2027年受験に向けて」カテゴリーアーカイブ

やる気が出ない子

「この子、やる気がないんです。」

ご相談をいただくとき、保護者のみなさんがよく口にされる言葉です。

確かに、家で机に向かわない。言われてもなかなか始めない。始めてもすぐに手が止まる。そういう姿を見ていると、「この子は受験生なのに、どうしてこんなにやる気が出ないのだろう」と心配になるでしょう。

しかし、実際には「やる気がない」とひとことで片づけてしまわない方がいいのです。

子どもたちが動かないのには、それなりの理由があります。

まず多いのは、何をやればいいのかがはっきりしていない場合です。
あれもやらなければいけない、これも終わっていない、と課題ばかりが積み上がっていると、子どもはかえって動けなくなります。大人でも、仕事が山積みになるとどこから手をつければいいかわからなくなることがあるでしょう。それと同じです。

次に、やってもできない、と思い込んでいる場合があります。
前にやった問題ができなかった。テストで点が取れなかった。注意ばかりされてきた。そうすると、子どもの中に「どうせやっても無理だ」という気持ちが生まれやすい。すると、最初から手を出さなくなるのです。

さらに、疲れている場合も少なくありません。

塾に通い、学校に行き、宿題をやり、テストを受ける。今の子どもたちは案外忙しい。大人から見ると「まだできるはず」と思えても、本人の中ではもう余力が残っていないこともあります。そういうときに「やる気を出しなさい」と言っても、なかなか解決しません。

だから、まず必要なのは「やる気がない」と決めつけることではなく、何が止めているのかを見ることです。

何をやればいいのかわからないのなら、やることを絞る。
難しすぎて止まっているのなら、できるところまで戻る。
疲れているのなら、少し負担を整理する。

こういう手当てをしていくと、子どもは少しずつ動き始めます。

やる気というのは、最初から満ちあふれているものではありません。
むしろ、できることが増えたり、見通しが立ったり、やれば進むと感じられたりする中で、後からついてくることの方が多いのです。

ですから、最初に必要なのは気合いではありません。

「今日はこれだけやればいい」
「この1問を一緒に考えてみよう」
「ここまではできているね」

そうやって、動ける形をつくってあげることの方が大事です。

特に中学受験では、子どもがずっと高い意欲を保ち続ける、ということはまずありません。波はあります。ある日はよく進むし、ある日は全然進まない。それが普通です。

だから、やる気の波を責めるより、波があっても進める仕組みをつくることです。

毎日同じ時間に机に向かう。
量を欲張らず、終わる量にする。
できたことをきちんと確認する。

こういう積み重ねの方が、叱って無理にやらせるより、結局は長続きします。

「やる気が出ない子」なのではなく、まだ動き出せる条件が整っていないだけかもしれません。

子どもを見ていると、つい気持ちの問題にしたくなるのですが、実際には環境や課題の出し方で変わることは多いのです。

受験勉強は長い道のりです。
いつも前向きでいられる子ばかりではありません。

だからこそ、やる気を求めすぎない。
その代わり、動きやすくする。
そして、少しでも進めたら、それを確かめる。

そうやって進んでいけばいいのです。

適性学習量

「1週間にどのくらいの問題をこなせばよいのでしょうか」というご質問を、よくいただきます。

しかし、これは一概には決められません。子どもによって違うからです。したがって、「これだけやれば大丈夫」というような、共通の基準があるわけではないのです。

たとえば算数で、その週にひとつのテーマを学ぶとしましょう。普通は、まず例題があり、基本問題があり、それを応用した練習問題が続いていくはずです。

ところが、ある子にとっては、その基本を理解するだけでもなかなか大変なことがあります。そういう場合に、1週間で練習問題まで全部進もうとすると、どうしても無理が出やすい。とりあえず手をつけることはできても、本当の意味で理解するところまで行かないことが多いでしょう。

一方で、別の子にとっては、基本はすぐにわかる。例題も基本問題もそれほど苦にならず、練習問題までかなり進めてしまうこともあります。

もちろん、そこには力の差があるのかもしれません。試験であれば、頭の回転が速い子が有利になる場面は確かにあるでしょう。

しかし、入試は初めて学ぶことをその場で競うものではありません。しっかり準備をして、できるようになったところで競争するのです。ですから、単に頭の良い子だけが勝つ勝負ではないのです。

だから、最初の段階で基本を理解するのに時間がかかる子は、まず基本をしっかり身につければいいのです。練習問題まで進めなかったとしても、そこで慌てる必要はありません。基本が本当に理解できたら、次の機会に練習問題に進めばよいのです。

最初のうちは、できる量の多い子との差が広がっていくように見えるかもしれません。しかし、学習する範囲には限りがあります。やがて、みんなが何度か学んだ範囲の中で勝負する時期がやってきます。そうなると、基本をていねいに身につけてきた子が、少しずつ差を詰めていくのです。

実際、毎年入試が近づくころになると、定員の2倍程度の受験生の力は、思っているほど大きくは違わなくなっていきます。

大事なことは、「今できないこと」を数えることではありません。「今がんばればできること」に集中することです。

そして、ひとつわかるようになると、理解はそこから広がっていきます。わかることが増えると、勉強は少しずつおもしろくなりますし、自信も出てきます。

もちろん、楽なことだけやっていればいいわけではありません。ある程度の負荷は必要です。負荷があるからこそ力がつく。

しかし、その一方で、今の段階では到底無理なことを追いかけ続けても、あまり実りはありません。

今の自分が、がんばってできることに集中する。その結果としてこなせる問題数こそが、その子にとっての適正な学習量なのです。

塾に行きたくない

子どもが塾へ行きたがらないと感じるとき、親として戸惑うことも多いでしょう。その気持ちは、ただのわがままや怠け心とは異なり、何かしらの内面の声である可能性があります。塾は学びの場であると同時に、子どもにとっては居心地の良さや楽しさも必要な要素です。もしその場所が苦痛に感じられるなら、何かがうまくいっていないサインと考えるのが自然です。

子どもが「行きたくない」と言葉にする理由は様々ですが、はっきりとした答えを示さずに「なんとなく」と返される場合は、なおさら注意が必要です。理由を言いたくない気持ちや、自分でも理由がわからない混乱した心境が隠れていることが多いのです。こうした場合、無理に通い続けさせることは逆効果を招きかねません。まずは子どもの話にじっくり耳を傾け、安心して心を開ける環境を整えることが肝心です。

親が焦って「遅れが心配だから」と急かすよりも、子どものペースに合わせて気持ちを尊重することが、結果的に学習意欲の回復につながります。塾の先生とも連携を図りながら、子どもが安心して学べる環境を模索することが大切です。学びの形は塾だけに限らず、多様な方法があります。強制ではなく、子ども自身が前向きに取り組める姿勢を支えることが、何よりの教育の基盤となるでしょう。

無理をせず、じっくりと子どもの話を聞き、状況を見守ること。そうした配慮が、子どもと親の信頼関係を深め、学びの喜びを育む第一歩になるはずです。大切なのは、子どもの心と向き合いながら、共に歩む姿勢を保つことです。