第44回 父親の役割

Pocket
LINEで送る

■中学受験の場合、お母さんが子どもの面倒をみておられる家庭がほとんどです。小学6年生の父親というのは、やはり仕事が忙しく、なかなか子どもたちの面倒を見られないという方が多いのではないでしょうか。

■最近は、お父さんが算数や理科を教えているご家庭もあるようですが、お父さんには非常に大切な役割があります。それは子どもの教育を長期的な視野でみるという役割です。お母さんは毎日、子どもたちの世話をしているので、子どもとの距離が近いですから、どうしても近視眼的な見方になります。毎日の勉強や行儀などが目につきますから、つい小言も多くなりますし、今やっていることの結果を求める傾向が強くなります。

■ところが、子どもというのはかなり長い時間をかけて成長します。その成長のスピードにも個人差があり、早熟の子もいれば、晩生の子もいます。中学受験の場合、締め切りが6年生の1月、2月ですから、それに間に合うくらいの精神的な成長をしてくれていれば、親は楽です。しかし、最近の子どもたちは過保護の元で育っていますので、どうしても精神的な成長が遅くなる傾向があり、したがってこの締め切りに間に合わない可能性もあるのです。

■最近の子どもたちは、いろいろなことを人にやってもらう機会が多くなりました。したがって自分でやりきる経験が少なくなり、精神的な成長が遅く、幼い子になりやすいのです。こういう子は成長するまでに時間がかかりますから、長期的な視野をもっていないと、良い方向に導いてあげることができません。

■ところが、直前の時期はお母さんもお父さんも「何とか、合格してほしい」と思うあまり、二人で短期的視野にたって「がりがり」やってしまいがちです。こういうとき、子どもが積極的な気持ちでいてくれればまだ救いがあるのですが、本人が晩生であれば、子どもの成長に良い影響を与えません。

■日ごろ、子どもたちの面倒をみてやれないお父さんも、お母さんに対するブレーキの役割はもてます。お母さんが困っていたら、ぜひ、お父さんがお母さんや子どもたちを良い方向にもっていってあげてほしいのです。子どもの成長過程は長いのです。これから勉強すること、これから経験することがたくさんあって、それで一回りも二回りも大きくなっていくのです。

■お父さんは、忙しくてよいのです。早く帰ってきて、子どもの算数を見てあげなくてもかまいせん。でも帰ってきたら、お母さんの愚痴は聞いてあげてほしいのです。それが子どもたちに対する最大の貢献かもしれません。

(平成14年12月14日)

Pocket
LINEで送る