人のことは気にしない

入試は、確かに合格者数が決まっています。ですから、広い意味では同じ学校を受ける受験生との競争です。しかし、だからといって、具体的な誰かと勝負をしているわけではありません。

たとえばテニスの試合であれば、目の前に相手がいます。その相手に勝つことが、そのまま試合に勝つことになります。しかし入試は、そういう一対一の勝負ではありません。自分がその学校の求める力に届いているかどうかが問われるのであって、隣の誰かを負かすことが目的ではないのです。

したがって、「あの子に勝つ」とか「同じ学校を受ける子より上に行く」という意識は、あまり持たない方が良いでしょう。たとえ同じ学校を受ける友だちがいたとしても、「いっしょに入ろう」で良いのです。相手が落ちて自分が入れば良い、という考え方をしてしまうと、余計な不安や焦りが増えて、かえって準備が落ち着かなくなります。

これは、周りの大人も同じです。

「○○くんはがんばっているのに、君は何をしているんだ」

こういう言い方は、あまり良い結果を生みません。子どもは比較されると、自分の課題を見るよりも、相手のことばかり気にするようになります。そして、負けたくないという気持ちが強くなる一方で、何を直せば良いのか、どこを伸ばせば良いのかが見えにくくなってしまうのです。

比較するなら、過去の自分と比べるのが一番です。

「前はここで間違えていたけれど、今回はできるようになった」

「この単元は前より良くなっている」

「ただ、計算ミスはまだ減らさないといけない」

そういう見方で十分です。今の自分に何が足りないのか。どこが伸びてきたのか。それを具体的に見ていく方が、受験勉強はずっと整理しやすくなります。

入試で大事なのは、誰かを気にすることではありません。合格するために必要な力を、ひとつずつ身につけていくことです。

周りの子がどうしているか、どの塾で何番か、誰がどこを受けるのか。そういうことは、気にし始めればきりがありません。しかし、それを気にしたところで、自分の点数が上がるわけではないのです。

見るべき相手は、他人ではありません。昨日までの自分です。

昨日より少しできるようになる。先月より少し解ける問題を増やす。前回よりもミスを減らす。そうやって積み重ねていくことが、結局いちばん確かな受験準備になります。

弟妹の受験をどう考えるか?

兄弟姉妹がいるご家庭では、上の子の受験経験がどうしても基準になります。

「上の子はこの塾でうまくいった」
「この時期から成績が伸びた」
「このやり方で合格できた」

そういう経験があると、下の子にも同じようにやらせたくなるのは当然です。親としては、一度通った道ですから、見通しも立ちやすい。塾の仕組みも分かっているし、教材の使い方も、模擬試験の位置づけも、ある程度わかっている。

しかし、ここで気をつけたいのは、上の子と下の子は別の子どもだ、ということです。

同じ家庭で育っていても、性格も違えば、得意不得意も違います。集中できる時間も違うし、競争で力を出す子もいれば、比較されると力が出なくなる子もいる。上の子には合っていた方法が、下の子にもそのまま合うとは限りません。

特に気をつけたいのは、知らず知らずのうちに比較が入ってしまうことです。

「お兄ちゃんはこの時期にはもう少しできていた」
「お姉ちゃんはこの宿題をちゃんとやっていた」

親に悪気はありません。むしろ、経験があるからこそ、早めに注意してあげたいと思っている。でも、子どもからすれば、それは自分を見てもらっているというより、上の子と比べられているように感じることがあります。

塾でも同じことが起こります。兄や姉が先に通っていた場合、先生の方にも記憶があります。「上のお子さんはこうでしたね」という話が出ることもあるでしょう。もちろん、それ自体が悪いわけではありませんが、下の子にとっては、自分の前にすでに物差しが置かれているように感じる場合があります。

だから、下の子の受験を考えるときは、まず一度、上の子の成功体験を横に置いてみることが大事です。

この子は、どのくらいのペースなら無理なく続けられるのか。どの教科でつまずきやすいのか。集団授業が合うのか、個別に見てもらう方が良いのか。家庭で管理した方が伸びるのか、少し本人に任せた方が動き出すのか。

そういうことを、改めて見ていく必要があります。

受験は、同じ学校を目指すとしても、そこに至る道筋は一つではありません。上の子は早い時期から塾のペースに乗れたかもしれない。けれど、下の子は少し時間をかけて基礎を固めた方が良いかもしれない。あるいは、上の子は最後まで親が細かく管理したけれど、下の子は自分で決めさせた方がうまくいくかもしれません。

公平というのは、同じことをさせることではありません。

その子に合った形を考えてあげることが、本当の意味での公平です。

もちろん、上の子の経験は無駄ではありません。むしろ大きな財産です。ただし、それは「同じことを繰り返すため」ではなく、「次はもっとその子に合った形を考えるため」に使うべきものです。

親も、二人目、三人目の受験で少しずつ見方が変わっていきます。最初の受験では見えなかったことが見えるようになる。塾の言うことをそのまま受け止めるのではなく、わが子に必要なものを選び取る力もついてくる。

だからこそ、下の子の受験では、上の子のときよりも、少し肩の力を抜いて、その子自身を見るようにしてほしいと思います。

兄弟姉妹であっても、受験はそれぞれ別の物語です。

上の子の道をなぞるのではなく、下の子に合った道を一緒に探していく。その姿勢が、結果的に子どもを一番伸ばしていくのではないかと思います。

成績が良いと欲が出る?

成績が悪いと、いろいろ悩みが増えます。

でも実は、成績が良くても悩みが増えたりする。

例えばある学校を目標にがんばってきた。そこそこ成績も安定していて、このままで良いかなと思っていたりしていたのだが・・・。

ある日塾の先生から電話がかかってきて、「~君、もっと上を狙えるんじゃないのでしょうか?次のテストで判定をA中学にしてみませんか?」

A中学って、トップ校じゃない?え、そこまで狙ってるわけじゃないし・・・。でも、せっかくの先生のススメだから、まあ、ちょっとやってみます?

この話、みなさんどう思われますか?

当然、ここには塾の思惑があります。つまり、生徒になるべく上を狙わせて、合格実績の底上げを考えているのです。あるいはその教室や校舎の実績をあげたいから、というのもあるかもしれません。それは当然、校舎長の人事評価につながります。

だから、この話、そう簡単に考えて良い、わけではありません。今までの志望校を考え直す、ということだから、戦略は大きく変わります。でも上の学校に入れるんなら、ということで切り替えたが、それで失敗したという例も当然ある。

それが家族にとって、本人にとってプラスになるのであれば良い、と思うのです。

しかし、そこはある程度慎重に考えた方が良い。子どもにとって、我が家にとって、それは本当に良い選択になるか?

何でも前向きにとらえて、というわけにはいかないところがこの話にはあるのです。