■日能研によると、本年の中学受験生は53000人、受験率は18%という集計になったようです。今年は都立一貫校の募集が増えたとはいえ、しかしこの人数はすごいなと思います。 私は中学受験の限界は20%だと思っているのですが、意外にあっさり超えるのかなという気もします。
■一方で少子化はずっと続いているので分子が増えて、分母が減れば受験率は跳ね上がる傾向にあるのです。受験生数がすでに定員を上回って、かつ上位志向が強い中学受験は、どうしても競争率が上がります。その分厳しい受験になってくるでしょう。これは来年も同じ傾向でしょう。
■中学受験が厳しくなると、小学生なので、さまざまな弊害が生まれてきます。例えば小学生にはまだ価値観は明確にはできあがっていません。しかし受験の世界に入れば、偏差値の高い学校=良い学校と思われがちです。でも偏差値が高くても悪い学校があります。学習につまずくと、高校進学段階で簡単に放校してしまうところもあるのです。
■学校というのは偏差値が高い低いよりも、その子を本当に伸ばしてくれるかということで評価されるべきなのです。別に大学受験がゴールではないですが、ひとつの例として考えると、中学受験で御三家に合格して大学受験に失敗する例は山ほどあります。一方で滑り止めに行って、ていねいに育ててもらい成功した子どもたちもたくさんいるのです。
■ところが小学生はそんなことはわかりません。だからその偏差値表を鵜呑みにするし、自分の志望校が下の学校だと「恥ずかしくていえない」ということになってしまうのです。また偏差値が高い、成績が良いと鼻高々になってしまう親子がいるものですが、そういう子ほどいろいろなところで勘違いをして楽しい人生にはならないものです。今の世の中は複雑系ですからいろいろな価値観が存在します。しかし受験の世界は単なる4教科の試験だけで評価を出します。そんなことはたいした問題ではないにも関わらず、絶対的な価値のように思えてしまう、だから間違う人が多いのです。
■これから受験されるみなさんは、まずその点を十分に認識していただきたいと思います。中学入試は単なる4教科の試験に過ぎず、しかも12歳の子がやることです。人生を決めるなんてこともないし、学校はいくらでもあるのです。むしろどこへいっても、その学校をベストにすればいい。むしろ大事なのは受験する過程でしっかり自分で勉強する過程を身につけ、自分の力を伸ばせる能力ができればいいのです。だって「合格して失敗する子」はそれができていないのですから。
(田中 貴)
(2006年2月25日)