■先日、東洋経済の取材を受けて、いろいろお話をしました。その中で、今後、受験はどうなっていくのだろうか? 塾はどうなっていくのだろかというお尋ねを受けて、お話はしたのですが、そのあと、私なりに再考してみたことを書いてみたいと思います。
■少子化が進み、明らかに受験戦争は往時ほど厳しくはなくなりました。しかし、完全になくなるのかといえば、やはりなくなりはしないだろうとは思うのです。日本が移民を受け入れず、労働的には閉鎖社会である以上、学歴を中心としたヒエラルキー(階層社会)は、まだ存在し、親としてはなるべく高いところに子供たちをいれてあげようとする気持ちになるからこそ、これだけ塾ははやっているのでしょう。
■しかし一方で、国際化した社会の中では、学歴や試験の力だけでは活躍できないことははっきりしました。そういう意味では人物を育て上げなければならないのですが、それが今、公立にないといって、では私立にはあるのか?という疑問が出てきます。
■よく思うのが、受験校の入試説明会を聞きに行くと、必ず合格実績の話になります。何々大学に何名というのは、塾と同じですが、そういう子供たちがどのようにして、それを志望したのかを説明してくれるところは一校もありません。カリキュラムやテストのシステムについての説明はあっても、どうして志望を決めたのか、その学校ならではの環境の中で何が決め手になったのか、そんな話は誰もしてくれないのです。
■子供たちは、これから自分の好きなこと、やりたいことを伸ばしていかなければなりません。その意味で、自分が何が好きか、何をやりたいのかを知ることが中高時代は大切なのですが、それを考えさせてくれる(自分で考えなければならないのですが)環境はどこにあるのだろうかとふと思うのです。多くの受験校が成績をあげることばかりを重視し、その動機付けにあまり力が入っていないとすれば、これは本末転倒な話です。
■逆に受験勉強にとらわれず、子供たちの好きなこと、得意なことをまっすぐ伸ばしてあげられる塾があったら、次の流れはこちらなのかもしれないとふと思うのですが。
(平成14年8月5日)