勝手に進む子

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いったい、どこでスイッチが入ったのか。

あとから振り返っても、はっきりしたきっかけは思い出せません。

それまで、その子は特別勉強が好きなタイプではありませんでした。

ゲームが楽しい。
サッカーも楽しい。

おそらくそのどちらも好きで、そこに「勉強」が入り込む余地はほとんどなかったと思います。

実際、月例テストの結果は散々でした。
提出が遅れたり、半年近く遅れて受けたこともあります。

だからといって、特別に焦っている様子もない。

保護者から見れば、当然心配になります。

「このままで大丈夫なのだろうか」

そんな不安を抱えながら見守っていた時期が長く続いていました。

しかし、6年生の後半になって、その子は変わっていました。

突然、勉強時間が増えたわけではありません。
大量の問題を解き始めたわけでもありません。

ただ一つ、はっきり変わったことがあります。

勝手に進む子になったのです。

それまでの勉強は、言われたことをやる勉強でした。

塾の宿題をやる。
配られたプリントを解く。
テストを受ける。

つまり、外から与えられた勉強です。

しかし6年生の後半、その子は自分で動き始めました。

まず、自分の志望校の過去問を見ました。

そして、

「このくらいの問題が出るのか」

と、出題のレベルを自分なりに理解したのです。

そこからが違いました。

過去問を解く。
学校別のバインダーから問題を探す。
似た問題を引き出して解く。

すべて自分で選び、自分で進めていく。

特別に大量の問題を解いているわけではありません。

しかし、やっていることには明確な意味があります。

志望校に必要なことだけを、確実に積み上げていく。

だから、こちらも細かく口出しする必要はありませんでした。

むしろ、言い過ぎないように注意していたぐらいです。

子どもが自分で考えて進めているとき、
大人が余計な指示を出すと、その流れを壊してしまうことがあります。

ですから、とやかく言わず、状況を見守ることにしました。

そして結果は、予想を超えるものでした。

受験した学校のうち、
「ここは少し厳しいかな」と思っていた1校を除き、
あとはすべて合格したのです。

もちろん、偶然ではありません。

やっていたことが正しかったからです。

ただし、この子の成功は合格だけではありませんでした。

むしろ、本当の価値はその先にあります。

入学後の躍進がすごかったのです。

授業についていく。
テストで結果を出す。
自分で勉強を進める。

すべてが自然にできていました。

なぜか。

理由は単純です。

自分で戦略を立てる経験をしていたからです。

中学に入ると、勉強はさらに自由になります。

小学校のように、すべてを細かく管理してもらえるわけではありません。

塾も、学校も、家庭も、
すべてが「自分で考えて進める」ことを前提に動き始めます。

そのとき、

自分で計画を立てる
自分で修正する
自分で進める

この力がある子は、圧倒的に強い。

もちろん、最初から完璧にできる必要はありません。

多少の失敗はあります。
方向がずれることもあります。

しかし、自分で考えて動く子は、必ず修正していきます。

そして少しずつ、自分なりの勉強スタイルを作っていくのです。

中学受験では、どうしても

「どれだけ問題を解いたか」

に目が向きがちです。

しかし本当に大切なのは、

誰が勉強を動かしているか

なのです。

親なのか。
塾なのか。
それとも子ども自身なのか。

もし子どもが自分で考え、
自分で進めるようになったとき、

その子の勉強は大きく変わります。

量が増えるからではありません。

意味のある勉強になるからです。

そして、その力は受験だけで終わりません。

むしろ、その後の人生のほうが長い。

自分で戦略を考え、
自分で進める力。

それを身につけた子は、
多少の修正が必要になったとしても、
必ず自分の道を作っていきます。

だから私は、あの子を見て改めて思いました。

子どもは、やはり同じところにはいない。

ある時期、突然成長することがあります。

そしてそのとき、
勝手に進む子になったら、もう強い。

それが本当の意味での勉強のスタートなのだと思います。

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