緊張感はそうは続かない

中学受験の道のりは長く、子どもたちが一息つきたくなる時期がやってきます。多くの場合、学年でいえば5年生の春先から初夏にかけて、勉強への集中力が緩みがちになる傾向があります。生活のリズムに慣れた頃、受験までの時間がまだあると感じてしまい、気持ちがどこか遠くへ行ってしまうのです。これは決して珍しいことではなく、多くの子どもが通る通過点とも言えます。

この時期は、親御さんも子どもも何とかしなければと焦りがちですが、ずっと緊張感を保つことは現実的ではありません。心身のバランスを考えれば、適度に緩む時間も必要です。弓を引くときの弦のように、緩める時期がないと力を正しく発揮できなくなるのです。大切なのは、その緩みの中でも小さな歩みを止めないこと。短時間でもいいので、毎日決まった課題をこなす習慣を続けることが、後の成長につながります。

例えば、朝に計算問題を数問解く、学校から帰ったら国語の漢字を数文字覚えるといった、簡単で続けやすいルーティンを設けるのが効果的です。この程度なら負担にならず、習慣化しやすいものです。親としては「終わるまでは寝かせない」という強い決意が必要かもしれませんが、これが継続の鍵となります。途中で止まってしまうと、再び動き出すのに大きなエネルギーが必要になるからです。

もちろん、熱心に取り組む子もいますが、すべての子どもがそうではありません。それを否定せず、あえて小さな一歩を毎日積み重ねることを大切にする姿勢こそが、やがて大きな成果を生み出します。季節が進み、夏や秋が近づくにつれて、自然と勉強への意欲が戻ってくるものです。その時に備えて、今は日々の積み重ねを大切に見守りたいものです。

塾のペースから脱却して、まずは確実に自信を取り戻す、という方法もあります。こちらもあわせてご覧ください。

分数と小数の計算力

算数の学びにおいて「比と割合」は重要な節目となります。この単元を境に、問題の性質が大きく変わり、速さや図形の相似といったテーマが絡んでくるため、子どもたちにとっては一層深い理解が求められます。

こうした応用力を身につける上で、実はその土台となるのが「分数や小数の計算力」です。比や割合の問題は、分数や小数の扱いに慣れていなければ、途端に難しく感じられてしまいます。にもかかわらず、多くの学習現場ではこの基礎部分をじっくりと取り扱う時間が十分に確保されていないように思います。

その理由の一つは、計算の練習が単調になりやすく、授業の中で繰り返すと子どもたちの関心が薄れてしまうことにあります。しかし、計算力は積み重ねによってしか養われません。早くから準備を始めることも一つの方法ですが、何よりも大切なのは、着実に毎日の練習を続けることです。例えば、日々数問ずつでも計算問題に取り組む習慣があれば、徐々に迷いなく対応できるようになります。

結局、基礎練習は決して華やかな内容ではありませんが、比や割合の理解を深めるためには欠かせません。保護者の方が子どもと一緒に根気強く取り組むことで、学習の幅が広がり、算数の楽しさも実感できるはずです。焦らず、一歩ずつ着実に、子どもの成長を支えていきましょう。

塾のペースから脱却して、まずは確実に自信を取り戻す、という方法もあります。こちらもあわせてご覧ください。

やる気が出ない子

「この子、やる気がないんです。」

ご相談をいただくとき、保護者のみなさんがよく口にされる言葉です。

確かに、家で机に向かわない。言われてもなかなか始めない。始めてもすぐに手が止まる。そういう姿を見ていると、「この子は受験生なのに、どうしてこんなにやる気が出ないのだろう」と心配になるでしょう。

しかし、実際には「やる気がない」とひとことで片づけてしまわない方がいいのです。

子どもたちが動かないのには、それなりの理由があります。

まず多いのは、何をやればいいのかがはっきりしていない場合です。
あれもやらなければいけない、これも終わっていない、と課題ばかりが積み上がっていると、子どもはかえって動けなくなります。大人でも、仕事が山積みになるとどこから手をつければいいかわからなくなることがあるでしょう。それと同じです。

次に、やってもできない、と思い込んでいる場合があります。
前にやった問題ができなかった。テストで点が取れなかった。注意ばかりされてきた。そうすると、子どもの中に「どうせやっても無理だ」という気持ちが生まれやすい。すると、最初から手を出さなくなるのです。

さらに、疲れている場合も少なくありません。

塾に通い、学校に行き、宿題をやり、テストを受ける。今の子どもたちは案外忙しい。大人から見ると「まだできるはず」と思えても、本人の中ではもう余力が残っていないこともあります。そういうときに「やる気を出しなさい」と言っても、なかなか解決しません。

だから、まず必要なのは「やる気がない」と決めつけることではなく、何が止めているのかを見ることです。

何をやればいいのかわからないのなら、やることを絞る。
難しすぎて止まっているのなら、できるところまで戻る。
疲れているのなら、少し負担を整理する。

こういう手当てをしていくと、子どもは少しずつ動き始めます。

やる気というのは、最初から満ちあふれているものではありません。
むしろ、できることが増えたり、見通しが立ったり、やれば進むと感じられたりする中で、後からついてくることの方が多いのです。

ですから、最初に必要なのは気合いではありません。

「今日はこれだけやればいい」
「この1問を一緒に考えてみよう」
「ここまではできているね」

そうやって、動ける形をつくってあげることの方が大事です。

特に中学受験では、子どもがずっと高い意欲を保ち続ける、ということはまずありません。波はあります。ある日はよく進むし、ある日は全然進まない。それが普通です。

だから、やる気の波を責めるより、波があっても進める仕組みをつくることです。

毎日同じ時間に机に向かう。
量を欲張らず、終わる量にする。
できたことをきちんと確認する。

こういう積み重ねの方が、叱って無理にやらせるより、結局は長続きします。

「やる気が出ない子」なのではなく、まだ動き出せる条件が整っていないだけかもしれません。

子どもを見ていると、つい気持ちの問題にしたくなるのですが、実際には環境や課題の出し方で変わることは多いのです。

受験勉強は長い道のりです。
いつも前向きでいられる子ばかりではありません。

だからこそ、やる気を求めすぎない。
その代わり、動きやすくする。
そして、少しでも進めたら、それを確かめる。

そうやって進んでいけばいいのです。