つけて、そこからいろいろな可能性を探るのが大事です。通信制高校は新しい学校が多い分、新しい試みをしてくれるのではないかと期待しています。

(平成16年9月18日)