塾もいろいろ

塾とひと口に言っても、その考え方や指導方法はさまざまです。

たくさんの問題を解かせる塾もあれば、一問をじっくり考えさせる塾もあります。宿題を大量に出す塾もあれば、授業の中で理解させることを重視する塾もある。受験情報を豊富に持っている塾もあれば、子ども一人ひとりの状況に合わせることを得意とする塾もあります。

ですから、有名な塾だから安心、長く続いている塾だから間違いない、とは限りません。

塾には、それぞれ長年積み重ねてきた方法があります。それが子どもに合えば、大きな力になるでしょう。しかし、やり方が固定されすぎていると、志望校や子どもの得意不得意に合わない勉強まで続けることになりかねません。

私立中学の入試問題は、学校ごとに違います。難しい問題を多く出す学校もあれば、標準的な問題を正確に解く力を重視する学校もあります。記述を多く求める学校もあれば、短い時間で多くの問題を処理させる学校もある。

ところが塾では、同じクラスの子どもたちに、同じ教材、同じ授業、同じ宿題が与えられることが少なくありません。その内容が志望校対策につながっていれば良いのですが、実際には受けない学校の難問や、志望校ではほとんど出ない形式の問題に多くの時間を使っていることもあります。

また、短期間で点数を上げることだけを優先し、解き方や答えを覚えさせる指導もあります。もちろん、それで結果が出る場合もあるでしょう。ただし、子どもが自分で考える時間が減り、初めて見る問題に対応できなくなってしまっては困ります。

山の頂上に向かう道が一つではないように、合格までの道も一つではありません。

大切なのは、塾のやり方に子どもを無理に合わせることではなく、その塾で今、志望校合格に必要な勉強ができているかを確かめることです。宿題の量は適切か、理解する時間が取れているか、志望校の出題傾向に合った準備が進んでいるか。保護者が時折立ち止まって見直す必要があります。

塾に通っているから大丈夫、と任せきりにするのではなく、塾もいろいろあることを前提に考える。必要であれば家庭でやることを絞り、志望校に合わせて学習のペースを立て直すことも大切です。

塾の課題をすべて終えることが目的ではありません。子どもに合った学び方を選び、志望校合格に必要な準備を進めることが目的なのです。

できなくてよいことはたくさんある

塾で出される問題を見て、「ずいぶん難しいな」と感じることがあるかもしれません。

間違えた問題を一つひとつ復習し、できるようにしようとしても、なかなか終わらない。次から次へと直す問題が増えていき、勉強時間がいくらあっても足りない、ということもあるでしょう。

それは、塾の教材には基本問題だけではなく、かなり難しい応用問題まで含まれているからです。

もちろん、その問題が志望校の入試に必要なのであれば、しっかり取り組まなければなりません。しかし、受験する学校によっては、そこまで難しい問題はほとんど出題されない、ということもあります。

そうであれば、その問題をできるようにするために多くの時間を使う必要があるのか、きちんと考えた方がよいでしょう。

大事なのは、塾で出された問題をすべてできるようにすることではありません。志望校の入試で合格点を取るために、必要な問題をできるようにすることです。

一方で、志望校では塾の教材以上に難しい問題が出題されている場合もあります。その場合は、塾の復習に時間をかけ続けるよりも、早めに過去問へ移り、志望校の出題に合わせた勉強を進めた方がよいでしょう。

逆に、それほど難しい問題が出ない学校を受験するのであれば、難問に時間を使うより、基本問題を確実に解くことや、知識の抜けを埋めること、計算や漢字で失点しないことの方が重要です。

できないことが見つかると、つい全部直さなければならないと思ってしまいます。

しかし、「できないこと」と「できなくてよいこと」は違います。

限られた時間の中で成果を上げるには、何をできるようにするべきかだけではなく、何はできなくてもよいのかを判断することも必要です。

志望校の過去問を基準に、必要な勉強と必要のない勉強を区分けしてください。やらないことを決めることも、受験勉強では大切な戦略なのです。

家で勉強する子は強い

共働きのご家庭が増え、放課後の時間をどう過ごすかは、以前よりも大きな問題になっています。家に子どもだけでいる時間が長くなるなら、どこかに預けた方が安心だと考えるのは自然なことです。塾、自習室、学童、個別指導など、子どもが過ごせる場所も増えてきました。

ただ、中学受験の勉強で最後に力を発揮するのは、やはり「自分で勉強できる子」です。誰かに言われたから机に向かうのではなく、今日やることを確認し、時間を決め、わからないところを自分で考え、必要なら質問する。そういう力がついている子は、学年が上がるほど強くなります。

もちろん、小さいうちはなかなか任せきれません。放っておけば遊んでしまうこともあるでしょうし、予定通りに進まないこともあります。しかし、いつまでも大人が管理し続けていると、子どもは「自分で進める」という経験を積めません。勉強する場所は確保されていても、本人の中に主体性が育っていなければ、結局は受け身の勉強になってしまいます。

今は、家庭でもいろいろなことができる時代です。教材も動画もオンラインの質問環境も整ってきました。親がずっと横についていなくても、何をやるかがはっきりしていれば、子ども自身で進められることは増えています。大事なのは、すべてを外に任せることではなく、家庭の中で自分の勉強を組み立てる時間を持たせることです。

最初から完璧にできる必要はありません。たとえば、「今日はこのページまで」「計算を10題」「過去問の直しを1問だけ」と、やることを具体的に決めておく。そして終わったら、親が帰宅後に短く確認する。それだけでも、子どもは少しずつ自分で勉強を進める感覚を身につけていきます。

家で勉強するというのは、単に家にいるという意味ではありません。自分の机で、自分の課題に向き合い、自分で手を動かして考える時間を持つということです。この時間がある子は、塾で習ったことも定着しやすくなります。逆に、毎日どこかに通っていても、自分で考える時間がなければ、学力はなかなか積み上がりません。

子どもを任せることには不安が伴います。しかし、任せてみなければ育たない力もあります。中学受験は、親が全部管理して乗り切るものではなく、少しずつ子ども本人が自分の勉強を引き受けていく過程でもあります。

家で勉強できる子は強い。

それは、特別に意志が強い子という意味ではありません。自分で進める経験を少しずつ積み重ねてきた子、ということです。だからこそ、家庭で勉強する時間をどう作るか、どこまで任せるかを考えることは、これからの受験準備において、とても大事な決断のひとつなのです。